怪盗聖女達は召喚した国から財宝奪って逃走するようです〜聖女なんて面倒な仕事誰がやるもんですか!

ニコ

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7.完結

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 翌朝、私たちは各国の代表達に挨拶をしてほしいと言われ、この前の鑑定式が行われた部屋に連れてこられた。

 以前とは違い、立派な円卓に偉そうな人が座っている。ざっと数えて50名はいた。

「こちらは我が国と同盟を結んでいる国の代表です。では今から挨拶を行いますのでこちらに」

 舞台の袖へと案内された私たちにグーハの心の声が聞こえてくる。

『くくくっ、これで我が国が実質世界トップだ!』

 ……表面上は紳士を気取っている澄まし顔の神官ーーグーハーーの心はとても汚かった。

「ねぇ、どうする?」
「このまま様子見よ」

 ちょっと心配になってきた私は百合に判断を仰ぐが、百合は笑みを浮かべたまま突っ立っていた。

《わざわざお越しくださりありがとうございます。これより、我が聖女達のお披露目をさせていただきます》

 いつの間にか、舞台へ移動したグーハが以前の鑑定式でも使用していたマイクのような器具を使い、声を響かせている。

 やがて、グーハの挨拶が終わると王がゆっくりと出てきた。

「後ろについてまいれ」

 舞台に出る際に王に声をかけられた私達は王の後ろについて各国の王達の前に出る。

 途端に始まるざわざわ。

「本当に聖女なのか⁉︎」
「まさか2人も召喚するとは」
「信じられん」

 そんなざわざわを遮る人物がいた。国王だ。

《おほんっ。今回はお集まりいただき感謝する。さて、我が国は聖女の召喚に成功した。2人とも有能な加護を得ている。これからの話し合いは我が国を始めとした皆が楽しめるような物であって欲しいと願っておる》

 そう言外に、脅しをかける国王。勿論、言わずもがな盗聴器から聞こえてくるのはグーハと同じような汚い思いだ。

『ぐふふふふ、庇護してやる代わりに我が国の作物にかけてある関税をなくさせよう。ガッポリ儲けられるぞ‼︎』

 げっそりとする私達だが、国王はもっとすごい爆弾発言をかました。

《それから、聖女達は我と、大神官グーハと契りを結ぶことになった》

「え?」
「は?」

 あまりにも唐突な宣言に放心する私達。だって盗聴器からはそんな企み聞こえてこなかったから。

 パチパチと疎らに拍手が響く中、王は更なる爆弾を投下してきた。

《ここで、婚約発表を行おうと思っておる。さあ、聖女達よ名を言うのだ》

 その言葉に私たちはピンときた。

 あ、私たちが名を明かさなかったから強行突破してきたんだってね。

「伊能忠敬でーす」
「西郷隆盛」

 バリバリの偽名である。

《おお! イノウタダタカとサイゴウタカモリと言うのだな》

 そんな事など知らない国王は喜ぶそぶりを見せると、何かの書類を出してきた。

《さあ、ここにサインをしなさい》


    "奴隷契約書"

「おい」
「マジか」

 思わず声が漏れる私たち、どうやら国王は私たちがこの国の文字を読めないと思っているようだ。が、そんなの読めるに決まっている。多分加護なんだと思うけど……

「もういいや」

 ここで私の堪忍袋の緒が切れた。

「え?」
「百合、行くよ!」
「……わかったわ」

 会場全体に幻覚魔法を仕掛け、「もう少し、お宝持っていきたかったのに……」とブツブツ呟く百合の手を引いて舞台を飛び降りる。

《おお! 名を書いたか! これで婚約は成立した‼︎》

『はははははは‼︎ バカな聖女達だ。これで我が国は安泰だ‼︎ 最高の駒を手に入れたものだ‼︎ イノウタダタカは我のものだ‼︎ たっぷり可愛がってやるとしよう‼︎』
『ああ、サイゴウタカモリと言うのですね! なんて可愛らしい! ああ、早く愛でたい。奴隷契約で抵抗もできないはず……はぁ、どんな顔を見せてくれるのでしょう?』

「……あはっまだ時間あるから王宮のお宝全部もらう?」
「…………ふふっ当たり前じゃない」

 ゲスな心の声に百合はビキリと青筋を額に浮かべている。

「ああ、その前にこの国の説明書も置いてあげなきゃ」
「そうだね」

 百合が万能ポケットからバサッと取り出したのは大量の紙。

「ふふっ、この国の機密情報全部バラすわ」
「おお、やっぱりそうでなくっちゃ!」

 そう、あちこちの部屋に忍び込んだりした時に偶然見つけた国の財政赤字と違法取引などなど。

 この国の後ろ暗い所を全て記したこの紙。纏めたのは私。とてもじゃないけどこの国と今後仲良くしようとは思わなかった。

「あはは、幻覚魔法が切れた後が楽しみ」
「まあ私たちは見ることができないけどね」

 価値のありそうなものを全て万能ポケットに入れた後、私達は颯爽と王宮を出た。ついでに幻覚魔法も切る。

「貴国のお宝頂戴致しました。では……」
「「さようなら~!」」

 こうして、怪盗美少女(※自称)は颯爽と王宮から去ったのであった。

○○○

【幻覚魔法が切れた後の王宮】

《な、なんだこれは⁉︎》

 驚愕の声が会場内に響き渡る。国王があげた声だ。

《"お宝は頂戴した。あ、お礼にプレゼントをみんなにあげたよ♡ by怪盗美少女"だとぉ~⁉︎》

 目の前に2体立つ藁人形には、小馬鹿にした顔が描かれており、メッセージカードらしき物が貼られている。

 どう言うことだ⁉︎ 奴隷契約書にサインしたと思ったのは勘違いだったのか⁉︎

 グルグルと頭が混乱している国王に、各国の王から質問が上がった。

「これはどういうことですか⁉︎ 我が国から民を攫って売っているように書いてあるのですが?」
「わ、私の国もその被害がある!」
「まさか⁉︎」

 なんだ、うるさい! 今はそれどころではない‼︎ そう思いながらも、後ろを振り返れば何かの紙を掲げて各国の王達が憤慨している。

《な、なんのことだ?》

「王よ! これを‼︎」

 悲鳴を上げて駆け寄ってきたグーハに紙を渡される国王。それを読んだ瞬間国王は目を剥いた。

《っ⁉︎ こ、これは! 出鱈目だ! 皆さん、これは嘘です! 信じてはいけません‼︎》

「この紙に書いてあることは筋が通っております。どういうことですか‼︎ 説明を!」

 説明しろー! と声が上がり出す。その紙にはこれまで国王とグーハがやってきた違法行為が全て載っていた。ご丁寧にどうやったのか契約内容の詳細まで記されている。

「あ……ああ……」
《こ、こ、これは全てグーハがやったのだ! 脅されていたのだ‼︎》

 支離滅裂な事を叫び出す、国王。場は完全にしらけ、代表達はぞろぞろと会場から退出していく。
 
「まさか我が国の国民を勝手に奴隷されるとは、見損ないましたぞ!」
「密輸など言語道断」
「後日改めてお話しさせていただきたい」

 冷酷な目で見つめられる国王。

 くそっ! 金で黙らせる‼︎ 我が国は歴史ある調度品が沢山ある。それを売ればなんとかなるだろう。先程までの態度後悔させてやる‼︎

 しかし、国王の心はまだ折れていなかった。しかし、自室に戻る途中、違和感を感じる。

 ん? ここはこんなにガランとしていたか? 何か花瓶でも飾っていたはずだが。あと、ここには世界でも有名な画家が描いた絵が飾ってあったはずなのだが……

 その違和感は自室に戻ったときに理解した。

「な、なんだこれは⁉︎ 家具が1つも無いではないか‼︎ まさか……!」

 バタバタと王族としてあるまじき足音を立てながら宝物庫に向かう国王。

「どうなされたのですか?」
「いいから扉を開けろ‼︎」
「は!」

 取り乱した国王の姿に困惑する兵士達を怒鳴りつけ、宝物庫を開けさせる国王。

「開きました」
「どけ!」

 グイッと兵士を押し除け、宝物庫に入った国王はガックリと膝をついた。

「は、はは、ククッ! ははははははははははははははははは‼︎ なんだこれは! すっからかんではないかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 違法行為を繰り返し、聖女達を利用しようとした国は、全ての悪事がバレ滅んだそうだ。

 

【完】
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感想 1

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みんなの感想(1件)

penpen
2021.02.20 penpen

一気読みさせて頂きました(〃゚д゚〃)
偽名でその名使っちゃうんですね〜(*¯艸¯)

2021.02.21 ニコ

感想ありがとうございます\(^^)/
使っちゃいました(o^^o)

解除

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