私、実は若返り王妃ですの。シミュレーション能力で第二の人生を切り開いておりますので、邪魔はしないでくださいませ

革命の準備

「革命を起こさせることは割と簡単なのよ」

　リンガの宿の特別室で、私はフレグランスの面々に戦略の説明を始めた。

「でも、王政が廃されて共和制になるのはいいけど、王家が排除されてしまうのは困るの。帝国にも余波が来てしまうわ」

　私は民衆の味方ではない。民衆は盲目的に国家に尽くせばいいと考える為政者の一人に過ぎない。

　だが、シミュレーションをするうちに痛感したのだが、民衆の力を侮ってはいけない。不満を溜めさせてはいけないのだ。

　民衆には自分たちがそこそこ幸せだと思わせ、ほんの少数の支配階級が、反感を買わない程度に優雅な生活を送ることが許容されるようにしたい。

「王は廃さないけど、政治からは引きずり下ろす。これが目標よ」

　あれ？　皆んなぽかんとしてしまっている。

「シーファ様、申し訳ございません。仰っておられることが、少しも分かりません」

　レイモアが申し訳なさそうな顔をした。

「あのう」

　マリアが手を挙げた。

　彼女の大きな胸が揺れている。私は彼女ほどではないが、十分な大きさだから気にしない。

　控えめな胸のアンが、無表情な目でマリアの胸を見ているが、それも気にしないでおこう。

「何？　マリア」

「『革命』ってのと、『共和制』ってのが分かりません。それから、王が政治をしないとなると、誰が政治をするのでしょうか」

　要するに、全部分からないってことね……。

「共和制というのは王のいない政治体制のことよ。政治は市民から選出された代表が行うの。今の王政を倒して、そういった新しい体制に市民たちの力で変えることが革命よ」

「はあ……」

　戦略としては合っているはずなのだが、人を戦略通りに動かすのは別の話か。

　細かいところまで全部シミュレーションするのは無理だ。

　よし、出来るやつに丸投げしよう。

「ねえ、あなたたちの仲間にとびきり頭のいい人いる？」

「いるにはいるのですが、性格が少し……」

　レイモアの歯切れが悪いが、頭さえ良ければ、その他はどうでもいい。

「女性？　それとも男性？」

「男ですが、女よりも綺麗です……。も、もちろん、シーファ様の方が断然お綺麗ですが」

　何じゃ、そりゃ……。

「頭が良ければ、他はどうでもいいわ。すぐに紹介してね」

「はい。連絡入れておきます」

「それと、これを換金して欲しいのだけど、何処かいいところある？」

　ガガが前のめりになって来た。

「こ、これは、また、えらく大きなダイヤの指輪ですね。ちょっと見せていただいてもよろしいでしょうか」

　ガガは魔法を使った独自の宝石鑑定が出来る。ガガの顔が徐々に引きつって行く。

「え？　シーファ様、これ婚約指輪ですか？　ライザーからシーファって……」

「おほほ、何故か私が持っているのでした」

　っていうか、もうバレてるわよね。

「ダイヤの透明度、大きさ、色ともにハイクオリティですので、数億バーレルの価値があります。さらに王妃様の婚約指輪ということで、王妃様ファンならもっと出すと思います！」

「では、換金はお任せするわ。そのお金で千人分の武器と防具を帝国で購入して、王国に持ち込んで欲しいの。武具の色は私の髪の色と同じ真珠色に揃えてね」

　私はもう一つ宝石を取り出した。

「そ、それっ。まさか『エメラルドの滝』じゃないですよね？」

　ガガの声が完全に裏返ってしまっている。

「おほほ、まさかの国宝なの。これも何故か私が持っているのでした」

「シーファ様、これはやばすぎて売れないと思います」

「そう？　帝国では売れるのではなくて？」

「超有名ですから、盗品だと思われます。そもそも売ったお金を何に使うのですか、十億以上と言われてますよ」

「革命のために使うのよ」