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第11章
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エンジェルが引き金に指をかけた。俺はぎゅっと目をつむった。もうダメだと無意識のうちに歯を食いしばっていた。乾いた爆発音があたりに響いた。……音?
ゆっくりと目を開ける。さらにパン、パン、パンと音は続いた。見ると四人とも地面に倒れている。なにが起きたんだ? 茫然といま自分が生きていることすら信じられないなかで、木陰から誰かが近づいてくるのが見えた。
ジョニー・ウォーカーだった。奴は俺の拘束を解こうとぐるぐる巻きにされたガムテープを破っていった。
「逃がさないわよ」
這いつくばったままスマイルが俺に銃口を向けた。ジョニー・ウォーカーはスマイルに向けて撃った。スマイルの眉間には真っ赤な痕が作られた。野いちご。痛いわね、額を手で押さえながらそう言っている間にまたジョニー・ウォーカーはガムテープを剥がそうとした。
「ずいぶんめちゃくちゃに巻いてあんな、これ」
ジョニー・ウォーカーが手こずっているとゆっくりと四人が起き上がろうとしていた。ちっと奴は舌打ちをした。「らちがあかねえな」
エンジェルとスマイル、二人の子分が撃たれたところをかばいながら起き上がる。ジョニー・ウォーカーは俺の拘束を解くのをやめてエンジェルを捕まえると羽交い絞めにした。
ふふふとスマイルが笑った。
「よくここがわかったわね」
「ああ」ジョニー・ウォーカーはエンジェルのこめかみに銃を当てた。「あいつの靴に発信機を付けといたんだよ」
いつの間にそんなことを……俺にはまったく心当たりがなかった。
「さあ、話は終わりだ。てめえら全員、銃を捨てろ」
三人は静かに笑い、ジョニー・ウォーカーの言葉を無視して拳銃を構えた。
「あなたの銃じゃ誰も殺せないわ」スマイルが言った。
スマイルの言葉にジョニー・ウォーカーはくっくと笑った。
「野いちごの弾丸だなんて、イカれてるわね」
「ああ。それが俺の人生だからな。だからDIJのピストルなんだよ」
全員黙っていた。奴はまたくっくと笑った。
「おいおい『ドキドキするようなイカれた人生』だろ。お前らブランキー・ジェット・シティは聴かねえのか? そこのミュージシャン、ブランキーは基礎教養だろ」
「これからこいつらの足にミートソースでもぶっかけるのか?」
俺がそう言うとジョニー・ウォーカーは嬉しそうに笑った。
「それもいいな」ジョニー・ウォーカーは銃をモッズコートのポケットにしまうと同時に、またなにか別のものを取り出した。「こいつには、ちょっとシビれるミートソースが似合うかもな」
奴の持つなにかの先端からバチバチと閃光があたりに走った。スタンガンだった。ひっとエンジェルが小さな悲鳴をあげた。
「もう一度言う。てめえら、全員銃を捨てろ」
三人は逡巡していた。ジョニー・ウォーカーはエンジェルを引きずり俺のそばまで来た。エンジェルが盾になる形になった。
三人は銃を向けているものの、どうするべきか迷っているようだった。ジョニー・ウォーカーは再びスタンガンを三人の前でスパークオンした。
エンジェルは歯をガチガチを鳴らせていた。三人もそれに気づいたのか観念した様子で拳銃をジョニー・ウォーカーの足元に放り投げた。
「スマイル」ジョニー・ウォーカーが言った。「こいつのガムテープを取れ」
スマイルは少しためらいを見せてから舌打ちをした。そして俺のそばまで来るとバタフライナイフを出した。
「おっと、いいもん持ってんじゃねえか。妙なマネしたら相方の麗しい顔がスパークしちまうからな」
スマイルはまた舌打ちをした。奴はジョニー・ウォーカーを睨みつけると、ひと思いにガムテープをそのナイフで切った。
「よし、行くぞ」
ジョニー・ウォーカーはエンジェルを盾にしたまま、そう言うとその場をあとにした。俺はそれについていった。三人はどうすることもできないまま俺たちを睨んでいるだけだった。
生い茂る木をかき分けて真っ直ぐ進んでいく。誰も喋らなかった。黙々と歩いていく。
十分くらいそうしていただろうか、道が開けて車道に出た。登坂車線にハイエースが駐まっていた。ジョニー・ウォーカーは俺に手で助手席に入るように促した。そしてエンジェルを突き飛ばすと自分は運転席に入った。
「じゃあな」
ジョニー・ウォーカーはエンジェルに言った。
「許さないわよ」
くっくとジョニー・ウォーカーは笑う。エンジンがかかり、発進した。エンジェルはずっと俺たちを睨んでいた。
ゆっくりと目を開ける。さらにパン、パン、パンと音は続いた。見ると四人とも地面に倒れている。なにが起きたんだ? 茫然といま自分が生きていることすら信じられないなかで、木陰から誰かが近づいてくるのが見えた。
ジョニー・ウォーカーだった。奴は俺の拘束を解こうとぐるぐる巻きにされたガムテープを破っていった。
「逃がさないわよ」
這いつくばったままスマイルが俺に銃口を向けた。ジョニー・ウォーカーはスマイルに向けて撃った。スマイルの眉間には真っ赤な痕が作られた。野いちご。痛いわね、額を手で押さえながらそう言っている間にまたジョニー・ウォーカーはガムテープを剥がそうとした。
「ずいぶんめちゃくちゃに巻いてあんな、これ」
ジョニー・ウォーカーが手こずっているとゆっくりと四人が起き上がろうとしていた。ちっと奴は舌打ちをした。「らちがあかねえな」
エンジェルとスマイル、二人の子分が撃たれたところをかばいながら起き上がる。ジョニー・ウォーカーは俺の拘束を解くのをやめてエンジェルを捕まえると羽交い絞めにした。
ふふふとスマイルが笑った。
「よくここがわかったわね」
「ああ」ジョニー・ウォーカーはエンジェルのこめかみに銃を当てた。「あいつの靴に発信機を付けといたんだよ」
いつの間にそんなことを……俺にはまったく心当たりがなかった。
「さあ、話は終わりだ。てめえら全員、銃を捨てろ」
三人は静かに笑い、ジョニー・ウォーカーの言葉を無視して拳銃を構えた。
「あなたの銃じゃ誰も殺せないわ」スマイルが言った。
スマイルの言葉にジョニー・ウォーカーはくっくと笑った。
「野いちごの弾丸だなんて、イカれてるわね」
「ああ。それが俺の人生だからな。だからDIJのピストルなんだよ」
全員黙っていた。奴はまたくっくと笑った。
「おいおい『ドキドキするようなイカれた人生』だろ。お前らブランキー・ジェット・シティは聴かねえのか? そこのミュージシャン、ブランキーは基礎教養だろ」
「これからこいつらの足にミートソースでもぶっかけるのか?」
俺がそう言うとジョニー・ウォーカーは嬉しそうに笑った。
「それもいいな」ジョニー・ウォーカーは銃をモッズコートのポケットにしまうと同時に、またなにか別のものを取り出した。「こいつには、ちょっとシビれるミートソースが似合うかもな」
奴の持つなにかの先端からバチバチと閃光があたりに走った。スタンガンだった。ひっとエンジェルが小さな悲鳴をあげた。
「もう一度言う。てめえら、全員銃を捨てろ」
三人は逡巡していた。ジョニー・ウォーカーはエンジェルを引きずり俺のそばまで来た。エンジェルが盾になる形になった。
三人は銃を向けているものの、どうするべきか迷っているようだった。ジョニー・ウォーカーは再びスタンガンを三人の前でスパークオンした。
エンジェルは歯をガチガチを鳴らせていた。三人もそれに気づいたのか観念した様子で拳銃をジョニー・ウォーカーの足元に放り投げた。
「スマイル」ジョニー・ウォーカーが言った。「こいつのガムテープを取れ」
スマイルは少しためらいを見せてから舌打ちをした。そして俺のそばまで来るとバタフライナイフを出した。
「おっと、いいもん持ってんじゃねえか。妙なマネしたら相方の麗しい顔がスパークしちまうからな」
スマイルはまた舌打ちをした。奴はジョニー・ウォーカーを睨みつけると、ひと思いにガムテープをそのナイフで切った。
「よし、行くぞ」
ジョニー・ウォーカーはエンジェルを盾にしたまま、そう言うとその場をあとにした。俺はそれについていった。三人はどうすることもできないまま俺たちを睨んでいるだけだった。
生い茂る木をかき分けて真っ直ぐ進んでいく。誰も喋らなかった。黙々と歩いていく。
十分くらいそうしていただろうか、道が開けて車道に出た。登坂車線にハイエースが駐まっていた。ジョニー・ウォーカーは俺に手で助手席に入るように促した。そしてエンジェルを突き飛ばすと自分は運転席に入った。
「じゃあな」
ジョニー・ウォーカーはエンジェルに言った。
「許さないわよ」
くっくとジョニー・ウォーカーは笑う。エンジンがかかり、発進した。エンジェルはずっと俺たちを睨んでいた。
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