恋愛(仮)

志賀崎都

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受験と恋愛

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「午後から会えない?」
 ひとつ年下、高校二年の彼女からLINEが来た十月の朝。窓から見える木々は赤く色付き、秋を感じさせられる。
「ごめん、俺、明日入試なんだ」
 大学入試はそう簡単なものじゃない、と先生達は口を揃えて言った。今まで散々勉強してきているが、ここで気を抜くわけにはいかなかった。
「そっか、なんかごめんね」
「大丈夫だよ。終わったらデートしよう」
 彼女は気遣いが出来る優しい子で、だけど気を遣いすぎて自分を押し殺すのが悪いところだ。
「何か急用でもあった?」
「ううん、なんにもないよ。頑張ってね」
「そう?ならいいんだけど。ありがとう、頑張る」
 僕が受験生になってから、2人で遊ぶ頻度が少なくなった。寂しい思いさせてるんだろうな、とは思っているけど、人生がかかった大事な受験を厳かに出来ない。それにもし受験に失敗したら、私のせいだと彼女は言うだろう。

 翌日、日曜日。思ったより緊張しないんだな、と呑気に考えながら制服に袖を通す。これから僕の第一志望校の入試だ。
 試験開始30分前に到着できるよう家を出ようとしたその時、インターホンが鳴った。そこにいたのは彼女だった。「来ちゃった」
「どうしたの?」
「どうもしないよ。応援しに来たの」
 可愛い彼女だ、と思った。やっぱり僕は彼女が好きだ。
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