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しおりを挟む「実は、あの噂を流したのはアローラなんだ」
セイラは言葉が出てこなかった。アローラが?まさか、そんな。と、セイラは首を横に振る。
あのアローラが?あんなに仲が良かったのに。こんなことになった時、泣いて許しを請うていた彼女が?
これではまるで、自分を陥れようとしているみたいではないか。
「すまない。こんなに噂が広まるとも思わず、彼女を好きなようにさせてしまった僕の責任だ。彼女を支えきれなかった僕が全て悪いんだ。本当に申し訳ない」
レインハルドはセイラに向かって深々と頭を下げた。
慌ててセイラはレインハルドの腕を掴み、「やめてください」と止めに入る。
「アローラも不安だったんだと思います。あの子の為にすぐにでも婚約を結んであげれば済むのではないですか?なぜ未だに何もなさらないのですか?」
レインハルドは頭を上げ、うつむいたまま言葉を発することができなかった。
セイラもまた、彼にかける言葉が思い浮かばない。
「セイラ。僕は・・・」
レインハルドが意を決したように口にしようとした時、
「アローラ・・・?」
セイラの視界にアローラの姿が映しだされた。
玄関ホールから従姉妹の制止を振り切るように駆け寄ってくるその姿は、間違いなくアローラだった。
レインハルドも振り向き「なぜ?」と、つぶやく。
「レインハルド様。何をなさっているのですか?」
アローラがレインハルドの両腕を掴み、今にも噛みつかんばかりの勢いで身を乗り出す。
「アローラ。なんでもないよ。大丈夫」
「何が大丈夫なのです?なぜセイラと一緒にいるのです?
こんな隠れてこそこそと。何を話していたのですか?」
「違うんだ、別にこそこそしていたわけではない。彼女の従姉妹殿もそこで見ていてくれている。二人きりになったわけではないから。安心してほしい」
「安心などできません。だって、だって・・・」
アローラの肩に手を置き、必死に落ち着かせようとするレインハルドの手を払いのけると、セイラの方に向き直り涙目で訴える。
「セイラ。あなたには悪いと思ってるわ。どんなに謝っても許してもらえないと思ってる。ホントよ。でもお願いだから、私からレインハルド様を奪わないで。
あなたは何でも持っているじゃない。身分も、美しさも教養も、全て持っている。
私にはこの人だけなの。レインハルド様が側にいてくだされば何もいらない。
だから、だからお願い、私から奪わないで。
お願いよ。お願い、セイラお願い・・・」
泣き叫びながらその場に膝を折り、崩れそうになるアローラをレインハルドが両手で支えると
「セイラ嬢、こんなことになってしまって本当に申し訳ない。許されるのなら後で改めて正式に謝罪をさせて欲しい。アローラの事は大丈夫。僕に任せて。足止めして悪かったね」
レインハルドは泣き続けるアローラを胸に包み込み、抱きしめている。
いつの間にか側まで従姉妹が迎えにきてくれていた。
今にも泣きだしそうな悲痛な表情のレインハルドを背に、従姉妹に腕を引かれその場を後にした。
馬車の中で父が今までの事を話して聞かせてくれた。
あの一件以来、レインハルドから謝罪のための面談を願う連絡が頻繁に届いていたらしい。
今更何をと、受けるつもりは一切なく無下にしていたが、レインハルドの父ミラー侯爵からアローラとの婚約はしばらく様子をみたいとの連絡が入った。
聞けばアローラの様子が変わり始め、何やら呼ばれて参加した茶会の席で、自分は蔑まれ、嫉まれているのだと吹聴しているようだと。
そのような娘と縁を結んでよいものか、しばらく様子をみた方がよいのでは?との結論に至ったらしい。
事実、その頃からセイラに関する良くない噂を耳にするようになり、ミラー侯爵の話は真実だと確信したらしい。
セイラは先ほどの顛末を父と母に話して聞かせた。
たぶん、ミラー侯爵の話は真実だろう。
時間が解決するしかないのかと、セイラは心痛な思いだった。
邸に戻り、一人部屋で考えることはロベルトのことだった。
レインハルドとアローラの事は、セイラにとってはもう過去のことになっていた。
二人が幸せになってくれればそれでいい。と、今は本心から思っている。
しかし、自分に対する誹謗中傷の原因がその二人からなのだとしたら・・・
許せない思いも確かにある。それでも、それよりも、ロベルトへの想いの方が強いことを知ってしまったから。二人を許そうと思えた。
忙しくしているロベルトから、手紙は届く。
それでもやはり、会いたい思いが募っていく。
会いたい・・・
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