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貴族のミゲルと奴隷のヒサコ
人の身では見ること叶わぬ遠い場所を見る術
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風の精霊さまはどうしてこのようなことをされたのでしょうか?と目を閉じれば私は目を閉じているというのに先ほど見ていた景色とまったく同じものがそのまま見えています。
このおかしな状況に私は閉じていた目を開いてみますが精霊さまの手で隠された視界はそのまま暗くぱしぱしと瞬きをすればまつ毛に精霊さまの手が当たるのが感じられます。
つまり目隠しをされているわたしに風景が見えるはずがないのに目を閉じれば周りが見えるようになっているのです。
この不思議な状況におろおろしていると精霊さまが優しい声でおっしゃいました。
「巫女どの。恐れることはない。この遠見は貴女がしていた修行のそのまた先の術なだけだ。我が風はいついかなる場所にも存在する。これはそれを利用し人の身では見ること叶わぬ遠い場所を見る術よ」
「…………………。私にも……風の精霊さまのように遠い場所が見れる、のですか……?」
「その通りだとも。さあ巫女どの。目を閉じ腹の魔力を瞳へと集中させよ。その先は我が導いてやるゆえ」
精霊さまのおっしゃる通り今までの修行で何度もしたように魔力を移動するイメージをします。お腹から上へ上へと登らせ両目へと宿らせる。ここまではうまくできました。この先は精霊さまが導いて下さるはずです。
≪我が子よ。この館を巡る風よ。今しばらくそなたの見るものを我と我が導きし者に見せよ。風の声を届けよ。≫
両の瞳に宿らせた魔力が少し熱を帯びたかと思うと膨張しそれから細く細く伸びて行きまたぱちりと音がするように風景が見えるようになりました。今度は館の中です。
ここは………私のいるテーブルの正面の部屋でしょうか?
風の精霊さまがそちらばかり見ていらっしゃるから私も同じように部屋の方を見ていたので良く覚えています。他の部屋もよほど似た作りにされていない限りはその通りのはず、だと思います。
「? そこ、ソファの奥……誰か、いらっしゃいます、よね……?」
壁にぴたりと沿って置かれている3人掛けのソファの影に誰かが隠れていらっしゃるようです。庭には日光が当たって明るく、あたりを見渡せばどこに何があるかわかりますが部屋の中となると奥に行くにつれ光が届かず薄暗くなっていますので誰かが隠れていても庭からはよほどせわしなく動いていない限り気付きません。
しかし今は風の精霊さまのお力で遠見をしていますので前後左右と好きな方向から、室内に限らず遠く奴隷市場まで見ることができるでしょう。
さて、どなたがこちらを見ていたのでしょうか……?
「え、ミゲル……さま……?」
床に片膝をつけこちらをうかがっていたのは見間違いようもなくミゲルさまでした……
「どうして……?私が逃げ出さないように監視してらっしゃるのでしょうか……?」
買われた以上私にはそのような自由は無いと思いますが特に≪命令≫で逃げるななどといったことは命令されていませんので逃げようと思えばできる、と思われているのでしょうか?
なかなか執念深い方のようです……。
「ふふ。貴女もあの男も難儀なことよ」
風の精霊さまが笑っているのが触れられている手からもわかります。しかし何が面白いのでしょうか?
精霊さま達は長生きをしているので娯楽に飢えているとはおっしゃいましたが年若いからかそれとも物を知らないからか私には理解できないことを時たまおっしゃるのです。
「あの……精霊さま……?いったいどういうことでしょう?ミゲルさまは私を監視していらっしゃるのではないのですか……?」
この質問で精霊さまの声は更に喜色に富んだものになりました。
「ふふっははっははははははっ!そうかそうかっかわいそうなのはあの男の方であったか!ははははっ!いやいや知ってはいたがこれほどとはっくふっ巫女どのも罪作りなお方だっ」
このおかしな状況に私は閉じていた目を開いてみますが精霊さまの手で隠された視界はそのまま暗くぱしぱしと瞬きをすればまつ毛に精霊さまの手が当たるのが感じられます。
つまり目隠しをされているわたしに風景が見えるはずがないのに目を閉じれば周りが見えるようになっているのです。
この不思議な状況におろおろしていると精霊さまが優しい声でおっしゃいました。
「巫女どの。恐れることはない。この遠見は貴女がしていた修行のそのまた先の術なだけだ。我が風はいついかなる場所にも存在する。これはそれを利用し人の身では見ること叶わぬ遠い場所を見る術よ」
「…………………。私にも……風の精霊さまのように遠い場所が見れる、のですか……?」
「その通りだとも。さあ巫女どの。目を閉じ腹の魔力を瞳へと集中させよ。その先は我が導いてやるゆえ」
精霊さまのおっしゃる通り今までの修行で何度もしたように魔力を移動するイメージをします。お腹から上へ上へと登らせ両目へと宿らせる。ここまではうまくできました。この先は精霊さまが導いて下さるはずです。
≪我が子よ。この館を巡る風よ。今しばらくそなたの見るものを我と我が導きし者に見せよ。風の声を届けよ。≫
両の瞳に宿らせた魔力が少し熱を帯びたかと思うと膨張しそれから細く細く伸びて行きまたぱちりと音がするように風景が見えるようになりました。今度は館の中です。
ここは………私のいるテーブルの正面の部屋でしょうか?
風の精霊さまがそちらばかり見ていらっしゃるから私も同じように部屋の方を見ていたので良く覚えています。他の部屋もよほど似た作りにされていない限りはその通りのはず、だと思います。
「? そこ、ソファの奥……誰か、いらっしゃいます、よね……?」
壁にぴたりと沿って置かれている3人掛けのソファの影に誰かが隠れていらっしゃるようです。庭には日光が当たって明るく、あたりを見渡せばどこに何があるかわかりますが部屋の中となると奥に行くにつれ光が届かず薄暗くなっていますので誰かが隠れていても庭からはよほどせわしなく動いていない限り気付きません。
しかし今は風の精霊さまのお力で遠見をしていますので前後左右と好きな方向から、室内に限らず遠く奴隷市場まで見ることができるでしょう。
さて、どなたがこちらを見ていたのでしょうか……?
「え、ミゲル……さま……?」
床に片膝をつけこちらをうかがっていたのは見間違いようもなくミゲルさまでした……
「どうして……?私が逃げ出さないように監視してらっしゃるのでしょうか……?」
買われた以上私にはそのような自由は無いと思いますが特に≪命令≫で逃げるななどといったことは命令されていませんので逃げようと思えばできる、と思われているのでしょうか?
なかなか執念深い方のようです……。
「ふふ。貴女もあの男も難儀なことよ」
風の精霊さまが笑っているのが触れられている手からもわかります。しかし何が面白いのでしょうか?
精霊さま達は長生きをしているので娯楽に飢えているとはおっしゃいましたが年若いからかそれとも物を知らないからか私には理解できないことを時たまおっしゃるのです。
「あの……精霊さま……?いったいどういうことでしょう?ミゲルさまは私を監視していらっしゃるのではないのですか……?」
この質問で精霊さまの声は更に喜色に富んだものになりました。
「ふふっははっははははははっ!そうかそうかっかわいそうなのはあの男の方であったか!ははははっ!いやいや知ってはいたがこれほどとはっくふっ巫女どのも罪作りなお方だっ」
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