初体験が5歳という伝説の「女使い」冒険者の物語 〜 スキル「優しい心」は心の傷ついた女性を虜にしてしまう極悪のモテスキルだった

もぐすけ

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第四章 温泉宿

女湯でのつぶやき

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まずい。

エリーゼさんと入浴したときには、2人きりだったのだが、後から若い女の子が4人入って来た。

そして、エリーゼさんを見つけて、

「あっ、エリーゼさん」

と声をかけてきた。

「あ、あら、あなたたち温泉旅行?」

彼女達はエリーゼさんの以前の職場の後輩だそうだ。リマは彼女たちの街から最寄りの温泉街ということで、人気の旅行先なのだとか。

しかし、この人たち、もう少しちゃんと股を隠してくれないかな。入るときに目線の低い俺からモロ見えなんですよ。

4人とも容姿端麗で可愛らしいのだが、1人だけエリーゼさんレベルの極上美人がいて、胸も迫力満点で、エリーゼさんもその人を警戒している。

でも、好きな人がいる人は俺には惚れないので、あれだけの美人であれば彼氏がいると思うのだが。

「リンリンサマ、あの右端のキョウコだけには絶対に話しかけないでくださいね」

「あの銀髪で不思議な色の目の人ですか? すごく綺麗な人ですね」

「あの子ですが、彼氏に愛想をつかして、新しい彼氏を探しているという噂なのです」

「うーん、そんなに悪い感情は彼女にはないみたいですよ。どうやら、彼氏の方が悪いですね」

「え? 坊や何か言った? 彼氏の方が悪いって?」

ずっと俺たち2人の様子を何気なく伺っていたキョウコさんが、話しかけてきた。

(まずいぞ、まずいぞ、まずい・・・・)

「あはははは、キョウコ、空耳よ、空耳、あっ、私たち先に出るね」

「あ、あの、エリーゼ先輩、ご迷惑でなければ、あとで相談に乗ってほしいんです」

「わかったわよ。あとであなたたちの部屋に行くわね。どこの部屋?」

「すずらんです」

(げ、俺たちの隣りじゃないか)

「あはははは、わかったわよ。あとで行くからねー」

俺たちは慌てて脱衣場に飛び込んで行った。

「はあ、はあ、はあ、リンリンサマ、あれだけ話さないでとお願いしましたのに」

「僕はエリーゼさんに話しただけですよ。彼女なぜか僕たちに最初から興味津々でしたね」

「あの子はなぜか昔から私を慕ってまして、何かと私は相談に乗ってました。私が退社してすごく寂しそうにしていたとは聞いてましたけど、まさかこんなところで会うとは」

「ひょっとしてエリーゼさんを追ってきたのでは?」

「そう・・・ですね、あり得ます。彼女の権限であれば、討伐資料を読めば、私たちの居場所がわかるはずです。もし、事実だとしたら、とんだストーカーです。早く着替えて、部屋に戻りましょう。私はフローラさんに報告に行って、善後策を考えていただきます」

服を着替えて、エリーゼさんはフローラさんの宿に向かい、俺はいったんカトリーヌさんたちの部屋に預けられた。

カトリーヌさんとミカゲさんは外出中ということで、ルミさんだけが部屋にいた。

俺が部屋に入ったとき、ルミさんは何かを作っていたが、そそくさと片付けてしまった。

ちょっと興味が出たので、俺は聞いてみた。

「ルミさん、それ、何を作ってたんですか?」

「あ、あれですか。マーキングジェルです。追跡したい人にジェルをこすりつけると、においと光を魔法で追うことができます」

「へえー、材料は何ですか?」

「え? そ、それは秘密です」

(えらい真っ赤になっているが、なんなんだろう?)

「ちょっと貸してもらっていいですか?」

「え? ダメです。においを嗅ごうとしてますよね?」

「ええ、どんな匂いがするのかなあと」

「これはお貸しできません。あきらめてください」

ルミさんは強い口調できっぱりとした感じだった。

「はあ、わかりました」

「リンリン様、それより、どうしてここへ? エリーゼさんはどうしたのですか?」

「エリーゼさんの元同僚の方たちとお風呂場で遭遇しまして」

「そうなんですか」

「それで、1人、皆さんと同じぐらい美しい人がいまして」

ルミさんが突然立ち上がって、俺に迫ってきた。

「まさか、話しちゃったとか、さわっちゃったとか、でしょうか!?」

「い、いえ、逃げてきました。今後はどうすればいいかとエリーゼさんがフローラさんに相談に行っているところです」

「ああ、びっくりしたわ」

(いや、突然迫って来て、びっくりしたのはこっちの方ですよ)

「ひょっとして、今日、リンリン番は交代でしょうか? 私になったとか!?」

(ルミさん、目がらんらんとしていてちょっと怖いです)

「いや、まだよくわかりません。フローラさん待ちです」

とそのとき、ノックもしないでフローラさんが部屋に乗り込んできた。

「いた、リンリン君。あれほど話すなと言ったのに!」

「え? 話してないですよ。僕はエリーゼさんに話しただけです。ね、エリーゼさん」

(あ、エリーゼさんが目を背けている。さては、俺を売ったな!?)

フローラさんが俺を掴んでがくがくしてくる。

「「彼氏の方が悪いですね」と言ったというのは本当?」

「そ、それは本当です」

「まずいわよ、これは。多分あと1時間もしないうちに彼女はリンリン君に惚れるわね」

「え? 何でですか?」 

「リンリン君、彼女が一番欲しいと思っている言葉をあなたは発したの。彼女は空耳だとは思っていないわよ。あなたの言葉にすがりたいから、聞こえてきた言葉に飛びついたのよ。今頃は、何度も何度も思い出して、全身で喜びを感じているはずよ。リンリン君が直接話しかけていないようだから、多分遅効性なのよ。リンリン君、本当に恐ろしい人ね」

(俺は感想をつぶやいてもいけないのか・・・)

そのとき、廊下から叫び声が聞こえてきた。

「エリーゼ先輩! どこにいるんですか。さっきの男の子に会わせてください。エリーゼ先輩っ!!!」

キョウコさんが半狂乱になって、すごい勢いで俺の部屋のドアをたたいているらしく、いろんな人が廊下にでてきて、えらい騒ぎになり始めている。

「仕方がないわ。4人のうち、1人で済んだことを幸いとしましょう。エリーゼ、彼女を説得して悪魔にしてきて」

「え? でもフローラさん」

「これはあなたの責任よ、あなたの従者にして、夜伽はあなたの番に入れれば、誰からも文句はでないはずよ」

「はい、わかりました」

エリーゼさんが覚悟を決めて、部屋を出て行った。

「ああっ、エリーゼ先輩がいた! エリーゼ先輩、私を助けてください。どうか、どうか、あの男の子に会わせてください!!」

エリーゼさんの足にすがっているのであろうか。ちょっと前のエリーゼさんとフローラさんの図が温泉宿の廊下で再現されていた。

あっ、そうだ。悪魔になる前に加護を与えておこう。
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