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13.皇族の帰還・再動

二百六十九話 吸血鬼の城で・・・

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269話 吸血鬼の王たる者?

後ろから見ている並んで歩く2人の会話はどことなく楽しそうに見える、そうだな
これが友情というモノなのだろうか?皇族と吸血鬼の王、他の者達の反応からする
とそんなに親しい間柄と言う訳でも無さそうだったが・・・
「どうした?首を傾げて、なんぞ疑問でもあったか?」
こっちを向いたまま後ろ歩きしているその吸血鬼王から話が振られた・・・丁度いい
「いや2人の仲が良さそうなので・・・偉い者同士あまり親しくなるようには見えず」
「ん?まぁそうか・・・確かにコイツはちょい特別だな、実際親しくしている皇族は
バー坊だけじゃからなァ・・・他のとはそこまで関わりが無い、バル坊ですら関係が
深い方になるしのォ」
「ん?バルゼリットとも結構関わりがありそうでしたけど」
「バル坊はどっちかてェっとウチの長男の方が関わりが深いのよ・・・っと、そうだ
子供達の紹介はしないぜェ?趣旨も違うしな?ん?紹介?あぁそうだ、紹介といや
ワシ名乗ったっけ?覚えがないが」
「名乗ってないな、そもそも帝国では名を知らぬ者は居まい・・・」
「おぉそうだったか、では名乗られねばなるまいが・・・そりゃ中に入ってだな」
目の前には赤と黒で彩られた装飾の多い城門が見えている、城門の前には何かの
彫像も置かれていて皇族の城より派手で豪華そうに見える・・・近付くと彫像が僅か
に動いたような?その彫像の近くまで来ると扉が開かれた
「おォここを通るのも随分と久しいのォ」
そこから見えるのは、陽が昇っているにも関わらず少し薄暗い街並みと人気の無さ
で廃れた廃村のような印象さえ受ける・・・所々木片や石片が散らばってるし・・・
だが全く手入れがされていない訳では無く、すこし塵の様なものが積もっている
場所があるだけで、そこ以外はそれなりに綺麗になっているし窓も汚れていない
「まーた誰ぞが喧嘩でもしとったのか」
つまらなそうに言い放った、こう言ったのは良く在る事のようだ
「やるならもっとハデにやらんかい」
「何を言っているのだ・・・王なればそれを諌めるべきで助長させるとは」
「別に街なんぞ幾ら壊れようが直ぐに治せる、正気を失って暴れられるより適度に
ガス抜きしてくれた方が被害も減る・・・人類種よりも面倒なんでの」
「成程・・・吸血鬼としての特徴か」
「昔正気を失くし狂って暴走した中級の吸血鬼が街の2割程を吹き飛ばした・・・
たかが中級がだぞ?そんな力は持たんと言うのに・・・結局そ奴は自滅し死者も出る
事は無かったが巻きこまれた奴らが復活するまで1か月程掛かっていたからな」
「人類種なら普通に死んでますね」
「そうじゃ、帝都も少し巻きこんじまったからな・・・ここまでの道中少し変だった
じゃろ?その時に抉り飛んだから造り直した結果周りと違ってるって訳だ」
「そんな話し聞いた事が無い・・・随分昔の事なので?」
「今から600年は前の話じゃからな、そっから適度のガス抜きを推奨しとるのよ
第五世代位からかのォ・・・若いモンらは本能に弱くなっちまった」
「前に言っていた新世代の吸血鬼の能力低下を感じた奴ですね」
「そうなんじゃぁ、あれじゃな、エルフやドワーフが劣化しエルダーと言う古代種
と新しい同族種に別れたようなもんじゃ」
「どの種族にもエルダーは存在すると聞いたが・・・上位種と言う事でいいのか?」
「どの種にも存在する訳じゃない、もう死んどるのが殆どじゃろうし上位種と言う
より原種の方が近かろう」
2人は何やら話が盛り上がっているのか話しながら、その後ろに着いていき大通り
を進んで行く・・・城に向かっているからと言う訳では無く、王が居るからか人間が
居る事で目立っているのかあちこちから少しづつ視線を感じる・・・少し顔を上げて
空へと目を向ければ吸血種らしき魔物が4体飛んでいるのが見えた、そして窓から
こちらへと視線が幾つか向いているのも分かった、そこには敵意や負の感覚は無く
かと言って興味の様な物も感じられない・・・ただ見られている視線を感じるだけだ
言うなら無機質で無感情な視線、今まで感じた事が無いからか少し変な感じがする
弱い生体反応を多く感じ取れる、まるで死の気配と生の気配が混じったような気配
いや死の気配を生の気配で覆った様な感じか?吸血鬼の気配は特殊だな・・・あの
吸血鬼の王からは死の気配をそんなに感じないが・・・あれは能力で気配の操作でも
しているんだろうか?隠密系の気配遮断も常時されているようだし、そうして
周囲の気配を気にしている内に城の前まで着いていた、どうやら城は街の中心に
あるようで思ったより入口より近かった
「さて着いた、まァ久しぶりの客人、色々気にされるだろうが気にするな」
城そのものは装飾も無い無機質感しかない簡素な物で、王が住むにしては少し質素
過ぎる気がするが・・・何と言うか前線の砦の中枢部分の様な物に見える
街の入口の門よりも簡素だが隙間の無い城門を抜ければ、道の両脇に綺麗に並んで
いる花は良く手入れされているようだが、壁や地面は放置されているようだ
大きめの引き扉を開いて中に入る、視界に入ったのは赤・・・床一面に赤い敷物が敷き
詰められており、壁は下から2割程が木だがその上は赤で塗装され天井は黒い
「おォーい誰ぞおるかァ?客人だ、客間に持って来い」
入ってすぐにそう言ってそのまま左へと向かう、天井は高く通路も3人は横並びで
歩ける程に広く造られていて、皇城より城自体は小さいが通路は広くなっている
少し進んで2つ目の扉を開けて入っていく、ここが客間と言う事か
「さァ、好きにくつろいでくれ」
イスには3種類のサイズがあり、直ぐ様吸血鬼王は窓側に近い長椅子に寝転がって
バーゼスクライトはその隣にある1人用の椅子の背の部分に腰掛けるようにもたれ
掛っている・・・バルゼリットとクマンティナは通路側の長椅子に座ったため残った
その間にある椅子に座る事になった、そして寝転がっていた姿から座り直すと直ぐ
に2度のノックが鳴り扉が開かれる、キッチリとしたスーツを着こなす灰色の髪と
赤い眼をした、老人に差し掛かった程に見えるが筋肉質の従者らしき者が箱を台に
乗せて運んで来た、その横に置かれているコップは丁度人数分の5つある・・・んだが
霊は飲食出来ないのでは?3人分だけでいいと思うん・・・ん?5つあると言う事は
入って来た人数を把握していたのか?それとも基本的に5つ用意しているだけか?
コップを置く皿?の様な物には6つまで置けそうだが、いやそんな事まで気にする
必要は無いか・・・色々探るのは失礼と言う奴だな
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