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第二章 学校生活

ご機嫌直し

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 ミサトがこのまま学校に来なくなるかと心配していたのだが、翌朝、ミサトを学校で見かけて、ほっと胸を撫で下ろした。だが、俺のことは無視するつもりらしい。昨夜のことに相当腹を立てているようだ。

 こういうときは、話をせざるを得ない話題を出すか、ご機嫌があっという間に直ってしまうプレゼントを用意するといい。

 実は勇者と聖女が魔王の配下になったというネタがある。だが、果たしてミサトが興味を持つかどうか。

 それよりも「神の声」という神器があるらしいので、それを手に入れて、プレゼントしたほうがいいだろう。

 二つとも昨夜メルサの家で入手した情報だ。さすが大貴族だけあって、情報量が半端ない。

 「神の声」は何と昨日まで寝泊まりしていた宝物殿にあるらしい。俺は今日は学校を早退することにした。

 宝物殿担当の神官を割り出し、一日中付きまとうことにした。そして、五日目にしてようやく鍵の場所が分かった。ちなみにそのほかのことも色々わかったので、退屈ではなかった。

 夜、宝物殿に入り、今まで鍵がかかっていて、入ることの出来なかった宝物庫に行こうとしたところ、何と廊下にミサトがいた。誰もいないと思っていたので、思いっきりびっくりした。

「うおっ、びっくりしたぁ。驚かすなよ。人間だったら、漏らしてたぞ、きっと」

「あなたねえ、ずっと学校休んで、一体どれだけ私に心配させるのよ!」

「あ、いや、ごめん。怒らせちゃったと思って、お詫びのプレゼントを探してたんだ」

「何よ、それは」

(あれ? ミサトの目が赤い。泣いていたのか?)

「これ、見て」

 俺は鍵を見せた。

「鍵? まさかっ」

「そう、宝物庫の鍵。ちょうどよかった。何か使えるものがないか、探そうぜ」

 早速、宝物庫の鍵を開け、中に入った。恐らく真っ暗なんだと思うが、俺たちにはいつもと同じ明るさだ。宝物庫には倉庫にあるような背の高い棚が三列あり、それぞれの棚に様々なものが整理整頓されて置かれていた。

「ミサト、これ」

「うん、色がついているものがちらほらあるわね」

 神器は赤黒くはなく、鮮やかな色がついていた。なかには神器でないものも置いてあった。というより、神器はほんの少ししかない。

「『神の声』という神器があるらしい。恐らく俺たちの声が聞こえるようになるんじゃないかな」

「ねえ、これじゃない?」

 ミサトが指差したのは、拡声器だった。

「拡声器だよな」

「でも、拡声器って、電気が必要じゃない?」

「あっ、こっちにソーラーバッテリーがある。これで充電できるぞっ!」

「あっ! 私のスマホ! 何でこんなところにあるのっ!?」

「何んだよ、ここは」

 日本の製品はこの三つだけで、残りのものは武器や防具だった。

 ミサトはスマホを触っているが、バッテリー切れのようだ。

「ねえ、そのソーラーバッテリーで充電できないかな?」

「充電コードがないと無理だぞ」

 俺たちは充電コードを探したが、どうやらないようだ。

「そうだ、レンが持ってたわ。レンはどこにいるのかしら」

「勇者と聖女は魔王の部下になったらしい」

「そうなの?」

「あのお婆さんは魔王の手下だったみたいで、魔法の契約書も、魔王との雇用契約だったみたいだぞ」

 王家としては大失態だ。国庫金を大量に使って敵のために強力な部下を召喚したのだから。そのため、王家は箝口令を敷いて、勇者と聖女は魔王と戦って敗れたことにするつもりだ。

「じゃあ、魔王城に行くわよ」

「え? マジで!?」

「そうよ。今日は遅いから、久しぶりにここで寝て、明日の朝、学校に寄ってから、魔王城に出発よ。ところで、ゆうき、今度覗いたら、私、あなたの前から消えるわよ」

 う、一番やって欲しくないことを言うなあ。

「その、ごめんなさい」

「まったく、何が気弱で優しいだけが取り柄よ。ただの覗き魔じゃないっ」

「すいません」

「まあ、いいわ。確かに素敵なプレゼントだったわ。今回は許してあげる」

 俺たちは前と同じように、別々の部屋に布団を敷いて寝た。

 さすがに今晩はおとなしく寝ることにしよう。
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