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第9章 幸せになります
404.卒業式②
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卒業式が行われる大講堂の前は沢山の生徒達がいた。高等部は兄様がいた頃と変わらずに騎士科、魔法科、専学科とに分かれ、騎士科は大きく近衛騎士と魔道騎士の専科に分かれての入場になる。
銀色のマントを見るとジェイムズ君を思い出す。クラウス君は近衛騎士隊を目指している訳では無いけど、強い所で鍛えたいって近衛騎士の専科なんだよね。この科の人は皆大きいから遠目だと分からないかなって思ったけど、ちゃんと分かった。
緊張しているのかちょっと難しい顔をしながら立っている。
「クラウス、銀色のマントが様になってるね」
「ふふ、ほんとだ。脳筋には見えない」
「もう、ミッチェルったらそんな事ばっかり言って。クラウスは結構人気が高いんだよ?」
ルシルの言葉にミッチェル君は心底驚いたというように目を見開いた。それを見ながらスティーブ君が頷いて口を開いた。
「モーガンは鉱山もあるし、フィンレー程では無いにしても作物の実りも豊か。そこと縁を結べるだけでなく、本人は体格も顔も良く、剣の力もある。婿がねとしては申し分ないだろうね」
「そ、そうなんだ……」
驚いているミッチェルの前で、視線に気づいたらしいクラウスが振り向いて、小さく手を上げて笑った。するとどこからか「きゃあ!」という声が聞こえてきた。
「ほらね」
「……ふーん。まぁ、好みは人それぞれだからね。色々細かい配慮が足らない所もあるけど、同僚としては良い奴だよ」
それを聞いたルシルは肩を竦めて「自分の事になると鈍い人っているんだよね」と言って、トーマス君とユージーン君はやんわりと笑っていた。
そうしているうちに騎士科の列が動き始める。近衛騎士の専科がいなくなると続いて魔道騎士の専科も動き始めて、列の中にレナード君とエリック君が見えた。
「二人は変わらない感じだね。それにしてもまた背が伸びた?」
「体格がしっかりしてきたんじゃない?」
「ああ、そうだね。確かに。いいなぁ。ちょっと見ないと皆どんどん大人っぽくなって」
「大丈夫だよ、エディ。卒業後に背が伸びた人だっているって聞いたよ。あ、僕たちの列も動き始めるねエディは多分一番前でしょう? 早く行って」
「うん、じゃあまた後で」
トーマス君にそう言われて僕は急いで魔法科の列の一番前に行った。爵位は関係なくという建前はあるけれどやっぱりこういう時は爵位の順になる。僕自身の爵位は伯爵家なんだけど、今回はフィンレーとして扱われる事になったみたい。というか、生徒で自分自身で爵位を持っている人はあんまりいなかったから学園側も色々と大変だったらしい。しかも領地持ちだし。だからルシルは伯爵位の先頭だし、スティーブ君も家の子爵位の所に並んでいるけれど先頭なんだよ。
そうして魔法科の入場が始まった。大講堂の中に大きな拍手が響く、中に入る前にペコリとお辞儀をして僕は入学式で初めて入ったこの大講堂に足を踏み入れた。
色々な事があった。
校舎内に魔素が湧いてキマイラなどの魔物が湧き出て来たり、人の身体の中に魔素が溜まっていって、それが吐き出されて、反対に人を飲み込み魔人化をさせてしまったり、その魔人に自体が魔素を渡りながら空間を自由に行き来出来るようになってしまったり……。
それでもこうして皆で力を合わせて乗り越えてきた。世界バランスの崩壊と呼ばれていた『首』による禍も皆で知恵を出し合って、出来る事を頑張ってきた。
そういった事が出来たのも、仲間が、そして支えてくれた家族がいたからだ。
ジンと目が熱くなって何だか泣き出してしまいそうになったけれど、それをグッと我慢して用意をされている椅子に座ると、前の方でビデオカメラを構えている兄様が小さく見えて、嬉しくて、おかしくて、顔なんて見えないくらい小さいのに、絶対に笑って「大丈夫」って言っているような気がして、僕は胸の中で「ありがとうございます」って呟きながらまだ誰も立っていない壇上を見つめた。
そして、全ての科の生徒たちが入り終わると、副学園長が「卒業証授与」と言い、学園長が壇上の演台の所にやってきて「卒業おめでとう。これから一人一人に卒業証書を手渡します」とニコニコと笑いながら簡潔に告げた。
さあ、ローブを踏まないように頑張るぞ!
-----------------
すみません(;^_^A
長くなるので一旦……。
銀色のマントを見るとジェイムズ君を思い出す。クラウス君は近衛騎士隊を目指している訳では無いけど、強い所で鍛えたいって近衛騎士の専科なんだよね。この科の人は皆大きいから遠目だと分からないかなって思ったけど、ちゃんと分かった。
緊張しているのかちょっと難しい顔をしながら立っている。
「クラウス、銀色のマントが様になってるね」
「ふふ、ほんとだ。脳筋には見えない」
「もう、ミッチェルったらそんな事ばっかり言って。クラウスは結構人気が高いんだよ?」
ルシルの言葉にミッチェル君は心底驚いたというように目を見開いた。それを見ながらスティーブ君が頷いて口を開いた。
「モーガンは鉱山もあるし、フィンレー程では無いにしても作物の実りも豊か。そこと縁を結べるだけでなく、本人は体格も顔も良く、剣の力もある。婿がねとしては申し分ないだろうね」
「そ、そうなんだ……」
驚いているミッチェルの前で、視線に気づいたらしいクラウスが振り向いて、小さく手を上げて笑った。するとどこからか「きゃあ!」という声が聞こえてきた。
「ほらね」
「……ふーん。まぁ、好みは人それぞれだからね。色々細かい配慮が足らない所もあるけど、同僚としては良い奴だよ」
それを聞いたルシルは肩を竦めて「自分の事になると鈍い人っているんだよね」と言って、トーマス君とユージーン君はやんわりと笑っていた。
そうしているうちに騎士科の列が動き始める。近衛騎士の専科がいなくなると続いて魔道騎士の専科も動き始めて、列の中にレナード君とエリック君が見えた。
「二人は変わらない感じだね。それにしてもまた背が伸びた?」
「体格がしっかりしてきたんじゃない?」
「ああ、そうだね。確かに。いいなぁ。ちょっと見ないと皆どんどん大人っぽくなって」
「大丈夫だよ、エディ。卒業後に背が伸びた人だっているって聞いたよ。あ、僕たちの列も動き始めるねエディは多分一番前でしょう? 早く行って」
「うん、じゃあまた後で」
トーマス君にそう言われて僕は急いで魔法科の列の一番前に行った。爵位は関係なくという建前はあるけれどやっぱりこういう時は爵位の順になる。僕自身の爵位は伯爵家なんだけど、今回はフィンレーとして扱われる事になったみたい。というか、生徒で自分自身で爵位を持っている人はあんまりいなかったから学園側も色々と大変だったらしい。しかも領地持ちだし。だからルシルは伯爵位の先頭だし、スティーブ君も家の子爵位の所に並んでいるけれど先頭なんだよ。
そうして魔法科の入場が始まった。大講堂の中に大きな拍手が響く、中に入る前にペコリとお辞儀をして僕は入学式で初めて入ったこの大講堂に足を踏み入れた。
色々な事があった。
校舎内に魔素が湧いてキマイラなどの魔物が湧き出て来たり、人の身体の中に魔素が溜まっていって、それが吐き出されて、反対に人を飲み込み魔人化をさせてしまったり、その魔人に自体が魔素を渡りながら空間を自由に行き来出来るようになってしまったり……。
それでもこうして皆で力を合わせて乗り越えてきた。世界バランスの崩壊と呼ばれていた『首』による禍も皆で知恵を出し合って、出来る事を頑張ってきた。
そういった事が出来たのも、仲間が、そして支えてくれた家族がいたからだ。
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そして、全ての科の生徒たちが入り終わると、副学園長が「卒業証授与」と言い、学園長が壇上の演台の所にやってきて「卒業おめでとう。これから一人一人に卒業証書を手渡します」とニコニコと笑いながら簡潔に告げた。
さあ、ローブを踏まないように頑張るぞ!
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すみません(;^_^A
長くなるので一旦……。
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