めろめろ☆れしぴ 2nd

ヒイラギ

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4. めろめろのメロディ

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オレが勝ったから、
まつげに、かるくキスした。
ちょっと肩をゆらしてわらったみたいだったから、くすぐったかったのかも。
くちびるには、まつげの感触があわく残ったまま、オレは、えーしが着ている白シャツの上から3番めのボタンをはずした。

「さぁ、次だね」

「うん」

オレはピっとリモコンのボタンを押した。








友だちの松下がしばらく落ち込んでいた。
部活のこととか、他のことでもいろいろあったみたいで、似合わないため息をつく数と、ぼんやりと教室の外をながめている回数が日ごとに増えた。
そんな松下から、そのため息のわけを、クラスでは何かと一緒に居る竹岡や宇佐見らと聞くと、
それは、「あー、キツいなぁ」ってしか言えないことで・・・、
オレらはせいぜい、ぼんやりしがちな松下を、教室でフォローをすることぐらいしか出来なかった。
けれども、なんやかんやで、復活したらしい松下が、「これ、オレが日々聴いてた曲だから」つって、きったない字で“元気の出る歌”ってラベルに書かれたMDをオレらにくれた。
「これ、聴くと、すげー元気がでるからな」ってありがたく思えよ、みたいな顔して言ったから、ああ、いつもの松下に戻ったんだな、ってほっとした。
それで、えーしに松下セレクトの “元気の出る歌” が入ったMDをもらったって言ったら、「それ聴いてみたいな」って言ったから、今日、持ってきた。
学校帰りのえーしの部屋で、
ただ聴くだけじゃなくて、曲のタイトル当てをしよう、ってことになって、流れてきたイントロで先に当てたほうが勝ち。
でも、ただの勝ち負けじゃ面白くないね、ってえーしが言って、それで、――――・・・。
今日は土曜日だから学校は休み。えーしの家には誰も居ないから、ぴかっと青く晴れた秋の空はすっごい天気がよかったけど、オレが帰るまでふたりとも外には出ないだろうな、って感じだから、
一曲ごとのタイトル当てで、
勝ったほうが、負けたほうへ自分がしたいところにキス出来て、負けたほうのシャツのボタンをはずす権利を与えられる ―――― ことになった。






「けっこう、色々あるんだね」

えーしがオレの耳のすぐ下をちゅうっと吸い上げたあとに言った。
そこにキスするのえーしすきだよな。よく、する。
されると、オレ、なんか、ビクっとするからいつも身体が逃げちゃいそうになるけど。

「うん、演歌も入っててびっくりしたよ」

ドキドキしだした心臓をごまかすように、テンション高く言った。だって、これ、ゲームだし。勝負がかかってるし。
でも、指がふれるから ――――。
えーしが、すごく顔をちかづけたままで、オレのシャツのボタンをはずすから、もっとそのくちびるで、オレの肌のどこかにふれていてほしいような気分になっていく。
上から順にはずされていったシャツのボタンもこれで3個目だ。
えーしの部屋のミニコンポで、松下からもらったMDをシャッフル機能で曲順がアトランダムに流れてくるように、設定してるけど、
オレのほうが先に何回か聴いてたから有利だよな、って思ってた。でも、曲名までははっきりと知らないのが多かったから、けっこう接戦。
曲は、ほとんどが松下の趣味っぽい日本のポップスで最近の曲から、すごい昔のもあって、ほとんどが、テンポがよくて、曲調が明るくて、なんだかスキップしたくなるような気分の曲が多かった。
オレ、えーしはポップスなんか聴かないんじゃないかなー、と思ってたけど、けっこう知ってるみたいだ。

(カラオケ行ったりとかすんのかなあ。・・・今度、さそってみようかな)






えーしが、曲名を当てたから、
今度はくちびるにしてきた。
かるくふれたあとに、
オレのシャツに向かう指がついでみたいに、首筋をなでていったから、

(あ・・・)

なんか、くちびるがもの足りない感じ。ほんの一瞬だけふれたくちびるを追いかけたくなった ――――。
えーしの指がオレのシャツの下から2番目のボタンをはずしてった。
シャツの下にはスカイブルーのタンクトップ。えーしのベッドのシーツと同じ色。






(あ、これ)

オレがリモコンの再生ボタンを押したのと同時に流れてきたのは、オレが好きなバンドの去年大ヒットした曲だった。
すぐに、曲名がわかったけど ――――。
でも、
えーしが答えるのを待った。
さっきのつづきで、くちびるにキスして欲しくて、
シャツのいちばん最後のボタンをはずして欲しくて、
けっこう、しばらく、曲が流れたあと、
えーしは、オレのことじっと見て、
それから、
曲名を当てた。








「もぉー、やだよー」

ベッドの上で、小さく笑いながら言っても本気にされないけど(・・・本気にされても困るケド)、
それでも、伸びてくる手から身をよじる。

「ほら、じっとして」

えーしも、クスクス笑っている。

「っから、ヤダって」

んー、って顔をしかめてみせた。
最後の一枚のタンクトップを脱がせようとしてるえーしとそれにテイコウしてるオレ。

「じゃあ、このまま」

わき腹に指をすべらせてきた。
ホネの段々をたどられるとくすぐったい。
ヘンな笑い声がもれた。
えーしの手から逃れようと身をよじると、上から覆いかぶさられて、動けなくなった。

「・・・、もう、ここまでだよ」

真剣な低い声。おふざけは、ここまで、って宣言。えーしの身体の重みと体温と硬くなりはじめている下半身に、ただ甘いだけじゃない、熱くて、激しい時間が始まるんだって教えられた。
息をのんで、えーしを見上げた。
どうしようもなく欲しい。欲しくてたまらない、って目を、きっとオレはしている。
オレの身体の両脇についているえーしの手に、自分の手を重ねた。
むきだしの肩にくちづけられて、・・ん、って小さく息を吐いたら、
ソコをつよく噛まれた。






「っあ、ヤっだ・・」

布の上から咥えられて、もどかしい。濡れた生地がザラっと表面をこする。
さっきから、ずっと、だ。
さわったり、口でしたり、を。タンクトップの上からしてくる。
服の上からじゃなくさわって欲しくて、さっきも、自分でタンクトップを脱ごうとしたら、わざとのようにジャマしてくるし。
もっと、肌と肌でふれあいたいってオレが思ってるの絶対、気づいてるはずなのに、

「どうして欲しい?」

なんて、聞くから、くちびるを噛んだ。

「教えてくれないと、ずっと、このままだよ」

また、服の上から、カリっと噛まれた。
身体をふるわせて、すがるように、
えーしの肩をつかんだ。

「ひっどい、・・えーし、オレに・・・ャ、ヤらしいことばっか、―――― 言わせよーと・・する」

口がそうやってるあいだに指がいろんなとこをいたずらしてくるから、ちゃんとしゃべれない。
なのに、
オレの脚の間は、もう、そんなになってるのに、全然、だし。

「だって、ね」

えーしが顔を上げた。
くちびるが唾液で濡れている。すこし赤くなってる。今の今まで、オレ、えーしに文句言ってたのに、
あ、そのくちびるでオレにキスして、って思った。
その色めいてる顔をぼぉっと見つめていると、
えーしが指を伸ばしてきて、オレのくちびるをなでた。ただそれだけにも、敏感に反応する。反射的に、ちろっとその指をなめた。えーしは、スっと目を細めて、指をもっとオレの口の中にいれてきた。
ちゅっと吸いつくと、えーしが瞳を激しい感じにゆらめかした。
でも、すっとその指を抜くと、

「皓也のこのくちびるから、」

もう一度オレのくちびるをその濡れた指であおるようになであげた。

「そういう言葉が出てくるの聴きたいんだ。―――― だから、」

―――― 言って・・。
って、すごい、甘い声で言うから、なんか、うるうるしてきた。

「どうして欲しいんだい?」

そのかすれた声が、耳に入ってきたから、
それで、オレ、
一度、ゆっくり息を吸って、
それから、――――。

「もっと、直接、・・・・・・して」

「どこ?」

いじわるだ。
すぐ、いじわるする・・・。

「――――・・・ムネんとこ」

「硬くなってるとこ?」

「・・・・・・・・・ぅん」

それで、ようやく、えーしの手が、オレが着ているタンクトップをくぐって入ってきて、
・・・さわった。

「・・・ぁっ、あ・・」

「感じる?」

うん、ってうなずいた。

「―――― どんなふうに?」

すごく、・・いじわるだ。
―――― 教えて。
って、えーしが、
また、耳に直接、そんな声で言うから・・・・・・。
オレ・・・、
だから、オレ・・・、すごくヤらしいことを、―――― えーしに言った。






「えーしも、」

「ん?」

「えーしも、・・気持ちよくなって」

オレばっかりじゃなくて、・・・・・・。オレも知りたい。えーしがどうやったら気持ちよくなるのかを。

「―――― なってるよ」

「・・ぁ、ん、――――、っ・・でも。・・・オレまだなんにも、してない」

「キミのそういう顔や、こういう声を聴くと、」

ほら、もう、こんなだよ、
って、えーしがオレの右手を、熱く猛ってるとこに連れてった。

「―――― だから、もっと、聴かせて」





えーしが沈み込んでくる。
熱いので、オレの中に。





胸の尖ったとこをクリっとされて、腰がゆれた。中がきゅっとなったから、えーしのがもっとリアルに感じられた。

「――――・・・すごいね」

なにが、なにが? って声にならなくて、ん、ってだけ息がこぼれる。その息が口から出るたびに首を左右に振った。
それでも、涙でかすんだ目で、オレの身体を激しく行き来しているえーしを見上げる。
汗が、すごい。筋肉がすごくもりあがっていて、息づかいが荒々しくて、教室でのえーしと全然、ちがってる。
ぬるんでつながって熱くなっていってるのだけで、おかしくなりそうなのに、先端のいちばん敏感なところを親指の腹でこすられて・・・・・・、
そうされると、
すごく、溶けそうになる。

「あ・・・、オレ、―――― っく、また、・・ぃく、」

ソコ、えぐられると、
あっあっあっ、
って、短くつづけて声が出て、
長く、仔猫の鳴き声のようなのが身体の奥から、出た。
脚をえーしの腰のところで交差した。
揺さぶられるのが激しくなってきて、シーツで背中がすれる。
ゆれてゆれて海になる。
嵐の海から、静かな海の底へ向かって、
息ができるままで、ぷくぷくぷくって、えーしと一緒に、
沈んでイクみたいだ。
遠くの彼方が近づいてきて、そこに押し上げられようとして、
でも、ひとりじゃイヤだから、

「・・って、――――」

あえぐ声の間から、

「―――― 手ぇ、にぎ・・・ってて」

えーしに言った。
皮膚の硬い力強い手がオレの手をつかんできた。
手のひらがあわさって、
もっとずっと、えーしとつながってるみたいに感じる。
うれしい。いろんなことが全部うれしい。
そう思った瞬間、
えーしがオレのいちばんオクまで入ってきて、
頭がしびれるような声で呻いた。
その声をきくたびに、いつも、オレ・・・・・・、
オレの身体、全部、えーしのものだ。って、うれしくてふるえて、泣きそうになる。
えーしの腰にからめてる脚を、もっと、ぎゅっとした。
身体の芯に、熱をオレに注ぐ振動が伝わってくる。
いろんなものが全部、
はじけて、
・・・溶けてく ――――、
えーしとオレが、いっしょに。








えーしから借りたおっきなTシャツを着てベッドに腰掛けてシャワーで濡れた髪をバスタオルで拭いていると、
キッチンに水を取りに行ってくると言ったえーしが、ペットボトルを持って戻ってきた。
紺色のゆるっとしたルームウェアは半ソデハーフパンツだから、えーしのけっこうたくましい身体の筋肉がよくみえる。
えーしがローテーブルにペットボトルを置くと、その下から何かひろいあげた。ミニコンポのリモコンだった。
えーしはベッド脇の壁にあるミニコンポに近づくと、そのほっそいモニタ画面をじっとのぞきこんだ。
そして、親指で、リモコンの何かのボタンを押すと、ピ、という小さな電子音が聞こえて、それと同時にミニコンポの右上にある小さな赤いランプが消えたのが目に入った。

「・・オンのままだった?」

曲、流れてなかったけど。
オレのみたいに、MDが終わったら自動的にオフになるっていうやつじゃないんだ。
・・・そういえば、いつ、音楽、止めたっけ??
オレ、どさくさで、リモコンを床にほおってしまってたし。
何か考えるみたいにして、えーしがミニコンポとリモコンを交互に見てるから、

「なんか、おかしい?」

って聞いた。

「―――― 外部録音モードになっていた」

「へー」

答えながら、濡れた髪をバスタオルでガシガシとやって ―――、
・・・・・・・・・、
ん?!
・・・・・・・・・、録音・・・・・・・・・??!

「うっわ、ダメダメダメっ!!」

オレは、あわてて、ミニコンポのリモコンを操作しようとしているえーしに飛びついた。

「ほんっと、ダメだからっっ!!!」





( おわり )




もう消えてしまったオーディオ製品なので、説明を↓

MD … ミニディスク(MiniDisc) 。デジタルオーディオの光ディスク記録方式、)。MDレコーダーやMDプレーヤーなどで録音・再生ができる。
参考出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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