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4 婚姻を結ぶのは決定事項
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ドアを開けて入ってきたのは貴族のような恰好をした男だった。しかもその後ろにはあの白髭ではないが、同じような神官服を着た男達もいる。
「ああ、休んでいるところ申し訳ない。どうぞそのままで。私は宰相府の役人です。宰相閣下はもうじきおいでになられます。それにしても…………」
そう言いながら少し神経質そうな男はグルリと部屋を見ました。
「……この部屋を案内した者は?」
振り返りながら神官の一人に尋ねる。
「あ、あの……」
「なるほど……。召喚された使徒様にこのような振る舞いをするとはね。しかもこの部屋に閣下を迎えに来させるのがどういう事を意味するのか」
「…………」
「神殿への考えを改めなければならないかもしれないな」
「すぐに別の部屋をご用意いたします!」
「いや、結構。閣下にもこちらをしっかりと確認していただかないと。これがコンコルディア家に嫁ぐ者に対する扱いなのだとね」
顔色を蒼くしている神官達から視線を外して、薄い金髪の男はそのまま聡に向き直り、優雅な仕草で膝を折った。
「え……あ、あの!」
多分高位の貴族であろう男の行動に聡は思わず声を上げた。だが、男は先程までの冷たい雰囲気を全く感じさせずにゆっくりと礼をして話し出した。
「初めてお目にかかります。私は宰相府の副宰相を務めますガスパル・サジッタ・アルカヌムと申します。このような場所でお待たせして申し訳ございませんでした。詳しい事はいずれ閣下よりお話があると思われます。使徒様にはご不便をおかけいたしますが、どうぞお許し下さい。今回の聖女召喚は我が国の重要な任務であり、これによって遣わされた貴方様も聖女様と同じくお守りせねばなりません。閣下は、いえ、それは閣下がご自身でお話になるでしょう。ですが私達宰相府の者達は、閣下が使徒様をお守りするにふさわしい方だと思っております。どうぞ我が国で心健やかにお過ごしいただきたく存じます」
「あ、ありがとうございます」
どうやら宰相閣下はとても人望のある方のようだ。もしかしたらうんと年が離れた方なのかもしれない。
それにしても嫁ぐ事は決定なのか。聡は胸の中で溜息を落とした。
国王からも婚姻という話が当たり前のように出たし、やはり同性婚というのがこの国では普通の事なのかもしれない。もちろん抵抗がないと言えば嘘になるが、現状としてはそうする以外に道がないのだ。
それに『守る』というのであれば、もしかすると婚姻というのは形だけの事で、賓客として扱ってくれるという意味なのかもしれない。だとすれば聡が考えるよるような『婚姻』関係にはならないという可能性もあるのではないか。
とにかく文武両道の強者で人望の厚い役人。そしてコンコルディア家とわざわざ言うという事はかなり高位の家柄の人物なのだろう。
そんな事を考えながら聡が何も言わずにいると、ガスパルが再び口を開いた。
「大丈夫ですよ。閣下はとてもお優しい方です。冷酷などと言うような者もおりますが、それは違います。そんな事を言うのは自分の行いを顧みない者達のみです。どうぞご安心を」
少し安心出来ないような単語もあったような気がしたけれど、聡は「はい」と頷いた。とにもかくにも元の世界に帰れない事は分かっていて、婚姻を結ぶ事は決定事項なのだ。
ならば宰相閣下が副宰相である彼の言う通りに公明正大で慈悲深く、聡の存在を認めてくれればいい。
今のところ聡に出来る事は何もなく、この城は聡にとっては居心地が悪い者が多いのだから。
「ああ、いらしたようです」
そう言ってガスパルは少し嬉しそうな顔をして立ち上がった。それに倣って聡も腰かけていたベッドから立ち上がる。
「閣下、こちらでございます。先にガスパル様が先ぶれとして使徒様にご挨拶をされています」
僅かに開いたままの扉から聞こえてくる声と人の気配。
ドキドキと早くなっていく鼓動。
帰る事が出来ないならば、ここで生きていくしかないのだ。だからどうか自分と婚姻を結ぶという宰相がせめて穏やかで、話が通じる人でありますように。
そんな気持ちで聡は大きく開いた扉を見て――――……
「…………え……」
固まった。
「……これはどういうことだ、がしゅぱる」
「は、使徒様におかれましてはこちらの部屋で閣下を待つように案内されたようです。神殿と近衛騎士達に確認をし、即刻抗議をする予定です」
「そうらな。そうしなければにゃらない」
舌っ足らずの言葉でそう言ったのは綺麗な銀髪と美しい藍色の瞳を持つ、幼児だった。
多分百センチあるかないかの可愛らしい子供は呆然とする聡を見てにっこりと笑って口を開いた。
「たたせたままでしゅまない。わたしはまぐなしるばおーこくのさいしょうであり、あなたのおっととなる、ふぃりうしゅ・えばん・こんこりゅでぃあだ」
聡はこの日二度目の眩暈を感じた。
------------------
出ました~!
まずはこの言葉が書きたかった♪
ふぃりうしゅ・えばん・こんこりゅでぃあ様です!
「ああ、休んでいるところ申し訳ない。どうぞそのままで。私は宰相府の役人です。宰相閣下はもうじきおいでになられます。それにしても…………」
そう言いながら少し神経質そうな男はグルリと部屋を見ました。
「……この部屋を案内した者は?」
振り返りながら神官の一人に尋ねる。
「あ、あの……」
「なるほど……。召喚された使徒様にこのような振る舞いをするとはね。しかもこの部屋に閣下を迎えに来させるのがどういう事を意味するのか」
「…………」
「神殿への考えを改めなければならないかもしれないな」
「すぐに別の部屋をご用意いたします!」
「いや、結構。閣下にもこちらをしっかりと確認していただかないと。これがコンコルディア家に嫁ぐ者に対する扱いなのだとね」
顔色を蒼くしている神官達から視線を外して、薄い金髪の男はそのまま聡に向き直り、優雅な仕草で膝を折った。
「え……あ、あの!」
多分高位の貴族であろう男の行動に聡は思わず声を上げた。だが、男は先程までの冷たい雰囲気を全く感じさせずにゆっくりと礼をして話し出した。
「初めてお目にかかります。私は宰相府の副宰相を務めますガスパル・サジッタ・アルカヌムと申します。このような場所でお待たせして申し訳ございませんでした。詳しい事はいずれ閣下よりお話があると思われます。使徒様にはご不便をおかけいたしますが、どうぞお許し下さい。今回の聖女召喚は我が国の重要な任務であり、これによって遣わされた貴方様も聖女様と同じくお守りせねばなりません。閣下は、いえ、それは閣下がご自身でお話になるでしょう。ですが私達宰相府の者達は、閣下が使徒様をお守りするにふさわしい方だと思っております。どうぞ我が国で心健やかにお過ごしいただきたく存じます」
「あ、ありがとうございます」
どうやら宰相閣下はとても人望のある方のようだ。もしかしたらうんと年が離れた方なのかもしれない。
それにしても嫁ぐ事は決定なのか。聡は胸の中で溜息を落とした。
国王からも婚姻という話が当たり前のように出たし、やはり同性婚というのがこの国では普通の事なのかもしれない。もちろん抵抗がないと言えば嘘になるが、現状としてはそうする以外に道がないのだ。
それに『守る』というのであれば、もしかすると婚姻というのは形だけの事で、賓客として扱ってくれるという意味なのかもしれない。だとすれば聡が考えるよるような『婚姻』関係にはならないという可能性もあるのではないか。
とにかく文武両道の強者で人望の厚い役人。そしてコンコルディア家とわざわざ言うという事はかなり高位の家柄の人物なのだろう。
そんな事を考えながら聡が何も言わずにいると、ガスパルが再び口を開いた。
「大丈夫ですよ。閣下はとてもお優しい方です。冷酷などと言うような者もおりますが、それは違います。そんな事を言うのは自分の行いを顧みない者達のみです。どうぞご安心を」
少し安心出来ないような単語もあったような気がしたけれど、聡は「はい」と頷いた。とにもかくにも元の世界に帰れない事は分かっていて、婚姻を結ぶ事は決定事項なのだ。
ならば宰相閣下が副宰相である彼の言う通りに公明正大で慈悲深く、聡の存在を認めてくれればいい。
今のところ聡に出来る事は何もなく、この城は聡にとっては居心地が悪い者が多いのだから。
「ああ、いらしたようです」
そう言ってガスパルは少し嬉しそうな顔をして立ち上がった。それに倣って聡も腰かけていたベッドから立ち上がる。
「閣下、こちらでございます。先にガスパル様が先ぶれとして使徒様にご挨拶をされています」
僅かに開いたままの扉から聞こえてくる声と人の気配。
ドキドキと早くなっていく鼓動。
帰る事が出来ないならば、ここで生きていくしかないのだ。だからどうか自分と婚姻を結ぶという宰相がせめて穏やかで、話が通じる人でありますように。
そんな気持ちで聡は大きく開いた扉を見て――――……
「…………え……」
固まった。
「……これはどういうことだ、がしゅぱる」
「は、使徒様におかれましてはこちらの部屋で閣下を待つように案内されたようです。神殿と近衛騎士達に確認をし、即刻抗議をする予定です」
「そうらな。そうしなければにゃらない」
舌っ足らずの言葉でそう言ったのは綺麗な銀髪と美しい藍色の瞳を持つ、幼児だった。
多分百センチあるかないかの可愛らしい子供は呆然とする聡を見てにっこりと笑って口を開いた。
「たたせたままでしゅまない。わたしはまぐなしるばおーこくのさいしょうであり、あなたのおっととなる、ふぃりうしゅ・えばん・こんこりゅでぃあだ」
聡はこの日二度目の眩暈を感じた。
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ふぃりうしゅ・えばん・こんこりゅでぃあ様です!
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