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第十一章 エルフの国

略奪

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「ろくなものがないな。葉っぱと木の実だけじゃねえか。話が違うぞ」

「新天地で略奪し放題」という良識のかけらもない募集に数万人の応募があった。最終試験のダンジョンでリッチー一家を破り、千倍以上の難関を突破した四人五組の二十人がエレン村で絶賛略奪中であった。

 エルフは認識出来なかったようたが、エルフの大陸に上陸した軍団は、霊王のクロが隊長をしており、全部で二十一名だった。

「話が違うとは? 略奪し放題だろう」

 タンスのような家具を物色していた男はドキリとした。

「こ、これは、クロの旦那、口が滑りました。すいません。勝手に金銀財宝があると想像していました」

「庶民なんてどこも同じだ。神国の農家に押し入っても、盗むものは食糧ぐらいだろう」

「あと、女ですかね」

「貴様、よく滑る口だな。喋れなくしてやろうか」

 略奪は自由にやっていいが、性犯罪は一切禁止というルールがクロの軍団にはあった。

「す、すいません。でも、男ばかりの生活で欲求不満が溜まって来ています。いつか誰かが禁を犯すと思います」

「それを待っている。いい見せしめになるからな。何ならお前でもいいんだぞ」

「滅相もないです」

 このクロという男は恐らく人ではない。リッチー一家を破ったのは全部で六組だったのだが、一番強かったチームが、神国から船出する際、どうやったのか不明だが、クロに一瞬で塵にされてしまった。

 突然、何の前触れもなく、「一番だから」というよく分からない理由で、本当に塵になってしまったのだ。だが、今となってはよく分かる。恐らく一番強いチームでもこんなに簡単に殺せるんだぞ、という示威行為だったのではないだろうか。

「女に手を出すやつがいたら、止めなくていいぞ。俺に報告しろ。まあ、報告しなくても感知できるがな」

 男たちのことをこのクロという人外は、本当に塵としか思っていないように男は感じていた。こんな怖い男に率いられて、報酬が葉っぱと木の実だけでは割に合わない。

「都市には財宝があるんですかね?」

「この先に女王が住む区画があるそうだぞ。そこにはガッポリお前たちの欲しいものがあるんじゃないか?」

「そう願いたいです。土産を待っている女房と娘がおりますので」

 そう話しているところに男と同じチームの別のメンバーがやって来た。仲間同士の二人は目で挨拶を交わしたが、入って来た男はクロに用があるようだ。

「クロの旦那、区画女王の使者というエルフの女が二人来ています。責任者と話をしたいと言ってます」

 クロは今まで話をしていた男の方の肩をたたいた。

「よし、今日からお前が責任者だ。禁忌を破らない以外は何をしてもいいぞ」

「え? 俺がですか?」

「そうだ。それと、ここに人の国を造る。俺のご主人様がお選びになった皇帝が来るから、迎え入れる準備をしろ。お前たちの家族を呼んでもいいぞ。あとは好きにしろ」

(ほとんど好きに出来ないんじゃ……。しかし、このクロのさらに上がいるのか)

「何だ? 文句あるなら塵にするぞ。塵になりたくなかったら、早く使者とやらに会ってこい」

「文句なんかないです。あの、使者は女だそうですが、拘束はダメなんですよね?」

「塵になりたかったら、拘束してもいいぞ」

「丁重におもてなししてお返しします。それでは失礼します」

 男は仲間と一緒に部屋を出て行った。
 
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