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覚醒
しおりを挟む「えーっと何年だ?」
俺はスマホで年表を検索する。
久しぶりに履歴書を書く俺はリストラされて新しく就職活動をしなければならない。
ハローワークでは4ヶ月くらいは失業手当がもらえるがそんなに当てにしていられない。
さっさと次の仕事を探して就職しなければ生きていけないからな。
「はぁ、書き終えたな」
とビールを開け飲みだすが、せっかく書いた履歴書が汚れないようにファイルに入れておく。
俺の名前は里見瑠夏だ。
今年で33になる中年でそれなりに頑張って仕事をしてきたがつい先日、人件費削減で人員整理と言う名の解雇で職を失った。
ワンルームのアパートに住んでいて、車無し、彼女無し、たまにパチンコに行くくらいの平凡な男だ。
電子タバコに煙草を刺してボタンを押す。
「ふぅー、これもいつまで吸えるかな?」
煙草もどんどん高くなっているので節約しないといけないが、やめられないのだ。
地球にダンジョンというものができておよそ100年、昔は探索者にも憧れたが俺は一般人で、夢は夢のままだ。
法やギルドという組織も国が管理して整備されているので、ダンジョンも安全になって来ているらしい。
親も亡くなった。遺産相続は借金があったようで相続破棄した。
俺は天涯孤独、このままじゃ結婚も出来ないな。
今は夜中、無職の俺は酒に逃げるしかなかった。
「あんだ?もう無いのか」
冷蔵庫のビールがなくなってしまったのでコンビニまで買いに歩いていく。
俺は酔っ払いながら、少し冷たく気持ちいい風に当たりながら潰れた工場の先にあるコンビニまで歩いて行くとコンビニに入る。
「いっらしゃいませ」
と店員の男が言うのを無視して雑誌コーナーにある探索者雑誌をカゴに入れビールも6本買って外に出る。
また歩いて廃工場の前を通ろうとすると子供くらいの影が俺の前に立ち塞がる。
「あ?」
なんだろうと酔っ払っている俺は認識するのが遅れ“ドン”と腹に痛みを感じ、込み上げてくるものを吐き出す。
「ウッ!オェェェェェェ」
『ギャッギャッ』
と笑っているようだがこいつはゴブリンという緑色の肌で小人のように小柄だが凶悪な顔をして腰蓑だけつけたモンスター。
ダンジョンの上層にいるはずなのになぜか目の前にいる。探索者からしたら雑魚らしいのだが一般人の俺からしたら生命の危機だ。
何故外に?
逃げる?
と考える間もなく、
「う……おぉらぁ!!」
酔っ払った俺は理不尽な暴力にキレてしまい、ビールの入った袋を片手を回して上段から振り下ろす。
『グギャ!』
と頭と命中するとゴブリンはそのまま潰れたような鳴き声を出して消えて行く。
“ッぺ”と口の中に溜まった唾を吐き。
「ったく、ビールが潰れただろうが!」
と袋の中を確認すると破裂したビールが3本あった。
俺は酔いが少し覚めると自分がしたことを理解する。
「ん?……お、俺がモンスターを倒した?」
腹に残る痛みと、吐瀉物、ゴブリンがいた場所には魔石というモンスターが持っているとされる黒っぽいビー玉のような物がある。
“ポタポタ”と破けたビニール袋から漏れ出るビールの音が響く。
「す、、、ステータス」
“ブゥン”と出る自分のステータスを見る。
ーーー
里見瑠夏 32歳
レベル1 ジョブ 合成師 new
スキル 合成 new
ユニーク 追加効果 new
ーーー
「あ、俺、、、覚醒してるな」
覚醒とはいつ起こるかわからないが、何かのきっかけで起こる事象の事で、これが無いとモンスターを倒すことは困難だ。
一撃でゴブリンが死んだのも覚醒していたからのようだ。
とりあえず魔石を拾い、家に帰り着く。
ビニール袋は破け、中はビールで濡れているのでキッチンの流しに置いて座椅子に座る。
ついに俺も覚醒したのだからこの合成師というのがなんなのかをスマホで検索する。
「無いな、俺だけのジョブのようだな」
もちろんジョブは探索者協会でカードを作るときに記録され、データは公開されている。
「俺のはレアなジョブなのか」
スマホを置いて座椅子に深く座る。
「ふぅ」
モンスターが倒せたのは良いが、合成師と言う字面からもわかるように多分、生産系のジョブなんだろうな。
どうせなら剣士や魔法使いなどダンジョンで活躍できるジョブが良かったな。
そうすればダンジョンでレベルを上げ、モンスターの素材を持ち帰り大金持ちになることもできたのに。
だが、覚醒は覚醒だ。
明日はギルドに登録しに行かないといけないな。
覚醒するとギルドに登録しなければいけない義務がある。これはどの国でも絶対とされていて、覚醒から日が経つと面倒な審査が待っているのだ。
「あぁ、明日はハローワークに行こうと思ってたんだがな」
俺は立ち上がるとキッチンに置いたビールを水で綺麗に洗うと水気を拭いて2本を冷蔵庫に、1本を持って座椅子に座ってゆっくり開ける。
「あぁ、美味いが、明日かぁ」
こんな中年が明日、覚醒しましたとギルドに登録しに行かないと行けないなんてな。
普通なら20歳くらいまでに覚醒するのだが、歳をとってから覚醒するのは本当に稀なことなのだ。
「はぁ、行きたくねぇ……」
と言いながら、内心覚醒したことに恥ずかしながらワクワクしている自分がいた。
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