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13.皇族の帰還・再動

二百七十一話 吸血鬼王との鍛錬

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271話 その名その力その重み

「これで1つ終ったな、嬢ちゃん・・・いや時代の皇帝かァ、速く帰って即位の準備を
した方がいい、皇族の穴は存外大きいでなァ、それに話についてけ無いようだし」
「そうだな・・・バルゼリット、着いて行くがいい」
「む?俺は除け者か兄者?まぁ仕方ない、では行くぞティナ」
「えっあぁ、うん」
証明書を受け取ると少し不満げな様子で最後にクッキーのような物を2つ口に詰め
込み、残っている茶を飲み干しバルゼリットを先頭に帰っていく
「ワザワザ帰すとは、聞かせたくない話でもあるのか?」
「いやんなこたァ無い、言った通りの事・・・とあんまりここに居るべきじゃァ無い
のさ、ここは吸血鬼の領地でその城だ、判るだろ?」
「ふむ?危険と言う事か?」
「うむ、特に家の長女がな・・・キレやすい」
「そうか・・・それで鍛錬だが、主直ぐに始めるか?」
「構わない」
「なら着いて来い、流石にここではやれんのでな、裏庭が訓練場として使える」
「あそこか、確かに広さも十分ある」
「うむ、それでお前さんらクッキー食わんのか?」
「霊体の私に言うか?それに彼も基本食事は摂らないんだ」
「そうか、いい出来なんだがなァ食わねェのは残念だ、いや・・・そう言やァ魔人は
そもそも飲み食いしねェんだったか」
言い終えると彼は皿に残っていたクッキーを口に詰め込み、直ぐに残り少ない茶を
飲み口をモゴモゴ動かしながらコップを置く・・・彼もやっているしクッキーを口に
入れ茶を飲むのは普通なようだ、これも食事の楽しみ方の1つなのだろう
「ふむ、やはりジャム入りの方が茶に合うな」
立ち上がったかと思えばもう扉の前に居て開いていた、速すぎて見えなかったのか
転移していたのかどっちかだと思うが・・・一瞬影の様になっていたのは見えた
「そらどうした、行くぞ」
その後ろに着いて行き廊下を進んで行く、どうやら入口とは逆の方向に行くようだ
入口の部分と違って通路脇に台が設置され色んな物が置かれている、壺や像に仮面
と1つづつ並べられており、その間の壁には神秘的?と言うのか風景と思われる絵
が飾られている、そして端の壁には何故か赤く濃い宝石が額部分に嵌められ周囲に
薄い赤の小さい宝石が散りばめられている赤い仮面が掛けられていた
「さてここだ、誰も使っとらんし丁度いい」
扉を開くと乾いた風が弱弱しく流れて来る、見ればかなり広い・・・空間拡張がされて
いるのかその空間は外部から見る10倍以上はあるだろう、本来なら目前に家が建ち
並び奥には外壁があるはずだが・・・遠すぎて家がもう霞み始めている、そして魔力壁
なのかこの一帯を薄い透明な膜が覆っている
「十分な広さがある、それに大抵の衝撃はこの結界の内部で消えるから安心しろ」
「随分強度が高く空間も拡張しているな」
「あァ・・・元は家の姉弟喧嘩のために造ったのさ、今もたまにやってるんでな、んで
鍛練所って名目にしてここを残してる訳だ」
「長女と長男の喧嘩か・・・確かに風の噂で良く聞くな」
「まったくもういい歳だってのによォ、落ち着いて欲しいもんだぜ・・・んでバー坊
お前さんも混ざるかい?」
「止めておくよ、巻き込まれないように端で見ているさ」
「そいじゃ行こうかねェ、もうちょい先でやろうじゃないか」
そう言って先の広い場所へ向かって行く、まぁここはまだ壁が近いからそうなるか
「無口だねェ、なんだかんだワシの知っとる魔人はおしゃべりだったんじゃがな」
「申し訳ない、会話に慣れていなくて話すのが苦手なんだ」
「そうかァ、だが魔人は大体言いたい事を言って来るのが基本だから、まぁなんだ
・・・それも個性って事でいいんじゃないか?っとそうだ、言うのが遅くなったがこの
訓練では魔人の気配を出来る限り出さんでくれよ?」
「む?それになにか不都合が?」
「色々じゃ、最悪魔人が寄ってきかねんし、魔人の気配は死の気配・・・そう言うのに
敏感な奴らが殺気立っちまうのよ」
「むぅ・・・判りました、出来る限りは気をつけてみます」
「おう、その制御苦手なんじゃな、一応この結界が大抵のモン減少出来っから少し
漏れる位なら気にせんでもよい」
「はい、助かります」
「んじゃァ・・・やるとしようかァ、まずは慣らしから行こうかァ!」
一歩踏み出し片脚で跳躍するように向かって来た、右腕を後ろに引き左腕は前方に
防ぐ様に構えているような形へとその踏み出した瞬時になっている、右半身を引き
相対するような構えを取り、そこへ直ぐに向かって来た拳を避けるため右へと転が
る様に跳び込む、その拳は先程まで自分の胸部があった場所の直前で止まっている
「まァ当然これ位は避けれるか、だがコレが当たらないフェイントでしかなった
・・・とまでは判らんようだな」
「止めるとは思っていなかったので」
「ふん?なら次ぞ」
今度は軽い横跳びで一歩詰めてきて薙ぐ様に左腕を振り被る、これもまた止める気
があろうが無かろうが関係ない、狙ってきている物は全て当たる物として避ける
腕の範囲外へとなんとか避けると、そこから一歩分詰めながら半回転するように右
脚が左腕と殆ど同じ軌道で追撃として向かって来た、今度は避けれそうにないため
下から脚を押し上げる様にして防ぎしゃがんで避ける
「ふむ、あまり戦闘経験は無さそうじゃの、鍛練も無しに本能や資質で戦っとる」
「そうですね、戦った事も多くはありませんし」
「まぁ魔人相手だと戦いになんぞならんからな・・・基本一方的な殺戮でしかない
だがまだ人間と変わらんほどのお主にはこんな鍛練でも有効だろうて」
「助かります」
「うむ、では少しづつ速く重くするぞ」
言い終わった途端に右腕が伸びてくる、まるで掴むための様な爪で軽く斬り裂く様
でもあるどっちとも取れる指の形をしていて、捕まれないように後ろに下がり
「判断も反応も悪くないが、避けるだけでは鍛練にならんぞ?」
後ろへと跳んで着地したと同時に頭上から左腕が振り下ろされていた、さっきと同
じ様に右腕で横から当てて右側に逸らすと同時に左へ行くため地面を蹴り込む
地面を蹴りつけると同時に彼の左腕が地面を砕いた、上手く力を入れきれずこけて
転がる様に1回転し、彼の居た位置に向き直ると顔を狙って来た右脚が目前にあった
この距離では逸らすのも回避も無理だと思い、直撃すると思って防御態勢を取るか
と考えたが無意識にか右手が手を脚に叩きつけ掴んで止めようとした、だが直ぐに
力負けしたと感じて掴むのをやめ防御態勢を取ると簡単に吹き飛ばされた・・・
「ほう!良い反応だ、今のを防ぐか」
背中から地面に落ち少し滑った所で、体勢を戻すため跳ねる様に体を浮かし手足で
滑るのを止める、どうやらここに追撃は無いようでさっきの場所から動いていない
「いい動きだ、そこから直ぐに体勢を整えるとは、人間らしくはないが・・・今のは
そのまま滑って距離を取るのもありだったぞ?」
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