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第一章 クリスマスと藁人形
互いの気持ち④
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しかし桃は顔をそらす。
「桃ちゃん?」
半ば力業で、風悟は桃の顔を両手で掴んで自分のほうに向けた。引き寄せられてやや頬がつぶれているが、口元を緩めてにやにやと赤面しているのがわかる。
「……嬉しいなら、はっきりそう言ったらどうや」
「風悟が私にベタ惚れなのは今さらじゃない」
「初恋やからな。まあひよこの刷り込みかもしれんが。最初に見たおかん以外の女がお前なんてなあ」
「まーちゃんがびっくりしてたわね。本家の跡継ぎは生まれた時から式神が見えるのは本当だったのかって」
「親父はなあ」
風悟は、無造作に頭をかく。
「本家が嫌いなんや。だから……」
「なによ」
数秒黙って、いや、と風悟は黙る。冬の空気は冷たく、風悟はダウンの襟元を合わせるが、桃は寒暖差を感じない。
「明日もバイトやけど、午前中はスマホ修理に行くからな」
「忙しいわね」
「誰のせいや。全く、神社のインスタ借りてちょっと書いたから、見とってくれてたらええんやけど……」
正嗣が神社の情報や御朱印を載せてるのだが、そこに「息子のスマホが壊れた」と書いてもらったのだ。客寄せのために、白衣袴の格好をした風悟の写真と「初詣はこちらの神社へ」という宣伝文句も込みである。
「なんか、コスプレっぽーい。茶髪で白衣、なんかへーん」
桃が写真を思い出したのか、嫌そうな顔をする。
「髪が茶色いのと癖毛は、しゃあない。生まれつきや」
「神社の跡継ぎなのに」
「それは関係ないやろ」
とりとめなく話しているうちに、家に着いた。桃が風悟をちらと見てから消えると、正嗣が奥から顔を出したので、ひとまず何も起こらなかった旨を伝えて自室へ向かう。彼女からは特に連絡がなかったらしく、落胆したまま風悟はベッドに倒れこみ、慣れないバイトの疲れもあってあっさり眠りに落ちた。
「で、スマホ復活したんやろ。彼女は?」
夕方、スマホショップから直接バイトに行った風悟は、苦笑しながら内田に返事をする。
「まあ、普通です。インスタは見てたようで、『スマホ直ってよかったね』と」
「すねてんのか?」
「なら良いですけど」
「あかんやろ。きちんとフォローせな」
これは正太郎だ。
「……正太郎さん、なんていいますか。普段着だと普通にイケメンですね……」
均整のとれた体つきがわかるシャツにGパン。長い髪は無造作に流してあるが、骨格がしっかりしているのもあり、どう見ても男性だ。
「骨は削られんからな」
さらっと答えて、正太郎は開店準備のために店の外へでた。階段上や道路を掃除するためなので、バイトの身である風悟は慌ててあとを追う。
「あれ?
風悟の視線の先には正太郎の大きな背中が見えるが、彼は誰かを見つめている。正太郎が笑顔を向けているのは、おとなしそうな、若い女性だ。
「よかったな。退院したんか」
セミロングの髪を揺らして、こくりと頷いた彼女に、正太郎はさらに言う。
「気にすんなや。祈祷してくれた人はわかっとるみたいやけど、内田は知らんから、また気にしないで店に来たらええ」
「でも……」
「そもそも、藁人形なんてそんな効かんらしいで。けどな、変に思い詰めると、また周りが見えなくなって不用意に飛び出したりで、また怪我するからな。そしたら俺が庇った意味もなくなる」
女性は黙っている。
「俺と内田はただの友達や。な、クリスマスにでも来たらええ」
正太郎の中性的な笑顔を数秒見つめたあと、女性はお辞儀をして小さく言った。ありがとうございます、と。
「桃ちゃん?」
半ば力業で、風悟は桃の顔を両手で掴んで自分のほうに向けた。引き寄せられてやや頬がつぶれているが、口元を緩めてにやにやと赤面しているのがわかる。
「……嬉しいなら、はっきりそう言ったらどうや」
「風悟が私にベタ惚れなのは今さらじゃない」
「初恋やからな。まあひよこの刷り込みかもしれんが。最初に見たおかん以外の女がお前なんてなあ」
「まーちゃんがびっくりしてたわね。本家の跡継ぎは生まれた時から式神が見えるのは本当だったのかって」
「親父はなあ」
風悟は、無造作に頭をかく。
「本家が嫌いなんや。だから……」
「なによ」
数秒黙って、いや、と風悟は黙る。冬の空気は冷たく、風悟はダウンの襟元を合わせるが、桃は寒暖差を感じない。
「明日もバイトやけど、午前中はスマホ修理に行くからな」
「忙しいわね」
「誰のせいや。全く、神社のインスタ借りてちょっと書いたから、見とってくれてたらええんやけど……」
正嗣が神社の情報や御朱印を載せてるのだが、そこに「息子のスマホが壊れた」と書いてもらったのだ。客寄せのために、白衣袴の格好をした風悟の写真と「初詣はこちらの神社へ」という宣伝文句も込みである。
「なんか、コスプレっぽーい。茶髪で白衣、なんかへーん」
桃が写真を思い出したのか、嫌そうな顔をする。
「髪が茶色いのと癖毛は、しゃあない。生まれつきや」
「神社の跡継ぎなのに」
「それは関係ないやろ」
とりとめなく話しているうちに、家に着いた。桃が風悟をちらと見てから消えると、正嗣が奥から顔を出したので、ひとまず何も起こらなかった旨を伝えて自室へ向かう。彼女からは特に連絡がなかったらしく、落胆したまま風悟はベッドに倒れこみ、慣れないバイトの疲れもあってあっさり眠りに落ちた。
「で、スマホ復活したんやろ。彼女は?」
夕方、スマホショップから直接バイトに行った風悟は、苦笑しながら内田に返事をする。
「まあ、普通です。インスタは見てたようで、『スマホ直ってよかったね』と」
「すねてんのか?」
「なら良いですけど」
「あかんやろ。きちんとフォローせな」
これは正太郎だ。
「……正太郎さん、なんていいますか。普段着だと普通にイケメンですね……」
均整のとれた体つきがわかるシャツにGパン。長い髪は無造作に流してあるが、骨格がしっかりしているのもあり、どう見ても男性だ。
「骨は削られんからな」
さらっと答えて、正太郎は開店準備のために店の外へでた。階段上や道路を掃除するためなので、バイトの身である風悟は慌ててあとを追う。
「あれ?
風悟の視線の先には正太郎の大きな背中が見えるが、彼は誰かを見つめている。正太郎が笑顔を向けているのは、おとなしそうな、若い女性だ。
「よかったな。退院したんか」
セミロングの髪を揺らして、こくりと頷いた彼女に、正太郎はさらに言う。
「気にすんなや。祈祷してくれた人はわかっとるみたいやけど、内田は知らんから、また気にしないで店に来たらええ」
「でも……」
「そもそも、藁人形なんてそんな効かんらしいで。けどな、変に思い詰めると、また周りが見えなくなって不用意に飛び出したりで、また怪我するからな。そしたら俺が庇った意味もなくなる」
女性は黙っている。
「俺と内田はただの友達や。な、クリスマスにでも来たらええ」
正太郎の中性的な笑顔を数秒見つめたあと、女性はお辞儀をして小さく言った。ありがとうございます、と。
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