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第二章 オークの国

出撃準備

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ノウキたちは屋敷で一泊した後、オークの国への出撃準備のため、町の郊外の森の駐屯地まで移動した。

出撃は明日と決まり、カトリーヌ、ノウキ、マリエール、エリザベートの四人は、各種戦術の最終的な詰めを行なっていた。

敵の魔法使い部隊が殲滅した今、軍事力は人族がオークを圧倒している。軍事バランスが最大に崩れている今、電光石火での襲撃が求められていた。

また、敵の出方としては、徹底抗戦か停戦の申し入れのどちらかになるが、早かれ遅かれ、停戦になると考えられる。その際の停戦交渉を有利にするめるためにも、敵の軍事力を早期に壊滅させるのは、戦略上重要であった。

ノウキは「軍人などいない方がマシ」という考えなので、作戦には賛成だった。

参謀室で、カトリーヌが三人を見回して、作戦会議の口火を切った。

「今回の襲撃の目標は首都郊外にある敵の陸軍基地だ。聖女様とエリザベート嬢が帰還の際に偵察したところによると、オーク軍の職業軍人二万人がここに駐屯しているとみていい」

カトリーヌはノウキのマップの能力を利用して、陸軍基地の位置を4人でシェアした。

「今回は親衛魔法隊の戦力確認もしたい。メイドメイジは今回は兵站担当だ。陸軍基地の手前の50キロ地点にあるランバ城を占領し、ここを駐屯地として、後方支援を行ってほしい」

カトリーヌの指示をノウキが後でメイジメイドに伝えることで、彼女たちは職務を完璧にこなしてくれるだろう。

「作戦全般で言えることだが、作戦指示は私からノウキに伝える。聖女様とエリザベート嬢と親衛魔法部隊、メイドメイジ隊にはノウキから直接指令を出す、という命令系統は絶対だ。ノウキを経由しないで、私や別の者から指示を出してしまっては、各部隊の力は半減してしまうからな」

そういって、カトリーヌは妖艶な笑みを浮かべた。

(いやあ、この人本当にエロいなあ)

ノウキはついつい作戦とは関係のないことを考えてしまう。今回の作戦に参加する男子はノウキのみ。残りの43名は全員が美しい女性だ。一人が上司で残りは部下で、どちらも優秀だ。ノウキはただ単に優秀な上司の作戦を優秀な部下に伝えるだけだ。前世では考えられない楽な役回りだ。

だが、ノウキが伝えることで、上司の作戦の成功率や効果が跳ね上がるのだから、ノウキは優秀なブースター役で、貴重な存在だと言えるだろう。中間管理職はかくあるべきではないだろうか、などとノウキは前世の課長を思い出していた。

「ノウキ? 聞いているのか? 集中しろよ。お前の役割が一番重要なのだからな」

「はい、すいません」

(隊員の命がかかっているのだから、ちゃんと集中しよう)

「私の作戦をノウキに伝える役割は聖女様にしていただきたいです。お手数ですが、瞬間移動で逐次戦況をお知らせください」

相変わらず、カトリーヌさんはマリエールには丁寧すぎだ。

「かしこまりました」

マリエールもカトリーヌの聖女への丁寧な態度を直してもらうことはあきらめていた。

こうして、作戦の詳細を4人で詰め、翌朝、44人はオーク国へと出撃していった。
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