夢幻無限の依代昇華

柊 弥生

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依代1

生徒会長

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「勝者、伊織透。これより『ラスボス』を配置します」

沈黙の空気を破ったのは、無機質な声のアナウンス。

その声に、伊織は一層辺りに気を配る。
(次は、誰が来る。確か生徒会がどうのって言ってたよな)
「まさか、たった三発でモンスターを倒すとは、市民ランク、では無いのかな?」
右方から声がかかる。
目を向ければそこには一人の男子生徒。
生徒達の興奮が息を吹き返した。
黒い髪に水色のメッシュが入ったその生徒が、どうしても生徒会役員には見えなかったのだが。
「いやあ、さっきの受験者は手ごたえがなかったからね。無理言って俺が君と戦えるようにしたんだけど……君は、どれだけ手ごたえがないのかなァ」
「まさか、アンタが生徒会長……?」
「当たりィ」
にやりと笑いながら生徒会長であるその男子生徒は続ける。
「俺は北条ルイ。初めまして、新入生」


『バトル、開始』


無機質な機会音が鳴り響き、両者の戦いが許された。
まず、伊織が動く。
片手に持った銃の引き金を引き、生徒会長を狙う。
伊織は狙撃の訓練をしたわけではないが、その弾丸は完全に生徒会長の右腕を狙っていた。
その弾丸は生徒会長の右腕に命中し、その腕は使えなくなる。
はずだった。

「雷光の加護」

一筋の雷によって、伊織の放った弾丸が打ち落とされたのだ。
―――生徒会長は、彼は、もしかして……。
思考する前に、生徒会長からの雷撃が伊織を貫く。
「がッ!!」
伊織は雷撃を受けながらも、身を捻りながら最小限の範囲でその攻撃を受け流し、体勢を立て直す。
それを見た生徒会長は楽しそうな表情で雷撃を放ち続ける。
「なかなかやるねェ!君ィ!!」
放たれ続ける雷撃の尽くを伊織は避け、銃弾を放った。
その銃弾は先ほどの雷撃ではなく、生徒会長に近づくにつれて減速し、そのまま弾丸の回転も無くなり落下する。
「なッ!?これは風……?」
雷の追撃を、伊織は避けつつ思考する。
生徒会長のほうへ、風が流れている。そして、銃の速度が減速したところを見ると、生徒会長が何らかの力を放っているからだと考えるほうが正しいだろう。
「あーあ、避けてるだけじゃあ楽しくないじゃんッ!」
避け続ける伊織に痺れを切らしたのか、生徒会長の攻撃が変わる。
正確には雷から水へと。
水は自由に形を変えて伊織に襲いかかる。
槍のような形、ナイフのような形、中には変化する事を忘れてそのままの水の塊で伊織に突進してくるものもあった。
伊織は避けながら何度か銃を放つが、やはり風か何かの圧で威力を落とし落下してしまう。
生徒会長はその場から動いていない。
削られる体力の中で必死に生徒会長を捉える。
「さっきのモンスターと同じように戦われても、不愉快なだけだね。もっと俺を楽しませろよっ!!」
気付けばモンスターと戦っていたときとは違って、観客席の生徒は今、誰一人として言葉を発してなかった。
誰もが二人の戦闘に見入っている。
生徒会長は一瞬気を逸らした伊織に向けて手をかざした。
水の檻アクアプリズン
伊織を攻撃していた水が、生徒会長の周りに浮かんでいた水が、空気中の水蒸気が、一瞬で伊織と生徒会長の間に隔たりを作る。
その形は檻。
サーカスなどで見るような、猛獣を入れる巨大な檻。
檻の中にいる伊織を余裕の表情で見つめる生徒会長。それを睨みつける伊織。
まるで、王とそれに抗う哀れな村人の圧倒的な力を暗示するかのような状況に、周りの生徒は大声を上げてはやし立てる。
「さしずめ、アンタが王で俺が哀れな村人か。だったら周りの生徒は王を崇める住人かな」
水の檻に触れながら伊織は言う。水の檻は冷たく触れた伊織の指を切り裂こうとする。残りの銃弾は二発。もうどうしようもない状況に至っていることを確認した。
しかし彼は至って余裕だった。
もしかすると、目の前で愉悦に浸っている生徒会長よりも。
「面白い喩えをするね、君。嫌いではない喩えだけど、そろそろ試合を終わらせようかな」
しかし生徒会長はそんな伊織に気づいていないようだった。
ただ片手を横に振りながら伊織にとどめを刺す。
「水の檻よ、直ちに拘束者を仕留めよ」
生徒会長の言葉の直後、伊織を止めていた檻が一気に形を変え球体となり伊織を包み込んだ。
伊織はその中で水に包まれ息ができずダウンする、はずだったのだが。
「させないよ、会長さん!」
市民ランクの新入生の声とともに響くのは銃声。
パァンッと軽快な音が聞こえ水球の中から真上に銃弾が放たれる。
市民ランクの新入生が起こした反撃はそれだけには留まらず。
銃弾が放たれた所―――つまりは水球内の伊織を中心に水が凝縮する。凝縮し、小さい水の玉となったそれは伊織がゆっくりと向けた銃口の先に浮いている。伊織は間髪入れずに最後の一発を水の玉に放った。
「放て」
銃弾は水の玉を打ち抜き、水は蒸発したように消える。
「どうなっているッ?」
一連の内容を目の前にした生徒会長は伊織を凝視した。
だから、気付かなかった。
普段ならば能力も使わずに避ける、一発の銃弾を。
「がァあッ」

会場が、どよめく。

今まで見せなかった苦痛の表情が、たった一発の銃弾を食らって右肩から流れる鮮血が、今回に試験で初めて生徒会長「北条ルイ」に見られたのだから。
「くそッ、油断していたようだな、俺は。上級市民ランクかと思って手を抜いていたのに、ここまでとは」
さすがは生徒会長。この程度ではくたばらないらしい。
生徒会長の威厳か、プライドか、そういったものが彼を成り立たせている。
「さて、新入生くん。たかだか一発の銃弾が俺に命中したからって、『勝った』と思ってたら大間違いだよ」
会長の右肩の傷が、何らかの力によって修復される。
もう一度、会長の顔に笑みが浮かんだ。
「そんなことは思ってないよ、会長さん」
「じゃあ、どうやって戦う?もうその銃は使い物にはならないだろう。まさか、市民らしく格闘技で戦うのかな」
確かに、会長の言うとおり、この銃にはもう残弾はない。市民ランクなら、ここで戦いを諦める。
だがしかし。
「悪いね、会長さん。この銃は、まだ使えるんだよ」
伊織は、笑う。
会長を見据えながら、残弾のない銃を空中に投げる。
「破壊せし刀よ」
真っ黒な銃が光に包まれる。
高々と投げられた銃が次第に形を変えながら、伊織の手元に戻る。
小ぢんまりとしていた銃が、細く、細く、長く、長く、しっかりとした形を成していた。次第に消える光の中から現れたのは、銃ではなく。
「刀…だと?」
生徒会長は身動きひとつしないままに、ただ口だけを動かす。
未だに笑みを浮かべる伊織は、形を変え刀となったソレを右手で握り締めた。
「会長さん、驚きついでにいいかな」
「なんだ」
生徒会長の顔は、伊織透という存在を探るような顔つきだった。
どんなランク?どんな人間?どんな存在?どんな力を使う?
そんな疑問符だらけの羅列を頭の中で考えているのだろう。
「会長さんは、魔術師ランク上級、で間違いないみたいだね」
「新入生のくせにそんなことまで分かったのか。つくづく鼻につくやつだ」
会長は鼻で笑いながら伊織の話を聞いている。
「それで、会長のその力は、『絶対的な現象アブソルートフィナメノン』だ」
「……どうしてそれにしぼり込める。もっと他にも色々あるはずだけど。それに、何故お前は別ランクの力、能力名が分かるんだ。カリキュラムを受けた訳じゃねぇのに」
「おっと、もしかしてまずかったかな。会長さんの能力を当てるなんて」
「ほとんどの生徒は俺の力を知っている。それが問題じゃないんだよ、新入生。俺が聞いているのはどうして見分けられたのかということだ。うちの学園の勉強できるやつでも、初対面の能力者の力を当てるのは難しいというのに」
「簡単だよ」
伊織は即答し。
地面を蹴り生徒会長に急接近する。
「なんだっ、いきなり」
最小限に振られた刀は、会長の雷撃でもって弾かれる。
「これだよ」
その様を見せて、伊織は言った。
「どういうことだ」
「雷光の加護、だっけ。それでピーンと来たんだよ。ほとんどの力が、不発なしに発動したということが……」
「そんなのは当たり前だろう。ここは戦闘強化を行っている。自分の力を正確に使いこなすことぐらい出来て当然だ」
「最後まで聞けよ、会長さん。確かに会長さんたちの力は見事に使いこなせている。はっきりとね。ほとんどの力が不発なしに発動したことがこの学園の徹底的なカリキュラムのおかげだということはわかった。見事だよ。だから分かったんだ。街を歩いていて何も知らない普通の魔術師ランクとは違って、違った意味で分かりやすかった」
未だにわからないというような顔をしている生徒会長に、伊織は言い放った。
「はっきりと見えたよ、アンタの魔術回路がね。放たれる雷撃、纏う風、アンタの放った力の全てから」
「そ、そんなこと、あるわけがない。そんなフザけた話……魔術回路が見える?信じられるか」
「信じたくないなら信じなくたっていいよ。プライドの高い優等生くん」
伊織は口元に笑みを浮かべながらそう挑発し、刀を構えた。
「キ、サマァァアアアア!」
挑発が逆鱗に触れたのだろう、ついに生徒会長が自ら動き出した。
走り出し、伊織のみぞおちあたりを狙いながら勢いよく腕を前に突き出した。
「放たれし怒号の突風よッ」
生徒会長の―――北条ルイの掌から途轍もなく強烈な風が吹き出す。
「くぅッ」
伊織は刀を盾にし、その攻撃を防ぐ。
「ハハッ、凄いねぇ会長さんっ!」
放たれた風は刀にまとわりつく様にうねりながら消失した。
「クソがっ逃げ切れると思うなよ!」
北条は伊織との距離を詰めながら新たな魔術を組み込む。
「水、樹、大地、太陽……すごい、四素の合わせ技か、さすが会長さん!」
伊織を取り囲む大蛇を模した巨大な木々と泥の『魔術』に賞賛しながら、その尽くを切り捨てる。その度に刀は跡形もなくその魔術を消失させた。
「全て、見えているというのか……?ならば君には…」
「無駄話する時間はあんのかなぁ!」
考えこむ北条の思考回路を遮断するように、伊織は刀の柄でもって北条のみぞおちを突く。
「カはッ!」
北条はみぞおちを突かれた事による吐き気によって倒れ込む。その衝撃で北条は盛大に咳き込む。
伊織はそんな会長と距離を取る。
彼はこの程度ではくたばらない。直感的にそう感じる。
(まぁ、ラスボスだしな)
伊織はゆっくりと起き上がる北条を見据えながらもう一度刀を構えた。
しかし、会長の動きは想像していたものとは違って。
「まさか、まさか君には……」
「?」
北条は呟く。
誰に言うでもなく。それでいて少しの恐怖を見せ。
「君には、翡翠の目が宿っているとでも言うのかっ!」
「翡翠の、目?」
北条ルイの言うことは、理解できなかった。
自らのことで、分かっているのは依代昇華という力があることだけ。
それ以外の力なんて、知らない。
「何を、言っているんだ」
だから、問いを投げるが。
「殺すッ!お前は殺すッ!!」
「なっ!?」
北条は鬼の形相でこちらを睨みつけ、片足の踏切で加速する。異常な加速は、彼の足に風の魔術をかけているからだろう。
「死ねッ!死ねッ!死ねぇェェエエええ!!」
炎、水、雷、様々な属性の力でもって伊織を殴る、蹴る、吹き飛ばす、切り刻む。
(これまでの比じゃないくらいの攻撃力。けど、明らかに命中率が下がってる。翡翠の目……コイツになんかあったのか)
考えながら、伊織は刀でその攻撃すべてを防ぐ。
今の北条に話しかけても無駄だろう。
何らかの感情によって今、彼は壊れている。
あるいは怒り。
あるいは嫉妬。
あるいは悲しみ。
あるいは消失。
こんな北条ルイは今この会場にいる生徒は見たことがないのだろう。ほとんどの生徒は恐怖によって怯えている。
北条ルイという男は、それなりの信用を得ていたのだろう。
それ故に、北条ルイは慢心しより強固により誇り高くより脆くなってしまった。
伊織は、回避しつつ会場の砂をつかみ、今まで防御に使用していた刀を北条につきつける。






「ロージリア、試験は終了だよ。あの二人をやめさせて」
白銀の髪のその男はずっとそばで見ていたメイドにそう頼んだ。
「よろしいのですか」
「ああ、これ以上我が学園の会長を壊すわけにはいかないからねぇ。それに…」
白銀の男は、懐かしむように目を細め、少年を見つめる。
「伊織透くん、君は……」
「?」
何かを言いかける白銀の男に対してメイドは少し首をかしげつつ、小型のヘッドセットマイクの電源を入れた。






「翡翠の目は、嫌いだァ!!その目は、その目はぁ!」
会長は未だに力任せの攻撃を仕掛けてくる。
一度は握り直したその刀も、あまりの攻撃量に耐え兼ねてまた防御に移ってしまっていた。
「死ね、死ね死ね死ねしッ……!」
ずっと攻撃していた北条の動きが止まる。よく見れば、先程攻撃するときに使っていた右手の拳を抑えていて、そこから血が滴り落ちている。そしてその地は、伊織の刀にもついていた。
どうやら刀の当たり所が悪く、拳を切ってしまったらしい。
だがしかし、そんなことに感情移入している暇はない。迷わず北条を蹴り飛ばす。
「ハァ、ハァ、ハァ、」
流石に会長も息を切らしていた。対する伊織も、防御するごとに体力を削られていった。
北条は血の流れる拳を握り締める。それによって傷口が開くが、彼は気にしない。
ねっとりとした、負の感情。それが宿る北条の目。
伊織は、やっと休めた刀をグッと握り締めた。
「アンタが何を考えてるのか、俺にはわからない。けど、俺はアンタが思っているような奴じゃない」
北条は、なおも走りながらこちらに向かって。
「頭冷やせよ、北条ルイ!」
片手に握っていた会場の砂を、会長に向かって投げつける。
「爆炎ッ!!」


ッドォォォォオオオオオオオンン!!!


一瞬。
一瞬、その大きな音は聞こえなかった。
轟く爆発は黙々と煙を漂わせ、会長と伊織を隠す。
『バトル 終了 試験結果引き分けドロー
「う、嘘、会長がと市民ランクが、引き分け…?」
「伊織、透……何者なんだ」
無機質な声が、試験の終了を知らせる。
それにより周りの生徒の緊張も取れたのか、ざわつき始める。
そんなざわつきの中、伊織は一人、晴れていく視界の先をじっと見ていた。
その視線の先には、北条ルイと、彼を支えている、副会長の腕章をつけた女子生徒は胸部を含め少女というよりはお姉さんな女子生徒。彼らの周りには一切の煙はない。どうやら、その副会長のお姉さんが防いだらしい。副会長のお姉さんに支えられてやっと立てている北条はぐったりしたように頭をたれていた。
「あなたは……?」
伊織の問い掛けに、副会長のお姉さんはニコリと笑う。
「私は綺碩きせきファーグリット・メシア。この学園の副会長です」
やたら長ったらしい名前だ。ハーフのお方なのだろうか。
「うちの会長が取り乱してしまったようで。本来はこのようにハードな試験ではないのですけどね。藍原様が連れてこられて、初めての戦闘だったはずなのに、本当にごめんなさい。……ほら、ルイくんしっかりして、行くよ。ちゃんと治療してあげるから」
ふわふわとした口調でやんわり謝られ、綺碩・F・メシア―――奇跡は、会長を連れてその場から立ち去る。
「……翡翠の、目」
会場から出るとき、北条はゆっくりと伊織を振り返り、そうつぶやいた。
『これにてランク改定試験を終了します。生徒のみなさんは直ちに寮に戻ってください』
沈黙していると、無機質な声が流れ、生徒はその言葉に従って動き始めた。
自分はどうしたらよいのだろうかとキョロキョロしていると後ろから肩を叩かれた。
振り返ればそこには藍原がたっていて、口元に笑みを浮かべている。
「流石じゃないか、伊織!ちょっとしたトラブルで、引き分けにされてしまったみたいだけど、君は強い。途轍もなく、な」
「そんなに強くは……あ」
藍原が言うことは、全く持って受け入れがたいため否定しようとしたが、その前に、あることを思い出した。
伊織は、片手に持つ刀を元の銃に戻して藍原に手渡す。
「これ、すみません。荒っぽく使ってしまって」
「一時、刀になっていたようだけど……壊れてはいないようだね」
藍原は返された銃をじっくりと見ながら自らのホルダーの中に銃を返す。彼女はそのまま踵を返して歩き始めた。行き場のない伊織は、そのまま彼女について行く。
「これからどこに?」
「理事室だよ。この学校の創設者に会いにいく。本当は理事長の意見を反映して間接的にさっき君と戦った会長がランク制定を行うんだけど、君のランクは、彼が直接付けるそうだよ」
「それは、また何で」
伊織の質問に、彼女はふっと立ち止まった。
「君が、他とは違うからだよ」

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