有魂機人ツクモス The Comrades

霜月立冬

文字の大きさ
61 / 69

第六十話 電光石火

しおりを挟む
 ツクモス学園中等部最強決定戦、決勝。その舞台に選ばれたのは、第一演習場。通称「荒野」であった。

 天候は曇天どんてん。しかしながら、薄暗がりの中でも現況の全容を確認することは容易である。
 現場は、乾いた黄土色の地面以外何も無い。その景観から西部劇の撮影現場に使用されたこともあった。
 西部劇。そう、今から西部劇宛らの決闘が始まろうとしている。

 砂塵吹きすさぶ黄土色の異世界に、ポッコリお腹が突き出た二人の決闘者デュエリストが対峙している。

 灰褐色の痩せぎす中華戦士、NTMNX01乾坤圏ケンコンケン
 漆黒の鎧武者、NTM01ムラマサ。

 彼我の距離は凡そ一キロメートルほど離れている。それなりに遠い。しかし、それぞれの視界を阻む障害物は何も無い。
 ツクモスの視覚センサーは、相手の姿形を完璧に捉えている。その事実は、ムラマサの腹の中でも確認できた。

「本当に――何も無いな」

 耀平ヨウヘイの口から、ポロリと現況の感想が漏れた。それは、意図せず漏らした独り言だ。ところが、反応した者がいた。

「無いのう」
((無いな))

 耀平の左肩から少女の声が上がった。それと同時に、耀平の脳内で中世的な男性の声が響いた。前者は小妖精、耀蔵ヨウゾウ(AI)。後者はムラマサだ。
 二人の声を聞いた耀平の顔に苦笑が浮かんだ。しかし、それは直ぐに消えた。

「ツクモス学園最強決定戦、決勝。間も無く開始します」

 無機質な機械音声が、荒野の虚空に響き渡った。それを聞いた瞬間、耀平の顔がキリリと引き締まった。

 ユーリンが相手でも、全力で勝ちに行く。

 耀平の脳内で、今日の為に練った作戦が複数個閃いた。その中で、最有力候補が「適切な距離からの射撃」である。

 雨淋が駆る乾坤圏は超近接特化型。その最大の特徴は、空中に浮きあがっての立体起動。その能力を活用する為、得物は両腕に嵌ったけんのみ。

 乾坤圏を近付けなかったら、一方的に攻撃できる。

 耀平は、自身の作戦中距離攻撃を最適解と考えていた。同じ見解の者が、耀平の他に二人いた。

「これだけ視界が開けておるんじゃ。銃弾も当て放題じゃわい」
((今回は、俺達に運が味方したな))

 耀蔵(AI)も、ムラマサも、地の利は我に有りと考えていた。それぞれの言葉を聞いて、耀平の顔にもシニカルな笑みが浮かんだ。

 そう言えば、ユーリンも「荒野は苦手」って言ってたな。

 もし、決勝に上がっていたのが耀平ではなくフィンであったなら。あのマック・ア・ルインの超火力で押し切っていただろう。その可能性を想像すると、耀平の笑みが苦笑に変わる。

 フィンには悪いけど。お前の代わりに、俺が乾坤圏をハチの巣にする。

 耀平の脳内で勝利の方程式が明瞭に閃いていた。それを具現化する機会が、たった今訪れた。

「ツクモス学園中等部最強戦、決勝――開始」

 無機質な機械音声が響き渡った。その瞬間、ムラマサと乾坤圏は同時に動いた。その際、二人とも全く同じ行為を選択していた。

 全速前進。相手に向かってまっしぐら。

 どちらも真円を描く荒野の直径に沿って、一直線に突き進んでいる。その状況は、耀平達にとっては願ったり叶ったり。

 射程に入ったら――撃つ。

 ムラマサは走りながら両手の銃を構えた。その直後、耀蔵(AI)が叫んだ。

「耀平っ、五百っ!」

 距離五百メートル。対ツクモス銃火器であれば、IN範囲アイエヌ・レンジに守られたツクモスの体を傷付けることができる。その効果を実証すべく、耀平はムラマサを急停止。その場で狙いを定めて、続け様に引き金を引き――掛けた。
 その刹那、耀平の脳内にムラマサの声が響き渡った。

((避けろっ!))
「!?」

 唐突なムラマサの指示。その意味は、耀平には分からない。それでも、耀平の体が反応していた。

 耀平は超速でムラマサを右手側に傾けた。ムラマサの巨躯が、右腕から地面に向かって倒れていく。急な行動であったが故、完全にバランスを失っている。その事実は、耀平も直感していた。

 敵の前で転べるかっ!

 耀平は、ムラマサの左腕を空中に突き上げてバランスを取った。
 その際、ムラマサの左腕の辺りに「巨大な何か」が突っ込んで――通り過ぎた。その光景は、辛うじて耀平の視界にも映っている。それを直感した瞬間、

「えっ?」

 耀平の口から間抜けな声が漏れた。その直後から、耀平の目が大きく開かれていく。それが限界一杯まで広がったところで、再び燿平の声が上がった。

「そんな――」

 耀平の視線は、全周囲モニターのに釘付けになっていた。そこに映っていた光景は、耀平達にとっては悪夢であった。

っ!」

 ムラマサの左腕が、二の腕辺りからスッパリ切り取られていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...