見知らぬ美女と一緒に異世界召喚され、お互い幽霊になりました。勇者たちよりも強い最強な俺たちですが、俺は彼女とラブコメしたいです

もぐすけ

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第十一章 エルフの国

区画長会議

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  区画長会議はひと月後に開催された。ダークエルフも使者を派遣して来た。すでにサビーヌ以外の面々は円卓についている。

 北区画王のギランは、ダークエルフの女使者を睨みつけている。女使者は「無音の琴」の異名を持つサラという暗殺者で、家臣を何人も殺されているのだ。忌々しいことこの上ない。

 西区画王のゾルゲも同様だ。ダークエルフと国境を接しているのは、北、西、東の三区画だが、いずれもサラには手ひどくやられている。こんなのを使者にするとは、ダークエルフは喧嘩を売っているとしか思えない。

 しかし、当のサラはどこ吹く風だ。そんな三人を面白そうに見ているのが、南区画女王のモナリザだ。エルフ王は目を閉じて腕を組んでいる。

 各王には護衛二名の帯同が許されており、多くの王は腕の立つ護衛と、頭脳担当の相談役を連れており、王の後ろに控えさせている。サラは双子の実弟二人を連れて来ていた。あの二人もエルフのなかでは悪名高い。

 会議場を支えている樹木の下の方が騒がしい。サビーヌがやって来たようだが、何か揉めているようだ。

「お越しになったようよ」

 サラが実弟二人に話しかけ、三人が立ち上がった。エルフの王の護衛たちが何事かと一斉に立ち上がった。

「誤解しないで。あなたたちには何もしないわよ。我らが主人のご到着なの。起立してお迎えするだけよ」

 サラが両手を上げて肩をすくめている。

「貴様たち、人間に降ったか」

 エルフ王が目を開け、サラを睨みつける。

「ダークエルフは強いものに従う。古来から何も変わっていないわ。彼女たちは強い。だから従うの」

「彼女たち?」

「ええ、サーシャ様率いる四天巫女様よ。今日はサーシャ様自らおいでになるとお伺いしているわ。あなたたちも立ってお迎えすべきよ」

 ダークエルフの国はワインが派遣した帝国のサーシャ、ポーラ、ルル、ララの四天巫女によって、すでに完全統治されていた。サーシャたちの武力による支配である。

 帝国の現人神序列第一位のサーシャは、プラチナ色のオーラに包まれ、サビーヌとゲンムを従えて会議室に入って来た。

「遅れてごめんなさいね。人間は通さないっていうから、見張りの方々を消しちゃったけど許してね。無礼を働くあなたたちが悪いのよ。ね、サビーヌ」

「はい、仕方ないです。サーシャ様、失礼して御前に座らせて頂きます」

 サラの三姉弟が最敬礼して出迎える。

「サーシャ様、サラ、レオ、ミオの三名、御前に失礼します」

「あら、あなたちもいたのね。じゃあ、会議とやらを始めていいけど、このゲンムは未熟者でね。殺意を向けられると手加減できないのよ」

 本当に困っちゃうわ、と言いながら、サーシャはゲンムの頭をポンポンと叩いた。ゲンムが嫌そうな顔をしつつも我慢している。

「そこの護衛の男、それ以上動くと、ゲンムにチリにされちゃうわよ」

 サーシャがエルフ王の後ろの男を流し目で見た。

「動くな」

 とエルフ王が護衛の男を一喝した。

「まさか人間が参加するとは思わなかったが、話が早くて済む。お前たちの目的はなんだ?」

 エルフ王がサーシャに単刀直入に切り出した。

「あら? 私はサビーヌのおつきよ。今日はサビーヌが招待されているのでしょう。サビーヌがお答えなさいな」

「では、私から申し上げます。カザナミ様の使徒たるトドロキ皇帝に臣従することこそ、エルフの最善の選択です。人間とエルフは皇帝の元で共存共栄すべきです。それが人間とエルフの共通の目的です」

 エルフたちがざわめいた。

「サビーヌ、貴様、エルフの尊厳はどこに行った!?」

 北区画王のギランが怒鳴った。

「人間の皇帝は国と民を富ませる術をご存知です。良き君主につき、民の幸福を願う。今までと同じですよ、ギラン。反目している暇があったら、少しでも美味しい作物を作るべきです」

「美味しい作物とはなんだ?」

 エルフ王がサビーヌを睨みつける。

「説明するより、実際に食してみては如何でしょうか」

 サビーヌが手を叩くと、女官が二人、会議室に入ってきた。帯同者は二名までというルールを守っていないが、そんなことを口にする者はいない。皆の視線はザルに盛られた紫色の食べ物に向けられていた。

「サツマイモです。食べてみてください」

 サビーヌが皆の前で手本とばかりに一口食べ、感嘆の声を上げる。

「ああ、何て甘美なんでしょう。こんなに甘い食べものが世の中にあったなんて、未だに信じられないわ。これが毎日食べられるようになるなんて、まるで夢のようだわ。モナリザ、早く食べてみて。ダークエルフが全部食べちゃいそうよ」

 サラたちはサツマイモをよく知っているようで、我先にと姉弟で食べまくっている。モナリザは覚悟を決めて、小ぶりなサツマイモをひとつ手に取り、目をつぶって食べてみた。

 舌先に甘みが広がり、鼻から脳天へと突き抜ける。

「なに、これ。ものすごく美味しい」

 モナリザはすぐに二つ目と三つ目を両手に持ち、かぶりつくように食べ始めた。

 男三人は置いて行かれたような感じになったが、それぞれ一つづつサツマイモを手に取り、側近にも配った。

「こ、これは!」

 ギランが目をむいて驚いている。エルフ王もゾルゲも目を白黒させながら、二つ目に手が伸びていた。苦い木の芽や原生のナッツが主食で、品種改良されていない酸味の強い果物しか食べたことのないエルフにとって、サツマイモの甘味は反則的な美味しさだった。

 米、カボチャなど、人間が持ち込んだ穀物は非常に甘くて美味だ。だが、サビーヌはこれらをはるかにしのぐ完熟の桃を食してしまっていた。サビーヌが人間に心服した瞬間だった。もっともっと美味しいものがあるという。

 どうせ人間には勝てない。であれば、いっそのこと友達になって、美味しいものをいっしょにたくさん食べよう。それがサビーヌの出した結論だった。

 実際、友達として人間を見ると、エルフに優しく、働き者で頼りになる。悪くないのだ。サビーヌはトドロキ皇帝に謁見を願い、臣従することを誓ったのだった。
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