お助け妖精コパンと目指す 異世界サバイバルじゃなくて、スローライフ!

tamura-k

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第四章 森の終わり

115 お伽話のような昔話

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 「少し昔話をしましょう」そう言って女神は静かに話し始めた。

「この世界は今までに他の世界から色々な魂を受け入れてきました。というのも他の世界に比べて私の世界は争いが少なく、魔力も他の世界から来た者達に馴染みやすいという特徴があったのです。様々な理由で傷ついた魂を新たな器に入れて生まれ変わらせる。そして私の世界に降りた『転生者』と呼ばれる者達は自分たちが持つ記憶と与えられた力を使い、この世界を良い方向に進めてくれました。しかし一人の少女が『聖女』になってこの世界の弱者を救いたいと言いました。私の世界に『聖女』という称号はありませんでした。なのでどういった事をするものなのかは分からず、少女の記憶の中から聖属性という魔法を使い、死者を甦らせる以外の治癒能力を少しずつ、彼女の身体に無理のないように『レベルアップ』という形で自ら取得をさせていったのです。彼女は瞬く間にそのを称号をこの大陸中に広めました。彼女は病や怪我で苦しんでいる者を助け、奴隷や親のない子供たちなど、彼女が言う『社会的弱者』も助けていきました。そうして彼女はたちまち神と崇めたてられました。けれどこの時から『転生者』という記憶持ちは特別な力を持っていると、この世界の人々の中で周知されたのです」

 女神が話す事はまるでお伽話みたいだった。でもそれは本当に起きた昔話なんだよね。そう思っている間にも昔話は続いていく。

「するとその力を自分の物にしようと動き出す者が現れました。囲い込み、力の使用に金銭をつけ、神殿は神をまつるものではなく、特別な力は自分たちの為にあるものだと思い上がる者達が現れました。やがて『聖女』が無くなると神殿は新たな『聖女』を探すようになりました。私達神々は相談をして『転生者』に見守り役をつける事にしました。それが『お助け妖精』です。この世界の理を伝え、自由に暮らしていかれるように。その為の力もきちんと身に付けていかれるように。けれどその力を使って『転生者』が暴走しないように。そして信託も出しました。神々は見ていた。『聖女』はもう現れないと」

 俺は何をどう言っていいのか分からなかった。聖女が今からどれくらい前に存在したのか分からないけれど、『転生者』として人の欲に晒されて、囲い込まれてしまった最初の人は『聖女』の称号を受けた人だったんだ。
 そしてその後に『お助け妖精』が一人ずつに付けられるようになったのか。

「『転生者』と分からないようにした方がよいと私達が思うようになったのはその後、『勇者』という称号を欲する者が現れた後です。私の世界には魔物がいますが魔王はいません。ですが、『勇者』になりたがった魂は魔王を討伐するといい、魔物の討伐をはじめました。剣と魔法の力を有しておりましたが、正直そこまでレベルを上げられると思っていなかったのも私たちの誤算です。彼は『お助け妖精』を切り捨て、魔物が多く存在していた国を滅ぼしました。そして自らを『勇者』と名乗り始めたのです。彼がダンジョンを潰すので、ダンジョンコアは新たなダンジョンを作り、ダンジョンが出来た国に魔王が降臨したと攻め込む事を繰り返す。彼に潰された国は十に上り、私の世界に争いが生まれました。この世界で『勇者』が疎まれているのはその為です。彼はこの世界で亡くなった後、悪神として自らを神格化して甦りました。『勇者』はこの世界では武力で一方的に攻め入ってくる悪神です」
「そんな…………」

 信じられないような話に俺の口から小さな声が漏れ落ちた。それに少しだけ悲しそうに微笑んで女神はコクリと頷いて言葉を続けた。

「驚くべき執念としか言いようがありません。皮肉な事に彼自身が『魔王』になったようなものです。私たちはその魂を浄化するべく彼を捕えておりましたが……依り代を見つけたらしく逃げ出しました。それが貴方を巻き込んだ『不幸な事故』です。今回の被害者の中に『勇者』になりたいという少年がいました。咎人は捕えられ、他の世界の神が浄化をしています。勿論輪廻の輪には戻れません。このまま消滅するまで見守ります。ですが……彼の開けた空間のひずみは想像以上に広がっていて、私の世界のあちこちに想定外の不具合が起きているようです」
「その、転生した子は……」
「まだ五つの子です。記憶を操作して、転生前の事は思い出せないようになっています。貴方と同じように赤子として生まれ変わらせる事が出来ませんでした。記憶が戻れば『お助け妖精』が見えるようになります。けれど勿論『勇者』の称号は与えていません。ですが、あえて仮説を口にするとすれば、万が一にでも彼が『勇者』の依り代となれば捕らえなければならないでしょう」
「……あ、あの、他の子は、転生した他の子達は大丈夫なんでしょうか。『お助け妖精』が見える事で『転生者』と分かってしまったら最悪殺されてしまうような子もいるのではないでしょうか」
「貴方は優しい方ですね。大丈夫です。力は隠ぺいをされていますし、加護を与えられるのは『転生者』だけではありません。それに本来であれば『お助け妖精』自身が姿を現わそうとしなければ、本人にしか見えない筈なのです。森の中では見えるものもいるでしょうが、森を出ればその心配はないし、『お助け妖精』も必要に応じてその姿を変化させることが出来ます。それまでにレベルは上がる筈ですよ」

 そう言われてコパンは大きく頷いた。
 その顔がなんとなくドヤ顔に見えて思わず笑ってしまったよ。だけど羽をつけるのはやめようね。


   ◆◆◆


 その後、ラタトクスがくれた金貨の国は『勇者』が攻め込んだ国だと分かった。それでも持ちこたえて細々と繋がっていたけれど、流行り病で後継が途絶えて没落したのだそう。
 それから森を出る時は力を貸してくれるとも言われた。森の中から堂々と子供が出てきたらやはり色々と面倒だからって。
 あとは行こうと思っている国の情報も詳しく教えてもらった。そして今の服では浮いてしまうのでその国に合う服をお供えのお礼にプレゼントしてくれるらしい。
「失わせてしまったものも多いが、この世界でそれを埋めるほど幸せになってほしいと願っています。力を使い技を磨けばやれる事は増えていきます。ですが先程貴方自身が口にしていた通り、力をどう使っていけばいいのかも考えていれば、道を間違える事もないでしょう。貴方の成長とこの先に起こる出来事を楽しみにしています。アラタ、コパン、これからも楽しんで生きなさい。それがこの世界にもプラスの力となるでしょう」
  優しい風がふわりとふいて、キラキラとした光が空間の中に広がっていくと、女神の姿は最初の時のように人型でなくなり、俺は意識を失った。


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