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王宮内暗殺事件編
第89話 ふたつの大公家
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「ジル・グローリア侯爵?」
「えぇ、ベルファ殿下と同い年にしてグローリア侯爵家当主であるその方が東方遠征から帰還されるみたいでして。その帰還を祝した舞踏会にアヤ様とカリム殿下をご招待されたいと……」
アヤ側妃は不安げにレーナの方に視線を向けたがレーナも聞いた事のない名前だったようで知らないことを首を横に振って伝える。
だが問題はそこではなかった、招待してきたのがミレーヌ側妃であったということ。
「これはとても厄介なパーティに呼ばれたものですね。」
「モンフォーヌ卿、それはどういう…」
「今ではあまり語られない歴史です。」
ノアの後ろから真剣な面持ちでヒナが静かに語り始めた。
「今回開かれるパーティの参加者のほとんどがデミウド家に属する貴族たちです。わたし達クロウリー家はセーレム公国との友好な関係を築くことこそが王家の理であるとしてきました、が。彼らは表にこそ出しませんがセーレムを我が国の属国にするべきだと考えている派閥です。」
「ヒナ!」
「お許しください、ですがお姉様であったら非礼を詫びつつもアヤ妃殿下に真実を告げられていたかと。」
最初複雑そうな顔で俯きはしたが覚悟を決めたように顔を上げ、ヒナに向かって頷いた。
「皆、クロウリー家とデミウド家がこのようにして対立していると思われていますが根本から間違っているのです。」
王立書庫保管所で保管されている書物で、初期から数えた方が早いほど昔の話し。
初代ディシュタイン王には兄がひとり、弟がひとりいた。
だが王位につけるのはたったひとりだけ、真ん中のお子がディシュタイン王となり他のふたりは公爵の爵位を与えられた。
それがレイヴァン家とローゼン家であった。
それから数百年後、王家では跡継ぎが生まれぬという非常時に陥っていた。
王家はやむを得ずレイヴァン家とローゼン家から当時お生まれになったふたりの姫たちの花婿としてそれぞれ1人ずつを迎えた。
やがてふたりの姫は子供を授かり、ローゼン家と結ばれていた姫が男子を産み落とした。
レイヴァン家の方は惜しくも女の子が生まれた。
王位には当然ローゼン家との間にできたお子が座ることとなり、レイヴァン家の方のお子はその妃となられた。
そして歳月が流れ、両家はクロウリー家 デミウド家として名を変えていった。
「本当にローゼン家の血を濃く受け継いでいたのはファロアン家なのですよ、十数年前に没落致しましたがね。そしてその一人娘をガスパル・デミウドが引き取り養女とした。」
「……へ?ではアルマ嬢が?!」
「おや?ヒナ嬢もご存知ありませんでしたか?まぁ、あまり公にすることではないですしね…兎に角、このパーティはそのローゼン家縁ある者たちが集うということです。ファロアン家の近い親戚であるミレーヌ側妃が狩場に餌を招待しておいて何もしないわけが無いでしょう?大方、ヒナ嬢は知らずとクロウリー家代表として選ばれたというところでしょう。」
「わたくしは正式にクロウリー家と手を組んだ訳ではありません、それなのにレーナ夫人やヒナ嬢を巻き込まないといけないのですか?」
「何をおっしゃいますか、マスターがこのおふたりを貴女に付けると仰ったんです。これくらいのこと、容易に予測出来たことでしょう。さぁさぁ、予習も済んだことですし参加すると返事を致しましょう。」
「ダリア嬢に指示を仰ぐべきでは?」
アヤの言葉にノアの目の色が冷たく変わる。
氷のように冷たく鋭い瞳でアヤを見下ろすと低い声で言い放つ。
「マスターに?たったこれしきのことを?我々が無能であるとマスターにお知らせするということですか?」
「も、モンフォーヌ卿!弁えてください!側妃殿下でございますよ!」
必死にヒナが諌めようとするがノアは構わずに続ける。
「妃殿下、我がマスターが貴女の唯一の後ろ盾となっていることを自らのおかげだと思わぬ事です。ましてやミレーヌ側妃が敵対派閥だからでも無い、あの方にとって…あの方が目指しておられる道の脇に我々がいたに過ぎないのですから。あの方は決して甘くないですよ、歩むことをやめた者は容赦なく見捨てになられます。この程度のことで躓いているようでは呆気なく手を離される…そのような無様な姿はお見せにならぬことです。」
踵を返し去っていくノアの背中をアヤ側妃は考え込みながら見つめた。
「小さなバラたちがローゼン家へ集まってなにかするようだよ?」
「大丈夫だよ、あっちは燕に任せているから。」
𝓉ℴ 𝒷ℯ 𝒸ℴ𝓃𝓉𝒾𝓃𝓊ℯ𝒹
「えぇ、ベルファ殿下と同い年にしてグローリア侯爵家当主であるその方が東方遠征から帰還されるみたいでして。その帰還を祝した舞踏会にアヤ様とカリム殿下をご招待されたいと……」
アヤ側妃は不安げにレーナの方に視線を向けたがレーナも聞いた事のない名前だったようで知らないことを首を横に振って伝える。
だが問題はそこではなかった、招待してきたのがミレーヌ側妃であったということ。
「これはとても厄介なパーティに呼ばれたものですね。」
「モンフォーヌ卿、それはどういう…」
「今ではあまり語られない歴史です。」
ノアの後ろから真剣な面持ちでヒナが静かに語り始めた。
「今回開かれるパーティの参加者のほとんどがデミウド家に属する貴族たちです。わたし達クロウリー家はセーレム公国との友好な関係を築くことこそが王家の理であるとしてきました、が。彼らは表にこそ出しませんがセーレムを我が国の属国にするべきだと考えている派閥です。」
「ヒナ!」
「お許しください、ですがお姉様であったら非礼を詫びつつもアヤ妃殿下に真実を告げられていたかと。」
最初複雑そうな顔で俯きはしたが覚悟を決めたように顔を上げ、ヒナに向かって頷いた。
「皆、クロウリー家とデミウド家がこのようにして対立していると思われていますが根本から間違っているのです。」
王立書庫保管所で保管されている書物で、初期から数えた方が早いほど昔の話し。
初代ディシュタイン王には兄がひとり、弟がひとりいた。
だが王位につけるのはたったひとりだけ、真ん中のお子がディシュタイン王となり他のふたりは公爵の爵位を与えられた。
それがレイヴァン家とローゼン家であった。
それから数百年後、王家では跡継ぎが生まれぬという非常時に陥っていた。
王家はやむを得ずレイヴァン家とローゼン家から当時お生まれになったふたりの姫たちの花婿としてそれぞれ1人ずつを迎えた。
やがてふたりの姫は子供を授かり、ローゼン家と結ばれていた姫が男子を産み落とした。
レイヴァン家の方は惜しくも女の子が生まれた。
王位には当然ローゼン家との間にできたお子が座ることとなり、レイヴァン家の方のお子はその妃となられた。
そして歳月が流れ、両家はクロウリー家 デミウド家として名を変えていった。
「本当にローゼン家の血を濃く受け継いでいたのはファロアン家なのですよ、十数年前に没落致しましたがね。そしてその一人娘をガスパル・デミウドが引き取り養女とした。」
「……へ?ではアルマ嬢が?!」
「おや?ヒナ嬢もご存知ありませんでしたか?まぁ、あまり公にすることではないですしね…兎に角、このパーティはそのローゼン家縁ある者たちが集うということです。ファロアン家の近い親戚であるミレーヌ側妃が狩場に餌を招待しておいて何もしないわけが無いでしょう?大方、ヒナ嬢は知らずとクロウリー家代表として選ばれたというところでしょう。」
「わたくしは正式にクロウリー家と手を組んだ訳ではありません、それなのにレーナ夫人やヒナ嬢を巻き込まないといけないのですか?」
「何をおっしゃいますか、マスターがこのおふたりを貴女に付けると仰ったんです。これくらいのこと、容易に予測出来たことでしょう。さぁさぁ、予習も済んだことですし参加すると返事を致しましょう。」
「ダリア嬢に指示を仰ぐべきでは?」
アヤの言葉にノアの目の色が冷たく変わる。
氷のように冷たく鋭い瞳でアヤを見下ろすと低い声で言い放つ。
「マスターに?たったこれしきのことを?我々が無能であるとマスターにお知らせするということですか?」
「も、モンフォーヌ卿!弁えてください!側妃殿下でございますよ!」
必死にヒナが諌めようとするがノアは構わずに続ける。
「妃殿下、我がマスターが貴女の唯一の後ろ盾となっていることを自らのおかげだと思わぬ事です。ましてやミレーヌ側妃が敵対派閥だからでも無い、あの方にとって…あの方が目指しておられる道の脇に我々がいたに過ぎないのですから。あの方は決して甘くないですよ、歩むことをやめた者は容赦なく見捨てになられます。この程度のことで躓いているようでは呆気なく手を離される…そのような無様な姿はお見せにならぬことです。」
踵を返し去っていくノアの背中をアヤ側妃は考え込みながら見つめた。
「小さなバラたちがローゼン家へ集まってなにかするようだよ?」
「大丈夫だよ、あっちは燕に任せているから。」
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