ギフト争奪戦に乗り遅れたら、ラストワン賞で最強スキルを手に入れた

みももも

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魔王戦争

魔方陣

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「つい最近? ……魔界側で何か動きがあったのか?」
「そのようでござる。人間界の結界が消えた結果、強い魔物がこの辺りまで近づけるようになったとか、魔王軍の荒くれ者が人間界に向かう途中でこの都市を荒らし回ったとか。召喚勇者による殺戮におびえ、近くの集落から避難してきた者もいるようでござる」
「ちょっと待て。それって全部人間界側おれたちの影響じゃないか……」
「そもそもは『魔物が人間界に侵略してきたのが始まり』と言えないこともないでござるが……現状、魔界の側でも『仇討ち』とか『集団的自衛権』とかの発想で、人間界へ侵略しようという考えもあるようでござるから、要するに悪循環でござるな」
「そうか……」

 人間からすると「危険な魔物を倒すために魔界に進出しよう」という考えで、魔物からすると「人間界にいる人間は危険だから排除しよう」という考えで。
 先に手を出してきたのは魔王なのだから「魔物側が悪い」と決めつけることができるかというと、そうとも言いきれない。
 なにせ、人間が俺達勇者を召喚したのはそもそも「魔王を倒すため」という目的で、それはつまり魔物達への宣戦布告ととることもできないでもないだろうから。

 っていうか、グラット族のネズミから聞いた情報によると、まだこの世界に魔王は存在しないのだから、一番最初に人間界を襲った魔物も魔王ではないということになるのか?
 ……いや、ややこしいからは魔王ということにしてしまおう。
 少なくとも俺達勇者の中では「あの時の敵こそが魔王」という認識は共通しているだろうからな。

「それで、これからどうするでござるか? 我らの力があればこの都市を滅ぼすことも可能ではござるが……」
 忍者が俺達の方を向いて考えを聞こうとすると、真っ先にアカリが口を開いた。
「うん、そうだね。私は、わざわざ手に掛ける必要はないと思うよ。ここにいるのは戦士じゃなくて、避難してきただけの一般魔物がほとんどみたいだから。……でも、ちょっとだけ待ってくれる? 精霊達は、他に何かを私たちに見せたいものがあるみたい。みんな、着いてきてくれる?」
 アカリはそう言って、誰もいないことを確認して俺達がいる部屋の扉を開けて建物の外に出る。
 曲がり角などではその先に魔物がいないか確認して立ち止まるが、それ以外は迷いのない足取りで進んでいる。俺達には何も見えないが、アカリの目には目的地を指さす精霊のような物がはっきりと見えているんだろう。

 そうして彼女に着いていくと、アカリはとある建物の屋根の上で立ち止まった。
 少し先には不思議な、古い神殿のような建物がある。おそらくあの場所がアカリの目的地だ。
 石でできた柱が無造作に並んでいるようなその神殿には、多くの魔物が出入りしている。

「アカリ、あそこか? あの神殿に一体何が……あれは、魔方陣?」
「そうみたいだね、うん。精霊達はあの場所を示してるけど……なんなんだろうね」
「いや、アカリにもわからないのかよ……どうする? 念のため破壊しておくか?」
「考え方が物騒でござるが……しかし、イツキ殿の言うことにも一リアルでござる。魔物達がこの局面で用意しているということは、人類にとって危険な物である可能性が高いでござるからな……」
「そうと決まれば、じゃあ俺と忍者で破壊してくる。アカリとシオリはここで待っていて……」

 アカリの精霊が俺達をここに呼び寄せた理由は、もしかしたら他にあるのかもしれない。
 だが、ティナと赤髪を追いかけなければならないから、俺達には悩んで立ち止まっているような時間はない。
 そう思って早速、神殿に向かおうとすると、シオリが俺の手を掴んで止めた。
「シオリ? どうした? 何かわかったのか?」
「いえ……ですが、あの魔方陣、見覚えがありませんか?」
「見覚え? いや、俺は魔術とかは使えないから……シオリにはあの魔方陣の効果がわかるのか?」
「イツキも見たことがあるはずです。いえ、厳密にはそれとは違いがあるようですが……」
 俺でも見たことのある魔方陣?
 もしかして、俺が忘れているだけで、誰かに教えてもらったりしたか? ……いや、そんなことはないはず。
 アカリと忍者の方を見ても、黙って横に首を振るだけだ。二人とも記憶にないらしい。
「シオリちゃん、結局あれはなんなの? もしかして、破壊するとまずい物なの?」
「破壊しても、危険なことが起こるわけでは……ですが、本当に破壊しても良いものなのか、一度考えた方が良いとは思います」
 シオリはそう言うが、シオリ以外の三人はうまく理解できていないように首をかしげる。
 もう一度魔方陣の方を見てみるが、やはり何も思い浮かばない。
 俺達が諦めたようにシオリの方に向き直ると、彼女は「もしかしたら勘違いかもしれませんが」と前置きを置いて一呼吸して、小さな声で自信なさげに呟いた。

「私の記憶が正しければ、あれは『勇者召喚』の魔方陣。……つまり、私たちがこの世界に来たときに、足下に描かれていた図形と……その、非常によく似た特徴を持っています」

 シオリに言われて、改めて魔方陣を見てみると……確かに、そう見えなくもない。
 いや、正直に言おう。よくわからない。
 何せ俺には、魔方陣に関する知識がほとんど全くと言っていいレベルで存在しないから。
 おそらく、シオリは図書館で魔術について学んでいるからこそ、その特徴に気づけたのだろう……
「そう、なの? イツキくん、忍者君……分かった?」
「いや、俺は……忍者はどうだ?」
「確かに、錬金術師殿に見せてもらった魔方陣と似ている……いや、似ていない……すまぬ。拙者にもよくわからないでござる!」
「まあ、そうだよね。私もよくわからない。けど、シオリちゃんが言うなら、そうなんじゃないかなって気がしてきた」
「だな。一番詳しそうなシオリが言うのだから、それを信じるとして……問題は、その上であれをどうするかだ。魔物達は、勇者召喚をしようとしているのか? だが、なぜ?」

 たまたま遺跡がここにあっただけ……ということは、おそらくあり得ない。
 それにしては、遺跡の周りの警備が厳重すぎる。
 魔物達は、あの神殿でをしようとしていることは間違いない。
 もしかしたら、人間界の人々が魔王の脅威におびえて『勇者』を召喚したように、魔物達も異世界から『なにか』を呼び出そうとしているのだろうか。
 それはもしかしたら、人の姿をした第三次勇者なのかもしれないし、もしかしたら全く違う姿の『化物ばけもの』なのかもしれないが……

「いずれにせよ、危険なことに違いはない。予定通り、あの魔方陣を破壊……」
 ズゥウン……
「……なんだ? この音は……」

 急いで結論を出して魔方陣の破壊に向かおうとしたところ、全く関係のない方角から大きな音が聞こえてきた。
 まるで、壁に岩をぶつけたような音が、しかも連続的に何度も聞こえてくる。

「あっちから聞こえてくるみたいだね……」
 アカリが指さした先には、巨大な岩の壁があった。
 確かあの方角は、俺達が人間界から来たときに見た壁がある辺りじゃないか?

 ズゥウン……ズズズ……ガラガラ……

 やがてその岩壁は、大きな音を立てて崩壊していった。
 土煙の中から、魔剣の影のような物が見えたと思ったのは、さすがに気のせいだろうか。

 魔物達は慌てた様子で武装を調えて、崩れた壁の方へと走っていく。
「……どうする?」
「そうでござるな……まずは状況を把握した方が良さそうでござる。陣の破壊は後回しでござる!」
「だよな。さすがに非常事態だもんな……」
 念のため、魔方陣を破壊するか確認してみるが、それどころではないという話でまとまった。
 俺達は、魔物達には見つからないように気をつけながら、人と魔物が戦う音の聞こえる場所へと駆け出すことにした。
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