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キャラ弁との出会い
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キャラ弁・キャラメシ。それは、新しい食事の形。
作り手それぞれが趣味趣向を凝らし、各々が持つ『好きエネルギー』を120%発揮して、動物やアニメキャラクターなどをお弁当箱やお皿という小さな、限られた空間の中に再現するもの。
一つとして同じものが存在しない、軽く触れただけで崩れてしまう儚い世界。まるでスノードームや箱庭。そんな小さな空間に自分だけの世界を成立させる素晴らしい創作物。
これは、とある社会人三年目のキャラ弁・キャラメシ大好き女子と、その新しい人生についての物語である。
♢♢♢
「……あぁ、なんてきれいなんでしょう……」
思わず感嘆の声が漏れ出ます。どうやらその声のボリュームが想像以上に大きかったようで。周りの人たちが振り返ってしまいました。
「……あ、ごめんなさい……」
あわてて周りに首だけ動かして謝りまくります。すぐに皆さん、それぞれの本の世界へと戻って行かれました。
料理の本が並んだ本棚の前に、私は今、立っています。
傍らの足元には大きめのトートバック。その中にも、図書館で借りてきた、たくさんの料理本が入っています。隣の健康コーナーの健康体操の本を読んでいるご年配の方や、反対側の雑誌コーナーで懸賞雑誌を眺めている方。彼らを同士として、かれこれ数十分、ここで私は本を読んでいます。
料理本、と言いましても私が好んで読むのはその中でも『キャラ弁』と呼ばれるジャンルのものです。
アニメのキャラクターや現実に存在する動物などを模した形を、食材で表現し、弁当という小さな空間の中で再現する。それが、『キャラ弁』です。
私が子どもの頃には、タコさんウインナーや、キャラクターの型を使用して作ったおにぎりはありましたけれども、色などまで再現する人は少なかったように記憶しています。
SNSの普及、映えるものを追求する現代らしいですよね。
そんなキャラ弁と私の出会いは、一ヶ月ほど前までさかのぼります。仕事に疲れていて、早く眠ればいいのにぼーっとSNSを眺めていた時、それを見つけました。
とってもかわいいキャラ弁の写真。それを見て、私は思ったんです。
『よし、これを糧に生きよう』と。
そんなキャラ弁に、私は今、強烈に惹きつけられています。仕事の合間、束の間の休息。そんな小さな安らぎの時間に、小さな幸せを。
そう思って、自分で料理に挑戦はしてみたものの。残念ながら、私は料理の腕はからっきしだったようで……。
出来上がった料理と呼んではいけなさそうな何かを前に、呆然としたのがつい、数日前の話です。
それからはSNSや本で、キャラ弁のことをリサーチする毎日。そして、
『自分ならこういうキャラ弁を作る』
というアイデアを、ノートに書き綴る日々です。これが、なかなかに楽しい。
社会人になってから、『働く意味』『人生の楽しさとは』という疑問符がたくさん浮かんでいましたが、今なら分かります。
働く意味は、キャラ弁のアイデアを極め、いつか素敵なシェフさんを雇って、キャラ弁専門のお店を開くこと。
そのために、今資金を集めるために、働く。
そして今の私にとっての『人生の楽しさとは』、キャラ弁のアイデア集め、人様が作ったキャラ弁を見るために、生きること。
今、私は人生の第二の楽しさの絶頂期にありました。
作り手それぞれが趣味趣向を凝らし、各々が持つ『好きエネルギー』を120%発揮して、動物やアニメキャラクターなどをお弁当箱やお皿という小さな、限られた空間の中に再現するもの。
一つとして同じものが存在しない、軽く触れただけで崩れてしまう儚い世界。まるでスノードームや箱庭。そんな小さな空間に自分だけの世界を成立させる素晴らしい創作物。
これは、とある社会人三年目のキャラ弁・キャラメシ大好き女子と、その新しい人生についての物語である。
♢♢♢
「……あぁ、なんてきれいなんでしょう……」
思わず感嘆の声が漏れ出ます。どうやらその声のボリュームが想像以上に大きかったようで。周りの人たちが振り返ってしまいました。
「……あ、ごめんなさい……」
あわてて周りに首だけ動かして謝りまくります。すぐに皆さん、それぞれの本の世界へと戻って行かれました。
料理の本が並んだ本棚の前に、私は今、立っています。
傍らの足元には大きめのトートバック。その中にも、図書館で借りてきた、たくさんの料理本が入っています。隣の健康コーナーの健康体操の本を読んでいるご年配の方や、反対側の雑誌コーナーで懸賞雑誌を眺めている方。彼らを同士として、かれこれ数十分、ここで私は本を読んでいます。
料理本、と言いましても私が好んで読むのはその中でも『キャラ弁』と呼ばれるジャンルのものです。
アニメのキャラクターや現実に存在する動物などを模した形を、食材で表現し、弁当という小さな空間の中で再現する。それが、『キャラ弁』です。
私が子どもの頃には、タコさんウインナーや、キャラクターの型を使用して作ったおにぎりはありましたけれども、色などまで再現する人は少なかったように記憶しています。
SNSの普及、映えるものを追求する現代らしいですよね。
そんなキャラ弁と私の出会いは、一ヶ月ほど前までさかのぼります。仕事に疲れていて、早く眠ればいいのにぼーっとSNSを眺めていた時、それを見つけました。
とってもかわいいキャラ弁の写真。それを見て、私は思ったんです。
『よし、これを糧に生きよう』と。
そんなキャラ弁に、私は今、強烈に惹きつけられています。仕事の合間、束の間の休息。そんな小さな安らぎの時間に、小さな幸せを。
そう思って、自分で料理に挑戦はしてみたものの。残念ながら、私は料理の腕はからっきしだったようで……。
出来上がった料理と呼んではいけなさそうな何かを前に、呆然としたのがつい、数日前の話です。
それからはSNSや本で、キャラ弁のことをリサーチする毎日。そして、
『自分ならこういうキャラ弁を作る』
というアイデアを、ノートに書き綴る日々です。これが、なかなかに楽しい。
社会人になってから、『働く意味』『人生の楽しさとは』という疑問符がたくさん浮かんでいましたが、今なら分かります。
働く意味は、キャラ弁のアイデアを極め、いつか素敵なシェフさんを雇って、キャラ弁専門のお店を開くこと。
そのために、今資金を集めるために、働く。
そして今の私にとっての『人生の楽しさとは』、キャラ弁のアイデア集め、人様が作ったキャラ弁を見るために、生きること。
今、私は人生の第二の楽しさの絶頂期にありました。
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