悪役令息にならなかったので、僕は兄様と幸せになりました!

tamura-k

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75 家族会議

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 十一の月に入ると父様は冬祭りの準備で忙しくなる。でも少しずつ兄様にもそれが割り振られているみたいで、兄様は王都とフィンレーとグリーンベリーを行ったり来たりしている。
 
「でもドアを開けるくらいの感じだからね。そうだな学園で次の授業に行くのと同じようなものだよ。それよりも領主の仕事もありながら温室の管理を続けているエディの方が心配」

 そう言って髪にそっと口づけられて、僕は「大丈夫です」って言うので精一杯になった。

 結局マルリカの実をどうやって周知させ、管理をしていくか領ごとに任されるって事は父様にももちろんそれが求められるから一度話をしようって話がきて、僕と兄様はフィンレーを訪ねた。
 ウィルとハリーは王都のタウンハウスにいるから出迎えてくれたのは母様とテオだった。

「エディ、相変わらず忙しそうね」
「はい。でも父様の方がお忙しいと思います」
「ふふふ、そうかもしれないわね。お話が終わったら一緒に食事をしましょう。それくらいの時間はあるかしら、アルもね」

 兄様はフィンレーに来ていても出来るだけ僕と一緒の食べるって決めているから食事を取っていくのはあまりなかったみたいで少しだけ苦笑しながら「楽しみにしています」って答えていた。
 そうして僕達は父様が待つ応接室へと向かった。


「呼び出してすまなかったね」
「いえ、こちらこそお時間をいただきありがとうございます」

 僕が答えると父様はにっこりと笑って座るように言った。

「さて、エドワード達が話をしたことはアルフレッドから聞いているよ。実際あの書状の後やはり宰相府には問い合わせがいくつも来ている。全てを領ごとに差配しろというわけではないのだが、いきなりあれがくれば戸惑う者も多いだろう。そのあたりは王室の方でも想定内の事だったようだが、思っていた通りにあの実は本当に必要なのかと言ってくる者もいてね。そこは王国として同じ価値観を持ってほしいというのが陛下のお考えだ」
「はい」
「ただね、それでは全ての領主が集まって会議をするというのも現実的ではない。以前領地を持つ貴族会議を行ったが、あれはまとまるものもまとまらなくなる」

 父様は遠い目をしてそう言った。

「なのであの書状になったらしい。王室としてはいきなりでなく考える余地を置いたつもりだったらしいが、まぁ、混乱と不信にしかならなかったようだね」
「…………国が、どこまでの事を基本線にしたいのかが分かりづらかったような気がします」
「ああ、それにはじめからあまり快く思っていない者もいるしね。だが厄災が封じられたとしてもまだまだ性別の比率差はあるし、戻り始めてはいるもののこのまま出生率の男女比が同じようになっていくという保証はどこにもない。マルリカの実があるという事を前提に周知をし、生まれた子が差別に晒される事がないように国は何をすべきか、領として細やかに出来る事はなんなのかを考えていかなければならない」
「はい」

 父様の言葉に僕達は大きく頷いた。
 それから3人で考えられる事や疑問に思う事、ハワード先生が調べた領ごとの実の販売状況。差別によると思われる事件の件数と領の対応等、自分たちではなかなか調べる事が出来なかった事も教えてもらった。

「やはり国として基礎となる部分は法として整備をしておくべきだと思います。そしてそのたたき台は領から吸い上げるのではなく、国が示すのが筋だと。そこから領へ、さらに街へと下ろしていく事を考えた方が自然かと」

 兄様がそう言うと父様は少しだけ困ったような表情を浮かべて再び口を開く。

「ああ、そうなんだけどね。その辺りのさじ加減が難しいところでね。私たちも何度か呼び出されてはいるのだがなかなかうまく決まらない。シェルバーネを手本とするにはあそこは中々過激なところもあるからね」

 ああ、うん。そうだね。ルフェリットに比べるとなんていうか、命の重さが違うなって感じる事があるよ。王家の存在が昔よりはかなり穏やかになったのかもしれないけれど、それでも絶対的だと感じる時がある。
 そのままルフェリットにあの国のやり方を持ち込むのはきっと難しい。 

「ルシルからも平民や身分が低く学園に通う事を選ばないような下位貴族の子供たちへの教育という声も上がっています。マルリカの実についての偏見がないようにその辺りもきちんと伝えていかなければならないのかもしれません。もちろんそれは一年、二年でどうなるという事ではないと思いますが」
「ああ……うん。そうだね。もう少し長い目で見ていくところと、早急に推し進めなければならない事を分けていあく必要はあるね」

 この話し合いは今回だけではとてもまとめられるものではないっていうのが僕達の意見だった。もう少し色々とすり合わせ、反対をしている人たちの事も取り込みつつ、国が出すべき方針を決めていくのと同時に、領からもこうなるといいとか、ここがやりづらい、分かりにくいという点を挙げていく。という事で今日の話を終えた。

「時間はかかるが命の事だという意識をまずは持たなければね。そのようにハワード達に伝えよう。もっともそんな事は分かり切っていると言われるかもしれないが、それが共通認識としてないと話にならない」
「はい」

 僕達が頷くと父様はふわりと笑って「立派な領主になってきた」と嬉しそうに笑って「これなら早く家督を譲る事が出来るかもしれないな」と言った。

「まだ隠居は出来ませんよ。そうなると二つに分かれているフィンレーとグリーンベリーについてきちんと話をしなければなりませんからね。とりあえずは来月の冬祭りが終わる事。そしてマルリカの実の話が王国の中にきちんと下りて、共通の認識が出来てくる事。ああ、来年はウィリアムとハロルドが卒業です。まだまだ休めませんね」

 兄様、すごい! 父様が「パティに似てきたような気がするよ」って笑って、兄様は「父上にももちろん似ていますよ」って綺麗な笑みを浮かべた。
 そして僕は……

「父様もアルも、そして母様も皆カッコいいです! 僕ももっともっと頑張ります!」って言ったんだ。

 久しぶりに四人で食べた夕食はとても美味しかった。

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