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間接告白
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「すごい美味しいよ」
そう言って私が作ったご飯を頬張る真記は、私が高校1年生の時から数えて5年間片思いしている相手だ。
「ほんと? 良かった」
高校時代に知り合った私たちは、1度も同じクラスになることなく3年間過ごした。当時は話したことこそなかったが、なぜか大学2年生になった今、こうして仲良くしている。
始まりは卒業式の日だった。高校生活終わりの日に私たちは始まりを迎えた。
「1年の時からずっと仲良くしたいと思ってたけど声かけられなくて」
卒業パーティで会場が賑わっている中、私がそう声をかけても嫌がることなく応じてくれた。真記はとても優しい性格の持ち主だった。
「どうせならLINE交換しない?」
そう言ってスマートフォンをこちらに向けてくれたのは真記だった。死んでもいいや、と思うほど嬉しかったのはまだ記憶に新しい。
私が同性愛者だということは、クラスの一部の人間だけが知っていた。真記が好きだということもその人たちは知っていた。だからパーティで真記と話している時に私の知り合いから向けられる視線が少し痛かった。
そして何とか一人暮らしを始めた家に真記を招くことに成功したのが今日だ。私にしては頑張った方だと思う。
「ねえ、今更だから聞くけど、なんで私と仲良くしたかったの?」
真記のあまりに唐突すぎる質問に、喉を通るご飯が気管に入りそうになった。「なんで?」
「ずっと気になってたんだよね」
「秘密」
「ちょっとそれはずるくない?」
好きだったから、なんて言えるわけがない。仲良くしたかったのは事実だし、こうして仲良く出来て嬉しいのも事実だ。いい嘘が見つからない。
「夏希から聞いたんだけど、もしかして瑞希って男子嫌い?」
一瞬、心臓が止まったかと思った。もしかしたら真記は私が同性愛者だと知っていて仲良くしてくれているのだろうか。或いは私が真記のことが好きだと知っていて仲良くしてくれているのだろうか。いろんな考えが一瞬で頭を巡っていった。どちらにせよ私が同性愛者だということはもう隠せそうになかった。
「うん、まあ」
言葉を濁すしかなかった。はっきり肯定したくなかった。もしバレたら、気持ち悪がられるかもしれない。もうこうして2人でご飯を食べることもなくなるかもしれない。それだけは嫌だった。この関係だけは崩したくなかった。
「やっぱり本当だったんだ」
ご飯を頬張りながらそう言う真記が、悪魔にしか見えなかった。そのご飯が私の作ったご飯だから尚更だ。
真記はそんな私の心を見透かしたかのように「瑞希が同性愛者でも気にしないから、安心してよ」
「気持ち悪くないの? 同性しか好きになれないんだよ」
私がそう言うと真記は箸を置き、頬張っていたご飯を飲み下した。
「初めから知ってたよ、瑞希が同性愛者だなんて」
それは聞き捨てならない台詞だった。夢であってくれ、と頬を抓ったが、ものすごく痛かった。
私が同性愛者だと知ってLINEを交換してくれて、頻繁に連絡してくれて、頻繁に会う時間取ってくれて、家に来てくれた、つまりはそういうことになる。
「ごめん、真記」
「なんで謝んのよ、私も知ってて黙ってたんだからお互い様だよ」
「真記のことが好きだったの」
開き直りとはこのことなのか、そう思うくらい躊躇なく発せられた言葉は5年間隠し続けてきた思いだった。
「気持ち伝えるなんてできなくて、卒業する前に仲良くしたかったってそれだけ伝えて終わらせようとしたの」
頬を温かい何かが伝った。「泣かないでよ瑞希」と真記に言われるまでそれが涙だと気付かなかった。
「知ってたよ、夏希からそれも聞いた。あいつお喋りすぎるよね」
真記のその告白はあまりに衝撃的すぎて、言葉も出なかった。
「ごめんね、苦しかったよね。ごめんね」
「夏希覚えとけよ、今度会ったら殺してやる」
謝る真記を尻目に私はそう呟いた。夏希に対して殺意が湧いたのは事実だ。
「でもさ」
真記が私をまっすぐ見つめた。私も何を言い出すんだろうと見つめ返す。
「いいじゃん、嬉しかったよ。好きって思ってくれてること」
その後に真記は何か言ったが、聞き取れなかった。「え、なんて?」
「んーん、なんでもない! ほら冷める前に食べちゃおう」
箸を持ち直し食べ始める真記を見て、私も食べ始めた。
「好きだよ」
「えっ?」
ご飯を頬張った真記が確かに今そう言ったが、反射的に聞き返してしまった。
「だから」相変わらずリスみたいに頬張ったご飯を飲み下すと「私も瑞希のこと好きだよ」
嬉しさのあまり涙が止まらなかったのは言うまでもない。
そう言って私が作ったご飯を頬張る真記は、私が高校1年生の時から数えて5年間片思いしている相手だ。
「ほんと? 良かった」
高校時代に知り合った私たちは、1度も同じクラスになることなく3年間過ごした。当時は話したことこそなかったが、なぜか大学2年生になった今、こうして仲良くしている。
始まりは卒業式の日だった。高校生活終わりの日に私たちは始まりを迎えた。
「1年の時からずっと仲良くしたいと思ってたけど声かけられなくて」
卒業パーティで会場が賑わっている中、私がそう声をかけても嫌がることなく応じてくれた。真記はとても優しい性格の持ち主だった。
「どうせならLINE交換しない?」
そう言ってスマートフォンをこちらに向けてくれたのは真記だった。死んでもいいや、と思うほど嬉しかったのはまだ記憶に新しい。
私が同性愛者だということは、クラスの一部の人間だけが知っていた。真記が好きだということもその人たちは知っていた。だからパーティで真記と話している時に私の知り合いから向けられる視線が少し痛かった。
そして何とか一人暮らしを始めた家に真記を招くことに成功したのが今日だ。私にしては頑張った方だと思う。
「ねえ、今更だから聞くけど、なんで私と仲良くしたかったの?」
真記のあまりに唐突すぎる質問に、喉を通るご飯が気管に入りそうになった。「なんで?」
「ずっと気になってたんだよね」
「秘密」
「ちょっとそれはずるくない?」
好きだったから、なんて言えるわけがない。仲良くしたかったのは事実だし、こうして仲良く出来て嬉しいのも事実だ。いい嘘が見つからない。
「夏希から聞いたんだけど、もしかして瑞希って男子嫌い?」
一瞬、心臓が止まったかと思った。もしかしたら真記は私が同性愛者だと知っていて仲良くしてくれているのだろうか。或いは私が真記のことが好きだと知っていて仲良くしてくれているのだろうか。いろんな考えが一瞬で頭を巡っていった。どちらにせよ私が同性愛者だということはもう隠せそうになかった。
「うん、まあ」
言葉を濁すしかなかった。はっきり肯定したくなかった。もしバレたら、気持ち悪がられるかもしれない。もうこうして2人でご飯を食べることもなくなるかもしれない。それだけは嫌だった。この関係だけは崩したくなかった。
「やっぱり本当だったんだ」
ご飯を頬張りながらそう言う真記が、悪魔にしか見えなかった。そのご飯が私の作ったご飯だから尚更だ。
真記はそんな私の心を見透かしたかのように「瑞希が同性愛者でも気にしないから、安心してよ」
「気持ち悪くないの? 同性しか好きになれないんだよ」
私がそう言うと真記は箸を置き、頬張っていたご飯を飲み下した。
「初めから知ってたよ、瑞希が同性愛者だなんて」
それは聞き捨てならない台詞だった。夢であってくれ、と頬を抓ったが、ものすごく痛かった。
私が同性愛者だと知ってLINEを交換してくれて、頻繁に連絡してくれて、頻繁に会う時間取ってくれて、家に来てくれた、つまりはそういうことになる。
「ごめん、真記」
「なんで謝んのよ、私も知ってて黙ってたんだからお互い様だよ」
「真記のことが好きだったの」
開き直りとはこのことなのか、そう思うくらい躊躇なく発せられた言葉は5年間隠し続けてきた思いだった。
「気持ち伝えるなんてできなくて、卒業する前に仲良くしたかったってそれだけ伝えて終わらせようとしたの」
頬を温かい何かが伝った。「泣かないでよ瑞希」と真記に言われるまでそれが涙だと気付かなかった。
「知ってたよ、夏希からそれも聞いた。あいつお喋りすぎるよね」
真記のその告白はあまりに衝撃的すぎて、言葉も出なかった。
「ごめんね、苦しかったよね。ごめんね」
「夏希覚えとけよ、今度会ったら殺してやる」
謝る真記を尻目に私はそう呟いた。夏希に対して殺意が湧いたのは事実だ。
「でもさ」
真記が私をまっすぐ見つめた。私も何を言い出すんだろうと見つめ返す。
「いいじゃん、嬉しかったよ。好きって思ってくれてること」
その後に真記は何か言ったが、聞き取れなかった。「え、なんて?」
「んーん、なんでもない! ほら冷める前に食べちゃおう」
箸を持ち直し食べ始める真記を見て、私も食べ始めた。
「好きだよ」
「えっ?」
ご飯を頬張った真記が確かに今そう言ったが、反射的に聞き返してしまった。
「だから」相変わらずリスみたいに頬張ったご飯を飲み下すと「私も瑞希のこと好きだよ」
嬉しさのあまり涙が止まらなかったのは言うまでもない。
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