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第二章 オークの国
婚約
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王都では今回の大殊勲者であるノウキに爵位を与える準備が進められていた。エリザベートを婚約者にするために必要な伯爵にすることが内定していた。
メイデン家では当主のレイモンド、妻のローズ、長男のリカルド夫妻、次男のジャック夫妻、長女マリエールがお食事会という名の家族会議を開催中であった。
家族会議は思わぬ事態に直面していた。マリエールも婚約者になりたいと言い出したのだ。
「婚約者を二人立てた例は過去にないわ。それに、そもそもノウキは承諾しているの?」
「過去にないなら、今回を前例とすればよいのです。ノウキにはこれから言いますが、メイデン家が了承しているなら受けてくれるはずです」
「エリザは悲しむのではなくて?」
「エリザには話しました。ノウキ次第だと言ってくれてます」
「うーん、困ったわね。あなたどう思うの?」
ローズはずっと黙っているレイモンドの方を向いて、意見を促した。
「ノウキというのは、エリザベートだけではなく、マリエールも惚れ込むような男なのか?」
レイモンドは妻のローズに聞いた。
「才能あふれる青年で、謙虚で努力家よ。ルックスは抜群でスタイルも良くて料理の腕はピカイチ。魔法も男の中では一番じゃないかしら。瞬間移動も転移もできるのよ」
ローズの手放しの絶賛にレイモンドはあまり嬉しそうではなかった。
(なんだそのスーパーハイスペックな男は)
レイモンドは娘たちが自分以外の男に心を奪われているのが面白くないのだ。
「お父さま、教会ではノウキは『神の使い』に登録されていて、私は彼の従者でもあるのです」
しかも、二人の娘が二人して同じ男を奪い合うのではなく、仲良く分け合おうというのだ。まるで、この男しかいないとばかりに。
(ああ、面倒臭い。二人ともくれてやるわい)
「ワシは色恋のことは当人同士に任せればいいと思っておる。ノウキとやらに決めさせればよい」
兄二人は家族に男が増えるのは出来るだけ少ない方がいいと思っているので、妹たちがいいと言うならそれでいい、と思っていた。
「私は別に構いません」
「私にも異存ありません」
二人の兄が承諾して、最後まで渋っていたローズも
「ノウキがいいって言うなら認めるわ」
と了承した。
「お父さま、お母さま、お兄さま、ありがとうございますっ。早速ノウキに聞いてきます!」
マリエールは食事の途中にもかかわらず、ノウキのところに転移してしまった。
後に残された家族は苦笑しながら食事を続けた。
***
マリエールは別邸に転移してきたが、ノウキはもうエリザベートと一緒に王都に向かって出発した後だった。
マリエールは外に出て、王都への道を馬車の轍に沿って瞬間移動を繰り返した。何十回かの瞬間移動を繰り返し、もうそろそろ魔力が無くなりそうだと思ったとき、遠くに馬車を見つけた。
瞬間移動で馬車の横まで移動し、メイデン家の紋章と御者のカインの顔を確認した。マリエールはカインの隣の御者席に瞬間移動した。
カインが目を見開いて驚いている。
「マ、マリエール様っ」
「カイン、ノウキとエリザは中?」
マリエールは後ろの幌を指して聞いた。
「はい、エマも一緒です」
カインがそう答えたとき、御者席に人の気配を感じたノウキが幌から顔を出して来た。
「マリエール!?」
ノウキの顔を見たマリエールは、ノウキの胸に飛び込んでいった。
足場の不安定なところで、マリエールに抱きつかれたノウキは、面食らったが、何とか転ばずに、マリエールを幌の中に案内した。
エリザベートとエマは目を丸くして驚いている。
少し落ち着いたマリエールは、ノウキの横のシートに腰掛けて、エリザベートとノウキの顔を交互に見た。
エマが察して席を外して三人になってから、マリエールが口を開いた。
「ノウキには伯爵の爵位が授与されます。そして、メイデン家は、エリザベート、そして、私マリエールの婚約をノウキに正式に申し込みます。承認していただけますね、ノウキ」
ノウキはマリエールからの婚約もあるだろうと読んでいた。マリエールとのキスについて、エリザベートとこれまで馬車の中で話していて、マリエールやエリザベートの気持ちをノウキなりに分析していたのだ。ここはごちゃごちゃ言うよりも、一言気持ちを伝えればいい。
「はい、喜んでお受けします」
ノウキは笑顔をエリザベートとマリエールに向けた。
マリエールが大喜びでノウキに抱きついて来た。エリザベートもノウキの右の席に割り込んで来て、負けずにノウキに抱きつく。
ノウキは二人の美女に抱きつかれながら、三人で幸せになろうと誓うのであった。
メイデン家では当主のレイモンド、妻のローズ、長男のリカルド夫妻、次男のジャック夫妻、長女マリエールがお食事会という名の家族会議を開催中であった。
家族会議は思わぬ事態に直面していた。マリエールも婚約者になりたいと言い出したのだ。
「婚約者を二人立てた例は過去にないわ。それに、そもそもノウキは承諾しているの?」
「過去にないなら、今回を前例とすればよいのです。ノウキにはこれから言いますが、メイデン家が了承しているなら受けてくれるはずです」
「エリザは悲しむのではなくて?」
「エリザには話しました。ノウキ次第だと言ってくれてます」
「うーん、困ったわね。あなたどう思うの?」
ローズはずっと黙っているレイモンドの方を向いて、意見を促した。
「ノウキというのは、エリザベートだけではなく、マリエールも惚れ込むような男なのか?」
レイモンドは妻のローズに聞いた。
「才能あふれる青年で、謙虚で努力家よ。ルックスは抜群でスタイルも良くて料理の腕はピカイチ。魔法も男の中では一番じゃないかしら。瞬間移動も転移もできるのよ」
ローズの手放しの絶賛にレイモンドはあまり嬉しそうではなかった。
(なんだそのスーパーハイスペックな男は)
レイモンドは娘たちが自分以外の男に心を奪われているのが面白くないのだ。
「お父さま、教会ではノウキは『神の使い』に登録されていて、私は彼の従者でもあるのです」
しかも、二人の娘が二人して同じ男を奪い合うのではなく、仲良く分け合おうというのだ。まるで、この男しかいないとばかりに。
(ああ、面倒臭い。二人ともくれてやるわい)
「ワシは色恋のことは当人同士に任せればいいと思っておる。ノウキとやらに決めさせればよい」
兄二人は家族に男が増えるのは出来るだけ少ない方がいいと思っているので、妹たちがいいと言うならそれでいい、と思っていた。
「私は別に構いません」
「私にも異存ありません」
二人の兄が承諾して、最後まで渋っていたローズも
「ノウキがいいって言うなら認めるわ」
と了承した。
「お父さま、お母さま、お兄さま、ありがとうございますっ。早速ノウキに聞いてきます!」
マリエールは食事の途中にもかかわらず、ノウキのところに転移してしまった。
後に残された家族は苦笑しながら食事を続けた。
***
マリエールは別邸に転移してきたが、ノウキはもうエリザベートと一緒に王都に向かって出発した後だった。
マリエールは外に出て、王都への道を馬車の轍に沿って瞬間移動を繰り返した。何十回かの瞬間移動を繰り返し、もうそろそろ魔力が無くなりそうだと思ったとき、遠くに馬車を見つけた。
瞬間移動で馬車の横まで移動し、メイデン家の紋章と御者のカインの顔を確認した。マリエールはカインの隣の御者席に瞬間移動した。
カインが目を見開いて驚いている。
「マ、マリエール様っ」
「カイン、ノウキとエリザは中?」
マリエールは後ろの幌を指して聞いた。
「はい、エマも一緒です」
カインがそう答えたとき、御者席に人の気配を感じたノウキが幌から顔を出して来た。
「マリエール!?」
ノウキの顔を見たマリエールは、ノウキの胸に飛び込んでいった。
足場の不安定なところで、マリエールに抱きつかれたノウキは、面食らったが、何とか転ばずに、マリエールを幌の中に案内した。
エリザベートとエマは目を丸くして驚いている。
少し落ち着いたマリエールは、ノウキの横のシートに腰掛けて、エリザベートとノウキの顔を交互に見た。
エマが察して席を外して三人になってから、マリエールが口を開いた。
「ノウキには伯爵の爵位が授与されます。そして、メイデン家は、エリザベート、そして、私マリエールの婚約をノウキに正式に申し込みます。承認していただけますね、ノウキ」
ノウキはマリエールからの婚約もあるだろうと読んでいた。マリエールとのキスについて、エリザベートとこれまで馬車の中で話していて、マリエールやエリザベートの気持ちをノウキなりに分析していたのだ。ここはごちゃごちゃ言うよりも、一言気持ちを伝えればいい。
「はい、喜んでお受けします」
ノウキは笑顔をエリザベートとマリエールに向けた。
マリエールが大喜びでノウキに抱きついて来た。エリザベートもノウキの右の席に割り込んで来て、負けずにノウキに抱きつく。
ノウキは二人の美女に抱きつかれながら、三人で幸せになろうと誓うのであった。
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