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13.皇族の帰還・再動

二百六十四話 皇族という役割

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264話 歴代皇帝達が担いし使命の墓

扉に手を掛ければ重そうな見た目に反し、軽く音を発てることも無く開いていく
まるで墓が向かい入れている様な開き方だ、これもやはり皇族だからこその特徴か
「なんか軽いわねこの扉・・・鍵も掛かってないし不用心じゃない?」
「とは言え中にあるのは棺だけだからな、そんなものじゃないか?」
中に入れば扉が閉まる、今回は完全に自動で閉まったが魔道具で管理してるのか?
横への通路を無視して真っ直ぐ奥に行けば、左右に大きな石の棺が並んでいるその
中央奥に壁画の様なものと痩せこけた悪魔のような人型の像が置かれていた
「何これ・・・悪魔の石像?別に防衛用って訳じゃなさそうだけど」
確かに魔力を感じる訳でも無いし、ただの石像なのだろう
「ガーゴイルみたいな魔法人形とか魔法生物でもなさそうだし・・・何より弱そう」
確かに見た目は弱そうだ、動いて戦えるにしても大きさも人間サイズだし戦闘力は
高く無さそうだから威嚇としては弱い・・・魔除けのようなものだろうか?
「それに関してはあまり重要ではない」
いつの間にか実体化していた2人が隣に立っていた・・・霊なのに態々立っていたり
律儀に歩くのはなんでなんだろうか、まぁそれは個人の自由だから別にいいんだが
それはそれとして気になる事ではある・・・もしかすると生前の感覚を忘れないよう
にしているのだろうか?人間としての感性を失いにくくでもなったりして?
「ふーん?なのに墓の中心部はこれなの・・・?バル兄さん?」
「はははっ覚えていてくれたか、会ったのは生前でも随分前なのだがな・・・大きく
なった、今となってはもうティナの方が年上か?」
「えぇそうね・・・もう26になったわ」
「おぉ兄者!2人共越されてしまったな!」
「ふっ、生前の年齢など大して意味など無いだろうに・・・さて妹よ歓迎しよう」
バーゼスクライトは大仰に両手を広げた、いつもと違って似合わないな・・・
「クマンティナ・オルドリッテ、生き残った最後の皇族よ、我等この墳墓の歴代皇
がお前の帰還を歓迎する・・・残念ながら父上は役目の途中で居ないが許せ」
「役目、最後、使命ねぇ・・・」
「皇帝が短期で続けざまに死んでしまったのでな、少し渋滞しているのだ」
「その役目って奴?」
「そうだ、皇帝は死後この墳墓に取り込まれある役目に努める事になる」
「勿体ぶってないで教えなよ」
「当然教える、それよりその中央の壁はなんだと思う?」
「これ?壁画じゃないの?全然読み取れないヘタクソな絵だけど」
「それ自体は特に意味は無い、しいて言えば危険を知らせているようだが・・・今では
もう読み取れる者も居ない」
「ふーん・・・?でも重要なのはそこじゃないんでしょ?」
「あぁ、これは扉だ・・・封印の扉であり別けるための壁と言ってもいい」
「扉?まぁこれが開くとしても封印?で別けるって何?」
確かに壁の向こうからは確かにこことは全く違う気配と言うか空気を感じる
「この先に繋がっているのは深淵と呼ばれる場所、本来地上には存在する筈は無い
のだがな・・・お前も深淵の事は聞いた事位あるだろう?」
「そりゃ有名な世界の寿命の話にも出てくるんだから誰でもあるだろうけど」
そんな有名な話があるのか・・・聞いた事は無かったが常識みたいなものなのか?
「世界の寿命ならまだしも深淵に関してはおとぎ話みたいなもんでしょ?あんまり
出て無かったはずだし確か書いてあったのも、世界の原点・・・とかなんとか」
「深淵は命の無い場所、命持つ者も持たぬ者も終わる場所、世界の始まりにして
世界が終わりに回帰する、全ての始まりに零れ落ちた原点領域・・・だろう?」
「良く覚えてるわね、確かにそんな感じだったけど、なんか頭良さそうな事書いて
るだけなんじゃないかって思ってた、そんなのどうやって判るんだって話だし」
「まぁそもそも知る必要のない事だからな、表には出たが民衆にとってはどうでも
良い事であり特に関心を持つような事でも無いのだろう」
「生活するうえで必要な訳では無いからな、知って何かになる訳でもない」
「まぁだからこそ眉唾物・・・というか著者の空想の産物となっていたのだが」
「それでその深淵があるとしてその話もマジってこと?」
「あぁ事実だ、古き神々より先に存在しこの宇宙より先にあったとも言われている
そこに関しては今の神達から聞いたから間違っては無いと思うぞ」
「それじゃ古き神ってのは?」
「それは今の神すら知らんだろうな、情報もないし絵はあるが大雑把過ぎてな・・・
描いているのがよく分からん・・・それに今の神も地上の存在も彼らを認識する事が
出来ないとかなんとか、気にしなくて良いだろう、他に何かあるか?」
「深淵と繋がってるってのは?」
「この扉を開けば深淵へと繋がる道になっている、まぁ深淵までは非常に長く途中
危険も考えれば辿り着ける者も居ないだろう・・・」
「なのに封印してるの?」
「あぁ、立ち入る事は確かに危険だがそれ以外にも危険がある、深淵から溢れて出
て来る空気は生物にとって毒の様な物でな・・・吸えば基本的に衰弱死してしまう」
「それで封印の壁がある訳?」
「そうだ、なんと我等皇族は深淵への耐性を僅かに持っているのだとか・・・本当か
どうかは知らんし役に立つかも判らんがな」
「まぁあるのは事実だと思うぞ?兄者、まぁ結局俺は呑まれたんだが」
「呑まれるって?深淵に?」
「そうだ、呑まれた者は変異してしまう・・・俺の時は特殊な状況だったから殆ど
意識が変化した位で済んでいたが、兄者ならまず呑まれる事も無かったろう」
「なんで?耐性の差?」
「どちらかと言うと存在の格の差だ・・・まぁ神であろうと呑み込むから耐性の差と
言ってもいいかもしれんが、自我や意思の強さが幾らか耐性の変わりになる」
「意思の強さ?」
「そうだ、意思の弱い存在は僅かに触れるだけでも意識を持って行かれると言う」
「神達ですら恐れているのは事実のようだからな、神達も常に警戒している」
「神が恐れるのも無理は無い、神は強い自我や意思を持つ訳でも無く深淵自体が
神に対して優位な存在だからな・・・まぁ流石に細かい理由までは知らん」
「完全に神より上位の存在って事よね」
「そうだな、深淵そのものに意思が無いのが唯一の救いか」
「まぁ空間だろうから意志を持って活動している訳じゃないのよね」
「ただ意志を持っているかのように、活動を活発化したり小康状態に変化する事も
それなりあるようでな、なんとも厄介なものだ」
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