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第三部 美少女モンクと四天王
第82話 暗黒騎士の隠れ里
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『水の巫女の祠』を出た俺達は、飛空艇ミューズ号へと戻り、暗黒騎士の隠れ里フォルバガードを目指して東へと飛び立った。
この世界も地球と同じ様に世界は球体状であり、地図で言う所の右(東)端へひたすら進んで行くと、地図上の左(西)端から現れるというように、東と西、北と南は端で一つに繋がっている。
ちょうど今、地図上の東端を越えたが実際の空の上では何の変化も起きない。あくまで地図表記の端という事である。……等と偉そうな事を考えているが、内心では地図の終わりは世界の終わりだったらどうしようと、ほんの少しびびっていたのは皆には内緒だ。
因みにカエル勇者ケオルグも、飛空艇に乗った途端に黄色い顔を青ざめさせて若干震えている。水には強いが空には弱いようだった。
東へ東へと進んで行くと、お馴染みの聖地チャンティ湖のあるクシャルト大陸の西端へとやってきた。そこから少し南下したところへ目的地の暗黒騎士の隠れ里フォルバガードがある。……いや、あったというべきか。
イーリアスが子供の頃過ごしていた父方の隠れ里も、母カサンドラの出身国である小国イデュラ王国も、どちらも滅んでおり今はもうない。十数年前にジョアーク帝国に滅ぼされているのだ。
隠れ里というだけあって、元々目立たない様に里が作られている上に、既に滅んでいるので上空からの発見は難しそうだ。
「イーリアス、カサンドラさん、隠れ里の位置は空からでもわかりますか?」
「無論だ。 山並みと川の流れから上空からでもわかる」
「そうですね、リアの言う通りです。それにしても生きて再び隠れ里フォルバガードに行く事になろうとは」
カサンドラが既に涙ぐんでいるが、泣くのはまだ早いですよ。サプライズを用意してありますからね。
「おっ! あそこだ! あの双子山を目印に少し川を下った所を東へ行ってくれ!」
イーリアスの案内で無事に暗黒騎士の隠れ里フォルバガードの跡地へと辿り着けた。ゲームでもここへはイーリアスを仲間にしていないと行けない文字通りの隠しイベントスポットなのだ。
「イーリアス、カサンドラさん、その……言いにくいんですけど、お父さんのお墓に連れて行ってもらっても良いですか?」
「父、ヘレノス=レオナルドは帝国軍との戦いで落命した際、自身の肉体をネクロマンサーに利用されない様に敵軍のど真ん中で盛大に自爆している。他の暗黒騎士達も同様に暗黒パワーを自ら暴走させて皆自爆して死んでしまった」
皆してしてそうなのか。暗黒騎士の散り際は凄まじいな。
「だから暗黒騎士の墓には、事前に家族に渡されていた遺髪を埋葬してあるのみだ。それでも良いか?」
「繋がりが感じられるところなら大丈夫だよ」
イーリアスとカサンドラの案内で隠れ里のはずれにある滝へと進んで行く。そして二人は躊躇なく滝へと突っ込んだ。
「皆、私達の真似をしてついてきてくれ」
かろうじて滝の裏からイーリアスの声が聞こえてきた。俺達も滝をくぐり抜けると滝の裏には洞窟があった、ここが歴代の暗黒騎士達の墓所か。
「暗黒騎士の開祖レオナルド=フォルバガードがこの里を興して依頼、棟梁家の墓はここなのだ。良かった、ここは帝国軍にも見つからず荒らされていないようだ」
イーリアスとカサンドラが一つの墓標の前に立つと祈りだした。ここがイーリアスの父ヘレノスのお墓のようだ。俺達パーティーの皆も同様にして冥福を祈る。
しばらくお祈りをした後、アララット山の山頂で手に入れたレアアイテム『ドアの箱舟』と大聖堂地下ダンジョンで手に入れたレアアイテム『降霊草』をインベントリから取り出した。
「二人共聞いてくれ。この『ドアの箱舟』を使うと、望んだ相手の霊魂と交信が出来るようになる。更に、この『降霊草』を食べると、呼び寄せた霊魂を一時的に食べた者に憑依させることが可能なんだ」
「今回はイーリアスがやってみないか? どうしても話をしたいなら俺が食べても良いけど、縁がある人のほうが長く話せるみたいなんだ」
「是非私にやらせてくれ」
『ドアの箱舟』にヘレノス=レオナルドと書いた紙をセットし終えるとイーリアスは『降霊草』をムシャムシャと食べた。
すると······
イーリアスは半眼となり、起きているのに寝ているかのような状態になった。俺も経験したからわかるんだけど、自分の意思で身体を動かすことが出来なくなるのだ。あの時はまるで起きながら夢をみているかのようだった。
「ああ、カサンドラ。久しぶりだね。君はいつ見ても美しいな。これはリアの身体を通して話をしているのか? リアも立派に育ってくれたみたいで嬉しいよ」
イーリアスの身体が動いてカサンドラの事をぎゅっと抱きしめる。
「······ヘレノスなのね?」
「ああ、そうだよ。随分と時が流れたみたいだけど、私だとわかってくれるかな?」
「私にとってはつい最近よ······こうしているとヘレノスの心を感じるわ」
抱き合ったまま、カサンドラとイーリアス(ヘレノス)が二人共大粒の涙を流していた。
二人の会話は続いていく……
この世界も地球と同じ様に世界は球体状であり、地図で言う所の右(東)端へひたすら進んで行くと、地図上の左(西)端から現れるというように、東と西、北と南は端で一つに繋がっている。
ちょうど今、地図上の東端を越えたが実際の空の上では何の変化も起きない。あくまで地図表記の端という事である。……等と偉そうな事を考えているが、内心では地図の終わりは世界の終わりだったらどうしようと、ほんの少しびびっていたのは皆には内緒だ。
因みにカエル勇者ケオルグも、飛空艇に乗った途端に黄色い顔を青ざめさせて若干震えている。水には強いが空には弱いようだった。
東へ東へと進んで行くと、お馴染みの聖地チャンティ湖のあるクシャルト大陸の西端へとやってきた。そこから少し南下したところへ目的地の暗黒騎士の隠れ里フォルバガードがある。……いや、あったというべきか。
イーリアスが子供の頃過ごしていた父方の隠れ里も、母カサンドラの出身国である小国イデュラ王国も、どちらも滅んでおり今はもうない。十数年前にジョアーク帝国に滅ぼされているのだ。
隠れ里というだけあって、元々目立たない様に里が作られている上に、既に滅んでいるので上空からの発見は難しそうだ。
「イーリアス、カサンドラさん、隠れ里の位置は空からでもわかりますか?」
「無論だ。 山並みと川の流れから上空からでもわかる」
「そうですね、リアの言う通りです。それにしても生きて再び隠れ里フォルバガードに行く事になろうとは」
カサンドラが既に涙ぐんでいるが、泣くのはまだ早いですよ。サプライズを用意してありますからね。
「おっ! あそこだ! あの双子山を目印に少し川を下った所を東へ行ってくれ!」
イーリアスの案内で無事に暗黒騎士の隠れ里フォルバガードの跡地へと辿り着けた。ゲームでもここへはイーリアスを仲間にしていないと行けない文字通りの隠しイベントスポットなのだ。
「イーリアス、カサンドラさん、その……言いにくいんですけど、お父さんのお墓に連れて行ってもらっても良いですか?」
「父、ヘレノス=レオナルドは帝国軍との戦いで落命した際、自身の肉体をネクロマンサーに利用されない様に敵軍のど真ん中で盛大に自爆している。他の暗黒騎士達も同様に暗黒パワーを自ら暴走させて皆自爆して死んでしまった」
皆してしてそうなのか。暗黒騎士の散り際は凄まじいな。
「だから暗黒騎士の墓には、事前に家族に渡されていた遺髪を埋葬してあるのみだ。それでも良いか?」
「繋がりが感じられるところなら大丈夫だよ」
イーリアスとカサンドラの案内で隠れ里のはずれにある滝へと進んで行く。そして二人は躊躇なく滝へと突っ込んだ。
「皆、私達の真似をしてついてきてくれ」
かろうじて滝の裏からイーリアスの声が聞こえてきた。俺達も滝をくぐり抜けると滝の裏には洞窟があった、ここが歴代の暗黒騎士達の墓所か。
「暗黒騎士の開祖レオナルド=フォルバガードがこの里を興して依頼、棟梁家の墓はここなのだ。良かった、ここは帝国軍にも見つからず荒らされていないようだ」
イーリアスとカサンドラが一つの墓標の前に立つと祈りだした。ここがイーリアスの父ヘレノスのお墓のようだ。俺達パーティーの皆も同様にして冥福を祈る。
しばらくお祈りをした後、アララット山の山頂で手に入れたレアアイテム『ドアの箱舟』と大聖堂地下ダンジョンで手に入れたレアアイテム『降霊草』をインベントリから取り出した。
「二人共聞いてくれ。この『ドアの箱舟』を使うと、望んだ相手の霊魂と交信が出来るようになる。更に、この『降霊草』を食べると、呼び寄せた霊魂を一時的に食べた者に憑依させることが可能なんだ」
「今回はイーリアスがやってみないか? どうしても話をしたいなら俺が食べても良いけど、縁がある人のほうが長く話せるみたいなんだ」
「是非私にやらせてくれ」
『ドアの箱舟』にヘレノス=レオナルドと書いた紙をセットし終えるとイーリアスは『降霊草』をムシャムシャと食べた。
すると······
イーリアスは半眼となり、起きているのに寝ているかのような状態になった。俺も経験したからわかるんだけど、自分の意思で身体を動かすことが出来なくなるのだ。あの時はまるで起きながら夢をみているかのようだった。
「ああ、カサンドラ。久しぶりだね。君はいつ見ても美しいな。これはリアの身体を通して話をしているのか? リアも立派に育ってくれたみたいで嬉しいよ」
イーリアスの身体が動いてカサンドラの事をぎゅっと抱きしめる。
「······ヘレノスなのね?」
「ああ、そうだよ。随分と時が流れたみたいだけど、私だとわかってくれるかな?」
「私にとってはつい最近よ······こうしているとヘレノスの心を感じるわ」
抱き合ったまま、カサンドラとイーリアス(ヘレノス)が二人共大粒の涙を流していた。
二人の会話は続いていく……
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