うつしみひとよ〜ツンデレ式神は跡取り陰陽師にベタ惚れです!〜

ロジーヌ

文字の大きさ
36 / 36
第二章 茅の輪くぐりで邪気払い

千景の力⑥

しおりを挟む
 それから千景は、無事に高校へ進学した。地元では中堅の女子校である。
 お礼に、と千景は正嗣へ遅めのバレンタインと称して手作りチョコをあげたが、「バイトやし気を使わんでも」と言われてしまった。高校生活もあわただしく2年と半年が過ぎ、千景は無事に短大への推薦が決まったが、正嗣はというと教師として勤めて3年が経ち、すでに家庭教師としてはお役御免となっていたので、本家へ顔を出すことも無くなっていた。

 はぁ、と初冬の縁側で半纏を着たままため息をつく千景の隣に、桃はちょこんと座る。
「恋煩いね」
「うるさい」
「そんなに気になるなら、まーちゃんのとこへ行ったらどう?本家の娘が訪ねて行っても、無碍に追い返したりしないでしょう?」
「それや」
 千景は更にため息をつく。
「本家ってだけで気ぃ使われるんは、嫌なんや……そもそも、まーちゃんはうちのこと、年下のめんどくさい小娘程度にしか思うとらんやろうし……」
「じゃあ、このまま龍ちゃんが決めた見合い相手と結婚するのね」
 桃がさらっと言った言葉に、千景は眉を顰める。
「なんやそれ……」
「千景」
 いつもより声音を落とした桃の言葉に、千景は思わず居住まいを正す。
「頑張れば結ばれるかもしれない相手が手の届くところにいるのに、何もしないのはただの怠慢よ?。私なんて…好みの男性の近くにいても、見ていることしかできない」
 千景はハッとした。桃は、佐々木家に仕える身でありながらも、当主とは対等だ。そもそも仕えた経緯は千景にはわからず、龍之介の顔が好みとは桃本人から聞いたが、叶わぬものとわかっているからか、妻の清子とも仲が良い。
「桃……なんか……ごめんなあ。式神っていうのも不自由やなあ……」
「千景が謝ることじゃないわよ。それに、佐々木家が勝手に途絶えるのははっきり言ってどうでも良いけど、よくわからない相手と黙って結婚するような、腑抜けな家系だったかしらと呆れてるだけ」
「……うちの男は、皆豪傑やからなあ……」
「そうよ、それを近くで見ているのも、とても良いものよ?」
 桃は笑顔で、長い袖を翻して宙を舞う。
「千景は女の子で、力が無くて。それでもし家が途絶えたとしても、それは千景のせいじゃないわ」
 千景は、縁側に座ったまま敷地を見回した。無駄に広い家は、昔から権力者のもとで陰陽師の仕事をしつつ、どさくさ紛れで山や土地を手に入れて来た結果だ。けれど、自分が跡継の能力がなく継げないのは、また気持ちが違う。
「千景」
 清子が、娘を呼んだ。
 お母さん、と千景が答えると、清子はゆっくりと近づき、そのまま隣に座る。
「お母さんは、千景に力が無いってわかった時に、これは大変だなと慌てたわ。だって、力は無くても桃のことが見えるんやもの」
 うん、と千景は頷く。
「だから、千景って名前にしたんよ。桃や、それ以外のお化けも沢山見えるかもしれんけど、それよりもっと、綺麗な景色も見て欲しいって思うて」
「あ……」
 千の景色、と言ったのは、正嗣だ。命名の事情を知ってるはずはないが、言い当てた彼のことを思い、千景は自然と苦笑する。
「やっぱり、次男坊はクセもんやなあ……」
 何?と聞く清子に、千景は笑顔で言う。
「お母さん、うちは家継がんでもええ?」

 そのあとの千景は、とにかく行動が早かった。まず龍之介の元へ行き、正嗣を呼んでもらう。訝しがる父親に、「後で話す」の一点張り。そうして週末の夜、一同は佐々木家のちょっと広めの居間に勢揃いしたのである。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...