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第十八話 声
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耀平の視界に、複数個の「第二ステージクリア」という文字が映っていた。その事実を直感した瞬間、
「勝った――」
耀平は「ほっ」と息を吐いた。
耀平が駆るムラマサは、唯一の第一世代型、最旧式の軍用ツクモスだ。先の対戦相手、コテツは第二世代型の傑作機。機体性能には、それなりの差が有った。それを覆す為に、耀平もそれなりの工夫をした。それなりの神経を摺り減らした。その努力が報われたのだから、それなりの達成感を覚えるのも当然だろう。その衝動に駆られるまま、耀平は右拳を掲げようとした。
ところが、耀平が拳を握り締めたところで、左肩から少女の声が上がった。
「耀平」
「ん?」
「次が来たぞい」
「!」
耀平の左肩に乗った小妖精――名取耀蔵(AI)が「次」と言った瞬間、ムラマサ内部の黒いAサイズの画面(サブモニター)が表示された。
レーダーの中心に、ムラマサを示す青い光点が有った。その位置から南東の方角、凡そ一キロメートル付近に赤い光点が灯っている。その傍には機体名を示す文字が表示されていた。
〈NTMH 05 Flagaluck〉
フラガラック。ケルト神話に出てくる光の神ルーの愛剣である。その剣には「使用者の意のままに操ることができる」という魔法が掛けられている。
敵レーダーに表示されたフラガラックは、元ネタに因んで開発された第三世代型軍用ツクモスであった。
因みに、機体番号に入っている「H」はHeavy、即ち重量級を意味している。その機種別通り、他の軍用ツクモスを圧倒する大出力ジェネレータを要している。その為、他機種では装備不能な大火力の大型武器の使用も可能だ。
その事実を、耀平は良く心得ていた。
「耀蔵爺ちゃん、相手の装備は――」
「うん。まあ、見ての通りじゃ」
耀蔵が声を上げると別のサブモニターが表示された。そこには「金ピカの西洋風騎士」の姿が映っていた。
機体色のせいで、遠目にも目立つ。しかも、光を反射する範囲が存外に広い。
フラガラックが全身にまとっている金ピカ鎧は重厚で、大きかった。それを見る者に、機体種別通りの印象を覚えさせる。耀平の第一印象も、正にそれ。
ああ、うん。大きい。
ツクモスの身体的特徴である「ポッコリお腹」が、全く目立ってなかった。
フラガラックに限らず、重量級軍用ツクモスの外観からノロマという印書を覚える者は存外に多い。その悪印象を助長するように、フラガラックの両手には大型武器が握られていた。
右手に大口径バズーカ砲。左手に大口径対物ライフル。
それぞれ砲身が長大な為、遠目だと丸太を二つ抱えているという印象を覚えさせる。近接武器として使っても有用そうだ。しかし、当然ながら銃火器本来の使い方の方が有効だ。この上ない脅威である。その事実が、耀平の口から零れ出た。
「あれ、弾がデカいからさ」
「うん?」
「『減衰もし難い』んだよな」
ツクモスの特効、IN酵素。重量級の武器は、その威力を幾分か保持することができた。要するに「中距離攻撃でもツクモスの腕をもげる」という訳だ。
遠距離戦は、IN領域で互いに無意味。中距離はフラガラックに分が有る。その事実を想像して、耀平の顔に渋面が浮かんだ。その想いが、耀平の口からポロリと零れ出た。
「よりによって――」
「うん?」
「主力機か」
フラガラックは、現在の地球軍ツクモス部隊主力機である。その事実は、耀平の口を「へ」の字に曲げさせた。その言動に籠った思いは、人工知能となった耀蔵にも察知出来た。
「不服か? それとも怖じ気付いたか?」
耀蔵の言葉に対して、耀平は苦笑いを浮かべた。
「まあ、うん。何でも来い」
耀平は強気な言葉を口にした。耀平としては、自分と耀蔵に向かって言ったつもりだった。ところが、これにフラガラックが反応した。
敵レーダーに映った赤い光点が、超高速で突進していた。その巨躯に反して意外に速い。ムラマサ以上の速度だ。その様子は、耀平の視界にもバッチリ映っていた。
「流石――主力機」
相手の足の方が速い。その事実が、耀平に「距離を取る」という選択肢を諦めさせた。しかしながら、「座して死を待つ」という選択肢は、最初から耀平の脳内には無かった。
「突っ込む」
「好きにせい」
耀平の決断に、小妖精がコクリと頷いた。その直後、黒い鎧武者が走った。
彼我共に全速前進。「あっ」と言う間に距離が詰まった。その間、フラガラックの超火器が猛威を振るった。
ムラマサの外装の部位が、次々弾き飛ばされた。その内、相手の照準がピタリと定まり出した。その事実を、耀蔵が察知した。
「正面っ。耀平躱せ――」
「任せてっ!」
フラガラックのバズーカ砲から、特大ロケット弾が飛び出した。その射線上にはムラマサの脚部が有った。
先ず、脚を破壊して、相手の動きを止める。フラガラックは、「将を射んとする者は先ず馬を射よ」という諺を実践した。しかし、その作戦は、耀平の脳内にも閃いていた。
耀平はムラマサのライフルの銃口を、二門ともバズーカ砲の射線に向けた。続け様に同時に射撃した。
すると、ライフルの銃弾がバズーカのロケット弾に当たった。
弾丸同士の衝突。ライフルの球は弾き飛ばされた。ロケット弾の方は、一応は前に飛び続けていた。しかし、射線はズレていた。
バズーカの砲弾は、ムラマサの脚には当たらなかった。ムラマサの右腿を掠めて、そのまま明後日の方向に飛んでいった。
かくして一難去った。しかし、全く安心できなかった。ムラマサは窮地に追い込まれていた。
バズーカの砲弾を避ける際、ムラマサは両手を前に突き出した。そこに、フラガラックの対物ライフルが襲い掛かった。その事実を、耀平は直感した。
やられるっ!?
耀平は即応でムラマサの左手を操作した。
ムラマサは、左腕で右腕を庇った。そのお陰で、右腕は難を逃れた。その代わり、左腕が吹き飛ばされていた。
やられたっ!!
耀平の額に汗が滲んだ。それが頬を伝った。その生理的反応と同調するように、ムラマサのちぎれた左腕が地面に落ちた。
ムラマサの腕は「一本」になった。それを落とされれば、敗北が確定する。その事実を前に、耀平は――武器を捨てた。
耀平は、右手に握ったアサルトライフルを投げ付けた。それは、フラガラックの対物ライフルによって叩き壊された。その直後、ムラマサが屈んだ。
対コテツ戦の再現。しかし、現況の距離は百メートル以上も有る。
百メートル。軍用ツクモスならば、相手の右腕を狙うつことは造作もない。その事実は、耀平も直感していた。
それでも、耀平はムラマサの上半身を操作して前傾させた。
ムラマサの顔が地面に近付いた。その直前で、右手が先に前に出て、地面を「衝いた」。
「何とか――なああああああああれえええええええええっ!!」
耀平は叫びながら、ムラマサの全身を操作した。すると、黒い鎧武者は、右手一本で地面を押し上げて――宙に舞った。
耀平は、針の糸を通す以上に神経を使ったバランス感覚で、右手一本で全身を支えながら倒立跳躍をやってのけた。そこまでは、人間の領域を超える神技。このまま彼我の距離を詰められたなら、ワンチャン有っただろう。
しかし、物理法則が全力で邪魔をした。
ムラマサは、直ぐに足から地面に着地した。彼我の距離は、まだ百メートルほども有った。これは完全に相手の間合いだ。絶体絶命。
ここまでか!?
耀平の脳内に、逆転の閃きは無かった。そのはずだった。ところが、
((転がれ))
「!?」
耀平の脳内に「声」が響き渡った。それを直感した瞬間、耀平は即応していた。
ムラマサは、両脚を思い切り屈した。それを右手で抱え込んだ。小さく丸まった。その状態を維持したまま前転を開始した。
ムラマサは一個の巨大黒球となって、荒野の上をコロコロ転がった。その進路に、フラガラックの砲火が襲い掛かった。
フラガラックはムラマサの脚を狙っていた。ムラマサの回転速度を読んで、完璧にタイミングを合わせていた。耀平の方も、真直ぐ前進させることに意識を集中していた。
ところが、ムラマサの前転は、進路も、回転速度も、全くの不規則。
そもそも、丸まったムラマサは完全な球ではない。その為、地面にぶつかるたびに進路も変われば回転速度も変わった。
結果、フラガラックの弾は、その殆どがムラマサの背中に吸い込まれた。耀平が企図した行為ではない。その為、耀平には「運が良かった」としか思えなかった。
これも日頃の行いが良いから?
棚から牡丹餅。思わぬ幸運のお陰で、ムラマサはフラガラックの脚下まで辿り着くことができた。それと同時に、ムラマサは前転を止めて――立ち上がった。
その瞬間、ムラマサの右手には打刀が握られていた。
ここで――決める。
耀平は、一瞬でフラがラックの両腕を切り落とすつもりでいた。しかし、それを許すほど、第三世代型は甘くはなかった。
フラガラックは、センサーで感知すると同時に即応した。
先ず、両手の武器を取り換えた。右手で背負っていた長大な直剣を抜いた。
巨大な鉄の塊、「グレートソード」という特大剣だ。その重さは、ツクモス本体の重量に匹敵する。それを、フラガラックは小枝のように振り回すことができた。
フラガラックは両手でグレートソードを握った。続け様に振り上げた。
ムラマサに勝る超速。同時に動いていたならば、グレートソードの方が先に当たっていた。
しかし、フラガラックの動きは、耀平に読まれていた。
振り上げたフラガラックの両腕に、打刀の白刃が閃いていた。
耀平は、フラガラックに先んじて、そこに向かって打刀を振るっていた。
打刀の白刃が、寸分違わずフラガラックの両腕に重なった。その出来事が起こった後、ムラマサ内部の全周囲モニターに文字が表示された。
〈Final stage was cleared.〉
耀平は全ての敵に勝利した。その事実を直感した瞬間、耀平の顔に満面の笑みが浮かんだ。しかし、それは直ぐに消えた。
耀平は、眉根を歪めて首を傾げた。その反応の意味が、耀平の口から零れ出た。
「あの『声』――何だったんだ?」
「勝った――」
耀平は「ほっ」と息を吐いた。
耀平が駆るムラマサは、唯一の第一世代型、最旧式の軍用ツクモスだ。先の対戦相手、コテツは第二世代型の傑作機。機体性能には、それなりの差が有った。それを覆す為に、耀平もそれなりの工夫をした。それなりの神経を摺り減らした。その努力が報われたのだから、それなりの達成感を覚えるのも当然だろう。その衝動に駆られるまま、耀平は右拳を掲げようとした。
ところが、耀平が拳を握り締めたところで、左肩から少女の声が上がった。
「耀平」
「ん?」
「次が来たぞい」
「!」
耀平の左肩に乗った小妖精――名取耀蔵(AI)が「次」と言った瞬間、ムラマサ内部の黒いAサイズの画面(サブモニター)が表示された。
レーダーの中心に、ムラマサを示す青い光点が有った。その位置から南東の方角、凡そ一キロメートル付近に赤い光点が灯っている。その傍には機体名を示す文字が表示されていた。
〈NTMH 05 Flagaluck〉
フラガラック。ケルト神話に出てくる光の神ルーの愛剣である。その剣には「使用者の意のままに操ることができる」という魔法が掛けられている。
敵レーダーに表示されたフラガラックは、元ネタに因んで開発された第三世代型軍用ツクモスであった。
因みに、機体番号に入っている「H」はHeavy、即ち重量級を意味している。その機種別通り、他の軍用ツクモスを圧倒する大出力ジェネレータを要している。その為、他機種では装備不能な大火力の大型武器の使用も可能だ。
その事実を、耀平は良く心得ていた。
「耀蔵爺ちゃん、相手の装備は――」
「うん。まあ、見ての通りじゃ」
耀蔵が声を上げると別のサブモニターが表示された。そこには「金ピカの西洋風騎士」の姿が映っていた。
機体色のせいで、遠目にも目立つ。しかも、光を反射する範囲が存外に広い。
フラガラックが全身にまとっている金ピカ鎧は重厚で、大きかった。それを見る者に、機体種別通りの印象を覚えさせる。耀平の第一印象も、正にそれ。
ああ、うん。大きい。
ツクモスの身体的特徴である「ポッコリお腹」が、全く目立ってなかった。
フラガラックに限らず、重量級軍用ツクモスの外観からノロマという印書を覚える者は存外に多い。その悪印象を助長するように、フラガラックの両手には大型武器が握られていた。
右手に大口径バズーカ砲。左手に大口径対物ライフル。
それぞれ砲身が長大な為、遠目だと丸太を二つ抱えているという印象を覚えさせる。近接武器として使っても有用そうだ。しかし、当然ながら銃火器本来の使い方の方が有効だ。この上ない脅威である。その事実が、耀平の口から零れ出た。
「あれ、弾がデカいからさ」
「うん?」
「『減衰もし難い』んだよな」
ツクモスの特効、IN酵素。重量級の武器は、その威力を幾分か保持することができた。要するに「中距離攻撃でもツクモスの腕をもげる」という訳だ。
遠距離戦は、IN領域で互いに無意味。中距離はフラガラックに分が有る。その事実を想像して、耀平の顔に渋面が浮かんだ。その想いが、耀平の口からポロリと零れ出た。
「よりによって――」
「うん?」
「主力機か」
フラガラックは、現在の地球軍ツクモス部隊主力機である。その事実は、耀平の口を「へ」の字に曲げさせた。その言動に籠った思いは、人工知能となった耀蔵にも察知出来た。
「不服か? それとも怖じ気付いたか?」
耀蔵の言葉に対して、耀平は苦笑いを浮かべた。
「まあ、うん。何でも来い」
耀平は強気な言葉を口にした。耀平としては、自分と耀蔵に向かって言ったつもりだった。ところが、これにフラガラックが反応した。
敵レーダーに映った赤い光点が、超高速で突進していた。その巨躯に反して意外に速い。ムラマサ以上の速度だ。その様子は、耀平の視界にもバッチリ映っていた。
「流石――主力機」
相手の足の方が速い。その事実が、耀平に「距離を取る」という選択肢を諦めさせた。しかしながら、「座して死を待つ」という選択肢は、最初から耀平の脳内には無かった。
「突っ込む」
「好きにせい」
耀平の決断に、小妖精がコクリと頷いた。その直後、黒い鎧武者が走った。
彼我共に全速前進。「あっ」と言う間に距離が詰まった。その間、フラガラックの超火器が猛威を振るった。
ムラマサの外装の部位が、次々弾き飛ばされた。その内、相手の照準がピタリと定まり出した。その事実を、耀蔵が察知した。
「正面っ。耀平躱せ――」
「任せてっ!」
フラガラックのバズーカ砲から、特大ロケット弾が飛び出した。その射線上にはムラマサの脚部が有った。
先ず、脚を破壊して、相手の動きを止める。フラガラックは、「将を射んとする者は先ず馬を射よ」という諺を実践した。しかし、その作戦は、耀平の脳内にも閃いていた。
耀平はムラマサのライフルの銃口を、二門ともバズーカ砲の射線に向けた。続け様に同時に射撃した。
すると、ライフルの銃弾がバズーカのロケット弾に当たった。
弾丸同士の衝突。ライフルの球は弾き飛ばされた。ロケット弾の方は、一応は前に飛び続けていた。しかし、射線はズレていた。
バズーカの砲弾は、ムラマサの脚には当たらなかった。ムラマサの右腿を掠めて、そのまま明後日の方向に飛んでいった。
かくして一難去った。しかし、全く安心できなかった。ムラマサは窮地に追い込まれていた。
バズーカの砲弾を避ける際、ムラマサは両手を前に突き出した。そこに、フラガラックの対物ライフルが襲い掛かった。その事実を、耀平は直感した。
やられるっ!?
耀平は即応でムラマサの左手を操作した。
ムラマサは、左腕で右腕を庇った。そのお陰で、右腕は難を逃れた。その代わり、左腕が吹き飛ばされていた。
やられたっ!!
耀平の額に汗が滲んだ。それが頬を伝った。その生理的反応と同調するように、ムラマサのちぎれた左腕が地面に落ちた。
ムラマサの腕は「一本」になった。それを落とされれば、敗北が確定する。その事実を前に、耀平は――武器を捨てた。
耀平は、右手に握ったアサルトライフルを投げ付けた。それは、フラガラックの対物ライフルによって叩き壊された。その直後、ムラマサが屈んだ。
対コテツ戦の再現。しかし、現況の距離は百メートル以上も有る。
百メートル。軍用ツクモスならば、相手の右腕を狙うつことは造作もない。その事実は、耀平も直感していた。
それでも、耀平はムラマサの上半身を操作して前傾させた。
ムラマサの顔が地面に近付いた。その直前で、右手が先に前に出て、地面を「衝いた」。
「何とか――なああああああああれえええええええええっ!!」
耀平は叫びながら、ムラマサの全身を操作した。すると、黒い鎧武者は、右手一本で地面を押し上げて――宙に舞った。
耀平は、針の糸を通す以上に神経を使ったバランス感覚で、右手一本で全身を支えながら倒立跳躍をやってのけた。そこまでは、人間の領域を超える神技。このまま彼我の距離を詰められたなら、ワンチャン有っただろう。
しかし、物理法則が全力で邪魔をした。
ムラマサは、直ぐに足から地面に着地した。彼我の距離は、まだ百メートルほども有った。これは完全に相手の間合いだ。絶体絶命。
ここまでか!?
耀平の脳内に、逆転の閃きは無かった。そのはずだった。ところが、
((転がれ))
「!?」
耀平の脳内に「声」が響き渡った。それを直感した瞬間、耀平は即応していた。
ムラマサは、両脚を思い切り屈した。それを右手で抱え込んだ。小さく丸まった。その状態を維持したまま前転を開始した。
ムラマサは一個の巨大黒球となって、荒野の上をコロコロ転がった。その進路に、フラガラックの砲火が襲い掛かった。
フラガラックはムラマサの脚を狙っていた。ムラマサの回転速度を読んで、完璧にタイミングを合わせていた。耀平の方も、真直ぐ前進させることに意識を集中していた。
ところが、ムラマサの前転は、進路も、回転速度も、全くの不規則。
そもそも、丸まったムラマサは完全な球ではない。その為、地面にぶつかるたびに進路も変われば回転速度も変わった。
結果、フラガラックの弾は、その殆どがムラマサの背中に吸い込まれた。耀平が企図した行為ではない。その為、耀平には「運が良かった」としか思えなかった。
これも日頃の行いが良いから?
棚から牡丹餅。思わぬ幸運のお陰で、ムラマサはフラガラックの脚下まで辿り着くことができた。それと同時に、ムラマサは前転を止めて――立ち上がった。
その瞬間、ムラマサの右手には打刀が握られていた。
ここで――決める。
耀平は、一瞬でフラがラックの両腕を切り落とすつもりでいた。しかし、それを許すほど、第三世代型は甘くはなかった。
フラガラックは、センサーで感知すると同時に即応した。
先ず、両手の武器を取り換えた。右手で背負っていた長大な直剣を抜いた。
巨大な鉄の塊、「グレートソード」という特大剣だ。その重さは、ツクモス本体の重量に匹敵する。それを、フラガラックは小枝のように振り回すことができた。
フラガラックは両手でグレートソードを握った。続け様に振り上げた。
ムラマサに勝る超速。同時に動いていたならば、グレートソードの方が先に当たっていた。
しかし、フラガラックの動きは、耀平に読まれていた。
振り上げたフラガラックの両腕に、打刀の白刃が閃いていた。
耀平は、フラガラックに先んじて、そこに向かって打刀を振るっていた。
打刀の白刃が、寸分違わずフラガラックの両腕に重なった。その出来事が起こった後、ムラマサ内部の全周囲モニターに文字が表示された。
〈Final stage was cleared.〉
耀平は全ての敵に勝利した。その事実を直感した瞬間、耀平の顔に満面の笑みが浮かんだ。しかし、それは直ぐに消えた。
耀平は、眉根を歪めて首を傾げた。その反応の意味が、耀平の口から零れ出た。
「あの『声』――何だったんだ?」
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