星を紡ぐ者

れんこん

文字の大きさ
5 / 14

5.織り手の地

しおりを挟む
grok

ルカは鍵を高く掲げ、織り手の地に響く光の糸を感じ取った。草原の草花、青い空、遠くの山々――すべてが彼と繋がっているかのように脈打っていた。鍵から放たれる暖かな光が、ルカの周囲に淡い輝きを広げ、まるで星の布を織るように、光の糸が空気中で揺らめき始めた。







「ルカ、今だ!その糸を操れ!」真紅の小鳥が叫び、ルカの肩から飛び立って虚空を旋回した。「君の心が弱まなければ、織り手の地は君を守る!」







ルカは目を閉じ、深く息を吸った。かつての失敗――ほつれた布、途切れた糸――が頭をよぎったが、今は違った。鍵の力が彼の心を導き、織り手の地のエネルギーが彼に力を与えていた。「僕にはできる…母さんが教えてくれたように、星を紡ぐんだ!」







ルカが心の中でそう叫ぶと、光の糸が一気に動き出し、彼の周囲に輝く壁を形成した。それはまるで星空を閉じ込めた障壁のようで、草原の光を反射して眩しく輝いた。ヴォイドウィーバーたちの黒い馬が突進してきたが、光の壁にぶつかり、弾き返されるように後退した。馬の赤い目が怒りに燃え、地面に焦げた跡を残した。







リーダーのヴォイドウィーバーが銀の剣を振り上げ、冷たく笑った。「小賢しい星紡ぎめ!その壁で時間を稼いだところで、鍵は我々のものだ!この地も、星の力も、すべて闇に飲み込まれる!」







その言葉に、ルカの胸に一瞬の恐怖がよぎった。だが、肩の傷口が疼く中、鍵の暖かさが彼を支えた。ふと、頭上を旋回する小鳥の声が聞こえた。「ルカ、思い出して。君の母さんが言ってたこと。『星は恐れを飲み込む』って。」







「母さん…?」ルカの脳裏に、母の姿が浮かんだ。彼女が星の布を織る姿、優しく微笑む翡翠色の目。そして、彼女がかつて語った言葉――「どんな闇も、星の光の前では力を失うよ。ルカ、信じて。」







ルカは鍵を握りしめ、大きく息を吐いた。「信じる…僕の光で、闇を追い払うんだ!」彼は光の糸をさらに強く引き寄せ、壁を越えて攻撃に転じた。糸が螺旋を描きながらヴォイドウィーバーたちに向かい、彼らの黒い霧を切り裂いた。リーダーが剣を振り下ろすが、光の糸はそれを弾き、剣にひびを入れた。







突然、草原の遠くから再びあの歌声が響いた。星の織女の声だ。柔らかく、しかし力強く、ルカの心に勇気を注ぎ込む。「進め、ルカ。鍵は君の意志そのもの。織り手の地を、闇から守れ。」







ヴォイドウィーバーたちが後退し始めたが、リーダーはなおも叫んだ。「これは終わりじゃない!鍵が目覚めた今、すべての世界が我々の手に入る!」彼が手を振ると、黒い馬たちが一斉に消え、代わりに空に暗い裂け目が開いた。裂け目からは不気味な囁き声が漏れ、ルカの光の壁を揺さぶった。







小鳥がルカの側に戻り、鋭く言った。「ルカ、あの裂け目は危険だ!鍵を使って閉じるか、この地を離れるか、選ぶんだ!でも急いで!織り手の地が持たない!」







ルカは光の糸を握り、裂け目を見つめた。鍵が熱く脈打ち、彼に何かを訴えているようだった。母の言葉、織女の歌、小鳥の導き――すべてが彼に決断を迫っていた。







user

ルカは嫌気が差していた。森を出てから、誰かに助けられてばっかりだ。小鳥の言うことを、…かぁさんの言う事を聞くのには、うんざりだ。



ルカは新たな力を手に入れ、何でもできる気がしていた。実際、自分で敵を追い払った。



ルカは開いていく裂け目に、手を伸ばした。鍵を持っているのとは反対の手を。



「何してる!」



小鳥は怒ったようにルカをつつく。それでも、ルカは手を伸ばし続けた。裂け目から真っ黒に塗りたくられた糸が、ルカの手へと伸びてくる。歓迎するように。手繰り寄せるように。



鍵が下ろした手の中で暴れる。



黒の糸が、ルカの指先に触れた。



その瞬間、ルカは闇の彼方へ堕ちていった。







「ピヨピヨ!」



耳のすぐ横で、小鳥のさえずりが鳴り響く。鬱陶しくてルカは耳を抑えた。すると、その指を小鳥が乱暴につついた。



「なんだよ!!」



ルカが鳥を叩き、起き上がると、頭がクラクラし、左肩に鋭い痛みが走った。



「ここは……?」



視界は曇りガラスを通しているかのように、熱っぽくぼやけている。何度か目を瞬くが、視界は晴れない。肩を抑えた手は血まみれになっていた。…血が、赤い。腕には巻き付くような黒い模様が刻まれている。



ルカはようやく何かがおかしいことに気づいた。

「ピヨピヨ!」



真紅の小鳥が抗議するように鳴く。



「鳥みたいだよ?普通に喋りなよ」



「ピヨ!」



「まさか、喋れ無くなったの?」



鳥は首を横に振った。



「僕が…君の言葉が分からなくなった…?」



鳥はうなずいた。



始めてのことにルカは困惑し、背中が冷たくなるのを感じた。



「お前、こんなとこで何してるんだ?」



突然声をかけられ、飛び上がる。



「…酷い怪我じゃないか!」



ルカの意識は、そこで途切れた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

氷の精霊と忘れられた王国 〜追放された青年、消えた約束を探して〜

fuwamofu
ファンタジー
かつて「英雄」と讃えられた青年アレンは、仲間の裏切りによって王国を追放された。 雪原の果てで出会ったのは、心を閉ざした氷の精霊・リィナ。 絶望の底で交わした契約が、やがて滅びかけた王国の運命を変えていく――。 氷と炎、愛と憎しみ、真実と嘘が交錯する異世界再生ファンタジー。 彼はなぜ忘れられ、なぜ再び立ち上がるのか。 世界の記憶が凍りつく時、ひとつの約束だけが、彼らを導く。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

ねえ、今どんな気持ち?

かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた 彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。 でも、あなたは真実を知らないみたいね ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・

聖女じゃない私の奇跡

あんど もあ
ファンタジー
田舎の農家に生まれた平民のクレアは、少しだけ聖魔法が使える。あくまでもほんの少し。 だが、その魔法で蝗害を防いだ事から「聖女ではないか」と王都から調査が来ることに。 「私は聖女じゃありません!」と言っても聞いてもらえず…。

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...