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第五章 古代寺
宝物殿
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『宝物殿に行きましょう』
ミサトの掛け声で、とりあえず夢殿の謎はそのままにして、誰も入れないという宝物殿に向かった。
「ここが宝物殿なのですが、どうやっても入れません」
管理人のおじさんが困ったような顔をしている。いや、この人、もともとこういうさえない顔みたいだ。
はっ、と思ってミサトを見ると、俺には決して見せない優しい顔をおじさんに向けている。
「おいっ、ミサト、庇護欲出すなよ」
「だ、出さないわよ、こんなおじさんにっ」
とか言いながら、ミサトがチラチラおじさんを見ている。
「次おじさんを見たら、片栗粉なっ」
「勝手なルール決めないでよ。おじさんが前にいるから見えちゃってるだけじゃない」
俺は邪魔者を消すことにした。
『エリコさん、管理人のおじさんにしばらく休んでいていいって伝えてくれますか』
「もう。ゆうきはやきもち焼きなんだから」
目障りなおじさんがいなくなったので、宝物殿への侵入を試みた。
「あ、通り抜け出来ない」
俺が壁から通り抜けしようとしたら、足が壁にはばまれた。
「でも、扉開いたよ」
ミサトがあっさり扉を開けていた。突然扉が開いて、エリコもキララも驚いている。
四人で開いた扉から建物の中に入った。念のため、扉は閉めておこう。
「あっ、ミサト! ミサトが見える!」
突然後ろでエリコさんが叫んだ。どうやら俺たちが見えるらしい。エリコさんが感極まった様子でミサトに抱きついた。普通に二人で抱き合っている。
ふとキララの方を見ると、俺の方を見て感激している。
「ゆうくん、格好いい! すごく素敵です!」
キララが俺に抱きついて来た。とりあえず受け止めたが、恥ずかしいという気持ちが湧きあがって来た。まずい、ここの空間では、なぜかキララを異性として見てしまう。
キララと抱き合っている俺をミサトがエリコさんと抱き合ったまま、絶対零度の目で見つめていた。
「いや、これは……」
「ご、ごめんなさいっ。感激してしまって、つい……」
キララがぱっと離れた。
「た、宝物を見てみよう」
俺は何とかはぐらかそうと思ったが、キララはちゃんとミサトのところに行って、ミサトに謝っていた。キララにとっての俺は、恋愛対象などとは恐れ多く、雲の上の存在で、そんな人が目の前に突然現れて、つい抱きついてしまったそうだ。
ミサトはまだキララを警戒しているのか、俺と腕を組んで歩いている。いつもはこんなことしないのに、自分のものアピールだろうか。
「ちょっとすごいよ! 早く上って来て!」
既に二階に上がっていたエリコさんの元気な叫び声が、微妙な空気を吹き払ってくれた。宝物殿は二階建てのようで、一階には特に何もなかった。
二階に上がって唖然とした。そこは寝室だった。全てに色がついている。キングサイズのベッド、アンティーク調の机と椅子、四人掛けのソファー、ドレッサー、そして、ガラス張りの浴室がついていた。
(レジャーホテルか?)
一階はガレージ、二階はするところ、どこかで見たぞ、このスタイル。でも、この世界では殆どリラックス出来る所のない俺たちには、まさに宝物のような部屋だ。
「ここは神と女神の部屋にしたいな」
俺は敢えて婉曲な言い方をした。
「そうね。エリコ、譲ってくれる?」
ミサトがエリコさんに確認してくれた。
「もちろんよ。あなたたち、普通のところでは通過しちゃうんでしょ。ここに遊びにくれば、あなたたちと普通に接することが出来るし、あなたたちにしか扉は開けられないでしょ。あなたたちのお家よっ」
「ありがとう」
俺とミサトは素直にエリコさんにお礼を言った
「ゆうくん、ここではゆうくんは無敵ではないみたいですので、気をつけて下さいね」
キララは心配そうだ。
「そうだな、中に不審者を入れないように気をつけるよ」
俺は携帯を取り出した。残念ながら圏外だし、無線もないが、ベッドにコンセントがあるのだ。携帯を充電出来ることを確認した。恐らく屋根にソーラーパネルがあるのだろう。
しかし、誰もこの部屋を使っていた気配がない。いったい何の目的でこんな部屋があるのだろうか。
ミサトの掛け声で、とりあえず夢殿の謎はそのままにして、誰も入れないという宝物殿に向かった。
「ここが宝物殿なのですが、どうやっても入れません」
管理人のおじさんが困ったような顔をしている。いや、この人、もともとこういうさえない顔みたいだ。
はっ、と思ってミサトを見ると、俺には決して見せない優しい顔をおじさんに向けている。
「おいっ、ミサト、庇護欲出すなよ」
「だ、出さないわよ、こんなおじさんにっ」
とか言いながら、ミサトがチラチラおじさんを見ている。
「次おじさんを見たら、片栗粉なっ」
「勝手なルール決めないでよ。おじさんが前にいるから見えちゃってるだけじゃない」
俺は邪魔者を消すことにした。
『エリコさん、管理人のおじさんにしばらく休んでいていいって伝えてくれますか』
「もう。ゆうきはやきもち焼きなんだから」
目障りなおじさんがいなくなったので、宝物殿への侵入を試みた。
「あ、通り抜け出来ない」
俺が壁から通り抜けしようとしたら、足が壁にはばまれた。
「でも、扉開いたよ」
ミサトがあっさり扉を開けていた。突然扉が開いて、エリコもキララも驚いている。
四人で開いた扉から建物の中に入った。念のため、扉は閉めておこう。
「あっ、ミサト! ミサトが見える!」
突然後ろでエリコさんが叫んだ。どうやら俺たちが見えるらしい。エリコさんが感極まった様子でミサトに抱きついた。普通に二人で抱き合っている。
ふとキララの方を見ると、俺の方を見て感激している。
「ゆうくん、格好いい! すごく素敵です!」
キララが俺に抱きついて来た。とりあえず受け止めたが、恥ずかしいという気持ちが湧きあがって来た。まずい、ここの空間では、なぜかキララを異性として見てしまう。
キララと抱き合っている俺をミサトがエリコさんと抱き合ったまま、絶対零度の目で見つめていた。
「いや、これは……」
「ご、ごめんなさいっ。感激してしまって、つい……」
キララがぱっと離れた。
「た、宝物を見てみよう」
俺は何とかはぐらかそうと思ったが、キララはちゃんとミサトのところに行って、ミサトに謝っていた。キララにとっての俺は、恋愛対象などとは恐れ多く、雲の上の存在で、そんな人が目の前に突然現れて、つい抱きついてしまったそうだ。
ミサトはまだキララを警戒しているのか、俺と腕を組んで歩いている。いつもはこんなことしないのに、自分のものアピールだろうか。
「ちょっとすごいよ! 早く上って来て!」
既に二階に上がっていたエリコさんの元気な叫び声が、微妙な空気を吹き払ってくれた。宝物殿は二階建てのようで、一階には特に何もなかった。
二階に上がって唖然とした。そこは寝室だった。全てに色がついている。キングサイズのベッド、アンティーク調の机と椅子、四人掛けのソファー、ドレッサー、そして、ガラス張りの浴室がついていた。
(レジャーホテルか?)
一階はガレージ、二階はするところ、どこかで見たぞ、このスタイル。でも、この世界では殆どリラックス出来る所のない俺たちには、まさに宝物のような部屋だ。
「ここは神と女神の部屋にしたいな」
俺は敢えて婉曲な言い方をした。
「そうね。エリコ、譲ってくれる?」
ミサトがエリコさんに確認してくれた。
「もちろんよ。あなたたち、普通のところでは通過しちゃうんでしょ。ここに遊びにくれば、あなたたちと普通に接することが出来るし、あなたたちにしか扉は開けられないでしょ。あなたたちのお家よっ」
「ありがとう」
俺とミサトは素直にエリコさんにお礼を言った
「ゆうくん、ここではゆうくんは無敵ではないみたいですので、気をつけて下さいね」
キララは心配そうだ。
「そうだな、中に不審者を入れないように気をつけるよ」
俺は携帯を取り出した。残念ながら圏外だし、無線もないが、ベッドにコンセントがあるのだ。携帯を充電出来ることを確認した。恐らく屋根にソーラーパネルがあるのだろう。
しかし、誰もこの部屋を使っていた気配がない。いったい何の目的でこんな部屋があるのだろうか。
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