初体験が5歳という伝説の「女使い」冒険者の物語 〜 スキル「優しい心」は心の傷ついた女性を虜にしてしまう極悪のモテスキルだった

第十一章 ベラ、ブラ、パラ

ブラの暗殺会議

「アイシャ、昨日も一昨日も襲撃があったそうね」

「はい、ルミさん、キョウコさんとエリーゼさんが撃退してくれました」

今日の護衛はルミさんだ。昨日はずっと愚痴を聞かされ、一昨日はエリーゼさん話を一日中聞かされた。今日こそはまともな人であって欲しい。

ルミさんはまともだった。お姉様方のことも色々な話が聞けたし、神様のことも色々と教えてくれた。

一通りの話が終わった後、私に万一のことがあった場合に備えて、マーキングジェルを塗らせて欲しいと言って来た。

「それはどういうものなのですか？」

「どこにいてもおなたの場所が分かる薬よ。3ヶ月経てば効果はなくなるわ」

「どこに塗れば良いですか？」

「そうね。膝の裏に塗ってくれる？」

私は素直に言われた通りにした。

「ルミさん、今日も襲撃あると思いますか？」

「そうね。2回連続で失敗しているから、次の手を準備中かもしれないわね」

＊＊＊

現在、アイシャが通過中のブラでは、アイシャ暗殺のための作戦会議が行われていた。

最初の2回は失敗に終わった。計画の遂行を監視していた部隊から、1日目はキョウコ、2日目はエリーゼが護衛をしていたとの報告があった。

リンリン側からの護衛がつくことは予想はしていたが、妻1人の戦闘力がここまでだとは想定外だった。

多勢に無勢で、護衛の隙をついて、アイシャを討ち取れると見ていたのだが、まさか完璧にガードされてしまうとは。

暗殺計画の責任者である枢機卿を中心とした5人の暗殺実行計画委員会が報告者から詳細の報告を受けていた。

「初日の護衛はキョウコと思われます。銀髪と七色の眼の特徴がありました。評判通りの美しさでした。恐らく精神系のスキルを使ったのではないかと思われます。襲撃者はキョウコに挨拶して、それぞれの故郷に帰ってしまいました」

「なんだと？　故郷に帰った？」

「はい、全員が故郷に帰り、自給自足の生活を始めています」

「なんだ、それは・・・」

「翌日の護衛はエリーゼ様と思われます。燃えるような赤髪に勝気な眼。美しく気高い女性でした」

報告者がとろんとした目になってしまっている。

「おい、まじめにやれ。エリーゼ様などと様をつけるな」

「し、失礼しました。陽動部隊と暗殺部隊の2部隊に分けて攻撃をしかけたのですが、恐らくエリーゼさ、エリーゼは支援魔法をかけたのだと思います。エリーゼ様が、あっ、エリーゼが馬車から出てきたら、相手の兵士たちが急に強くなり、全く太刀打ちできなくなりました」

「おまえ、エリーゼに心酔しているな」

「い、いえ、そんなことはございません。ほ、本体の暗殺部隊はエリーゼさ、エリーゼに特攻したのですが、エリーゼ様、あっ、エリーゼは今度はご自分に補助魔法をかけられたようで、エリーゼ様への攻撃が一切効かなくなり、エリーゼ様のスピードを目では負えなくなり、エリーゼ様に素手でビンタされるだけで10メートル以上飛ばされちゃっていました。ボクも殴られたいと思いましたっ」

「・・・。無敵状態ではないか」

「はい、凛々しくて見惚れてしまいました」

「もうよい、下がれっ」

報告員が会議室から退室した。

「枢機卿、リンリン様の使いの方が護衛をされているということは、もう手出し不可能なのでは？」

「では、国がこのままつぶれてしまってもいいと貴兄はいうのか」

「いいえ、そんなことはないですが」

「もうバレてもいいから、軍隊を投入して殺してしまおう」

「枢機卿、それはもはや暗殺とは言わないのでは？」

「どうせ国がつぶれてしまうのなら、やれることは全部やるさ。窮鼠猫を噛むとはこのことだ。軍隊の出動許可をもらってくる。今日は予定通り忍者部隊を投入して、どうやって暗殺が潰されるのかを見て来てくれ」

枢機卿は4人が会議室を立ち去っても一人追い詰められた顔をしたまま席を離れなかった。