奴隷の少女を最終的に妻に迎えたいので買ってきた

たかはし

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貴族のミゲルと奴隷のヒサコ

幼い恋心

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「その、言っておくが俺はお前を力ずくで手篭めにしようとかそういうことを思っていたわけじゃないんだ。ただ……ヒサコが笑ったり、俺の手渡したものを食べたり、俺の勧めるものを受け取ったり、からかった時の恥ずかしがる顔とか、恥ずかしくて泣いた時の表情とかなんかもう全てが見ていて心地よかった。ずっと見ていたかった」


ヒサコは俺の方を見ない。昨日の夜みたいにずっと下を向いていて今どんな表情をしているのかわからない。


「でもおかしいよな。最初に奴隷市場でお前を含む4人の奴隷を見ていた時はエルフ族の娘が一番好みの顔で、他にめぼしいものがいなければ俺はそいつを買って帰ってたはずなんだ。そしてお前を選んだ理由は幻の人種だったからっていうその一点だけだった。お前の祖国の生活習慣とか食べ物とかその国にしか伝わっていない話だとかそういう俺が知らないお前だけが知っている話を聞けると思ってな」


お前じゃない奴隷を買うこともあったかもしれないと話した時にヒサコがピクリと反応した。でもつらい話を聞かせているのに何も言わないのは昨日の表情の通りにもう諦めてしまっているからなのか……?


「だからお前の性格とか俺に対する感情だとかそういうのは全部家に帰るまでに見ておいて気に食わなければ命令で口をきけなくしたり反抗できなくしておけばいいと思っていた。だけど。だけどお前は間抜けな顔をして揚げ菓子をほおばり、年相応に恥ずかしがり、少し女の顔をして笑った。全部。全部俺の周りには無かったものだ」

「俺が望んだものをお前は持っていた。俺はそれが、嬉しかったんだと思う……そして俺はそんなお前をいたぶった。あんなに嫌がっていたのにな……でもヒサコが嫌がれば嫌がるほど俺の気分は高揚したんだ。普通に考えればこんなのどう考えたって俺の方が悪い。そりゃ気持ち悪いと思われても仕方がないだろう。ただ俺のこの……ヒサコに対する感情は多分………幼い恋心に分類されるんだと、思う……」


ぎゅうっとこぶしを握る。ヒサコはまだ俺を見ていないがそれでも俺はヒサコの方を見て言う。


「好きな異性に自分を見て欲しくて。話すきっかけが欲しくて。こうして言葉にすると馬鹿らしくて仕方がないとは思う。でも。俺は、お前に俺を見て欲しかった。正面から俺を受け止めて欲しかった……たぶん、そういうことなんだ………」

言った。全部、言ってしまった。
一晩考えて至ったことをヒサコに伝えてしまった………正直奴隷に言うことじゃない。それでも俺は、覚悟を決めた。






言葉が……見つかりません………
私は、どうすればいいのでしょうか………?

全部話し終わったミゲルさまは泣きそうなお顔をされていました。あとちょっと背中を押せばそれは堰を切ったように溢れ出しそうに見えます。男性が涙を流す所なんて見たことがありませんし、もちろん涙を流すのを我慢している所だって見たことがありません。
所詮私は世間知らずです。神殿の中で神に供物をささげ、祈る。それだけしかしたことがありません。
たまに侍女たちが年若い神官の誰が良いだとか噂するのを小耳にはさむ程度で私自身にそういった話を持って来られることも、私がその話に入っていくことも無く、ただ日々を静かに暮らしていたのです。

そんな私にミゲルさまのお話しは情報過多も過ぎます。正直半分も受け止めることができていたとは思いません……
ただ、恋…という単語だけははっきりと、聞こえた気がしました…………




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