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vs俺様何様皇子様
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「逆に問いかけますがの、貴方がたは、何をもってそちらのお嬢さんを聖女と呼んでおるのかの?」
扉付近から矍鑠たる声が響き、人垣が割れた。
壇上から扉までの道、その先に佇む老人をベルナルドは目にして、へたり込む。
「ど、どうしたんですか、レイスさま! カイさま、レイスさまが!」
「レイ、どうした、あの老人に何かされたのか?」
「お答えはいかに?、イヴァン皇子よ」
その声に、だが答えたのはイヴァンではなく、少女だった。
「だってわたし、魔術だけじゃなくて、治癒魔法がつかえるもの!」
「そうだ。ティナは魔術だけではなく、魔法がつかえるのだ。ティナの治癒魔法は素晴らしい。まさしく聖女だ。聖女はそこに居る女などではない!」
壇上で胸を張る少女と、その傍らで彼女を護り続ける少年。舞台ならば盛り上がる場面かもしれないと不謹慎にも考えたパーティの招待客は、しかし、対峙する老人の姿が人の隙間に見え、その衣服に驚愕した。
真白な神官装束。魔灯の下で緩く波打つその生地は、上位の、最上位の神官のみが身に付けるものだ。
「ほう。…で、その治癒魔法は、何の属性かの?」
「は?、治癒魔法なんだから、聖属性に決まっているじゃない!」
「ほう。…では、闇属性での治癒魔法は使えるかの?」
「は?、なんで闇属性に治癒なんかあるのよ! あるとしたら光か水属性くらいでしょ!」
「ほう。…では、光や水属性の治癒魔法は使えるのかの?」
「私の癒しの力は聖なるもの、聖魔法よ!!」
「ほう。…では、他の属性の、他の治癒魔法は使えないというんじゃの」
「そんなもの、ないもの!」
老人はローズの…正確にはカトレアの方に視線を向け、また視線を壇上に向けた。
また、人垣が割れる。
「王の影の報告通り、なんともお粗末な娘じゃな。なぁそこの娘子よ、聖属性などという魔法魔術は存在せんぞ?」
肩をすくめてみせた老人に、私は跪礼した。
「そしてな、娘子よ、聖女はな、すべての属性で「癒しの魔法」を行使できる。すべての属性で「癒しの魔術」を行使できる。それが出来て、「最低限の資格」じゃ。それだけでは、まだ「聖女」の名は冠せぬ」
「は?、何よそれ、そんなの知らない!、ありえないでしょ!」
うぉー、教会トップのお出ましですよー。まーなー、カトレア姉さまの卒業式だもんなー、ねーさま、このままこちらの教会トップに最年少就任だもんなー、そりゃ教皇様も来るわなー。つか、陛下がお呼びになるわなー。箔つくし。
というか。えー、ちょっ、えー。お嬢ちゃん、「聖女」がなんたるか、マジで知らなかったんかい。
この世界の魔法と魔術は理論が違う。大雑把に言うなら、魔法はセンスで魔術は理論だ。だけど、どちらにしても基礎となる「魔力の質」は同じだ。
地水火風闇光。魔力が、何処を源泉に、人間に作用するか。ある種人間は触媒だ。魔力と意思や術の理論、その目には見えないが「存在するもの」二つに対し、人間という「目に見える」触媒が「目に見える」現象を引き起こす。
魔力元素論は隣国の魔法学院で基礎から学べるが、どちらにしても、この世界には、「聖」などと言う魔力源泉は存在しない。
聖女・聖人という名詞はだから教会の専売特許――ああ、そんなことは、設定集にはなかったか。
「嘘よ!、私は聖なる乙女なんだから!、あ、そうか、私は世界で唯一の聖属性なんだわ!」
いやいや、だから、「聖」という概念がね。それを打ち立てたいなら、研究実証発表実証周知実証必要でしょうが。で、打ち立てられたら打ち立てられたで、教会とやりあうかまるっとごすっと渡すか、打ち立てられる前に潰されるがファイナルアンサーだが。どっちにしろ、碌なことにならないだろうに。
流石に鉄面皮な私も危うく口許をひきつらせかけたが、パーティの招待客はすべて、唖然としている。
そして、こんな当たり前のことを口にしてしまう少女、その少女を侍らせる皇子に対し、不信感を募らせる。
ダメだって。聖女ヤバいって。教会はまずいって。それが総意だろう。
「これ以上の恥さらしは止めよ」
扉の側から低く、太く響いた声に、その声の持ち主に気付いたものはすべて膝を折る。あるものは片膝をつき、あるものは腰を折り、あるものは跪礼し、お辞儀する。
シュバルツ・シン・アロー。アロー皇国皇帝陛下の姿があった。
「っ、父う…陛下!」
ローズ、その傍らに居たジャスミン、アイリス、カトレアも膝を折る。
「…教皇、聖女カトレア、お楽に」
膝を折り、顔を伏せたままのローズたちの横で、カトレアが顔を上げる。
同じく扉の側に居た神官服の老人…教皇は、皇帝陛下の元に歩み寄り、一礼するとその後ろに侍る。
ゆっくりと、二人はカトレアの許に歩み寄り、歩を止めた。
「イヴァン、お前は先程から、ローズ嬢やカトレア嬢に暴言を吐いていたようだな。わたしの臣下に、なんの権限があってその言葉を吐いた」
壇上で、流石に片膝を折るイヴァンに向かい、声をだす。と、顔を上げたイヴァンが叫ぶ。
「父上!、ローズは我が国に相応しくない悪辣な女!、父上の手を煩わせる価値もありません!」
「悪辣というのは、先程バルバロスの息子が言っていた内容か」
「そうです!、ローズ様はわたしにたくさん酷い事をしたんです、陛下、どうかローズ様を処罰してください!」
壇上で跪き、両手の指を組み、祈りを捧げるように少女が皇帝陛下に願う。
「衛兵、あの娘の口を閉ざせ。暴れるようならそのまま斬れ」
少しばかり眉を上げて、直答を許してはいない、とすら言わず、少しばかり目線を動かし、壇上の少女を排する指示をシュバルツは出した。
兵は迅速に動く。壇上に駆け上がると叫び声をあげる少女を拘束し、壇上から引きずり下ろし、槍を向ける。
「ティナ!、やめろ!何をする!!、父上!、やめてください!、ティナ!!」
扉付近から矍鑠たる声が響き、人垣が割れた。
壇上から扉までの道、その先に佇む老人をベルナルドは目にして、へたり込む。
「ど、どうしたんですか、レイスさま! カイさま、レイスさまが!」
「レイ、どうした、あの老人に何かされたのか?」
「お答えはいかに?、イヴァン皇子よ」
その声に、だが答えたのはイヴァンではなく、少女だった。
「だってわたし、魔術だけじゃなくて、治癒魔法がつかえるもの!」
「そうだ。ティナは魔術だけではなく、魔法がつかえるのだ。ティナの治癒魔法は素晴らしい。まさしく聖女だ。聖女はそこに居る女などではない!」
壇上で胸を張る少女と、その傍らで彼女を護り続ける少年。舞台ならば盛り上がる場面かもしれないと不謹慎にも考えたパーティの招待客は、しかし、対峙する老人の姿が人の隙間に見え、その衣服に驚愕した。
真白な神官装束。魔灯の下で緩く波打つその生地は、上位の、最上位の神官のみが身に付けるものだ。
「ほう。…で、その治癒魔法は、何の属性かの?」
「は?、治癒魔法なんだから、聖属性に決まっているじゃない!」
「ほう。…では、闇属性での治癒魔法は使えるかの?」
「は?、なんで闇属性に治癒なんかあるのよ! あるとしたら光か水属性くらいでしょ!」
「ほう。…では、光や水属性の治癒魔法は使えるのかの?」
「私の癒しの力は聖なるもの、聖魔法よ!!」
「ほう。…では、他の属性の、他の治癒魔法は使えないというんじゃの」
「そんなもの、ないもの!」
老人はローズの…正確にはカトレアの方に視線を向け、また視線を壇上に向けた。
また、人垣が割れる。
「王の影の報告通り、なんともお粗末な娘じゃな。なぁそこの娘子よ、聖属性などという魔法魔術は存在せんぞ?」
肩をすくめてみせた老人に、私は跪礼した。
「そしてな、娘子よ、聖女はな、すべての属性で「癒しの魔法」を行使できる。すべての属性で「癒しの魔術」を行使できる。それが出来て、「最低限の資格」じゃ。それだけでは、まだ「聖女」の名は冠せぬ」
「は?、何よそれ、そんなの知らない!、ありえないでしょ!」
うぉー、教会トップのお出ましですよー。まーなー、カトレア姉さまの卒業式だもんなー、ねーさま、このままこちらの教会トップに最年少就任だもんなー、そりゃ教皇様も来るわなー。つか、陛下がお呼びになるわなー。箔つくし。
というか。えー、ちょっ、えー。お嬢ちゃん、「聖女」がなんたるか、マジで知らなかったんかい。
この世界の魔法と魔術は理論が違う。大雑把に言うなら、魔法はセンスで魔術は理論だ。だけど、どちらにしても基礎となる「魔力の質」は同じだ。
地水火風闇光。魔力が、何処を源泉に、人間に作用するか。ある種人間は触媒だ。魔力と意思や術の理論、その目には見えないが「存在するもの」二つに対し、人間という「目に見える」触媒が「目に見える」現象を引き起こす。
魔力元素論は隣国の魔法学院で基礎から学べるが、どちらにしても、この世界には、「聖」などと言う魔力源泉は存在しない。
聖女・聖人という名詞はだから教会の専売特許――ああ、そんなことは、設定集にはなかったか。
「嘘よ!、私は聖なる乙女なんだから!、あ、そうか、私は世界で唯一の聖属性なんだわ!」
いやいや、だから、「聖」という概念がね。それを打ち立てたいなら、研究実証発表実証周知実証必要でしょうが。で、打ち立てられたら打ち立てられたで、教会とやりあうかまるっとごすっと渡すか、打ち立てられる前に潰されるがファイナルアンサーだが。どっちにしろ、碌なことにならないだろうに。
流石に鉄面皮な私も危うく口許をひきつらせかけたが、パーティの招待客はすべて、唖然としている。
そして、こんな当たり前のことを口にしてしまう少女、その少女を侍らせる皇子に対し、不信感を募らせる。
ダメだって。聖女ヤバいって。教会はまずいって。それが総意だろう。
「これ以上の恥さらしは止めよ」
扉の側から低く、太く響いた声に、その声の持ち主に気付いたものはすべて膝を折る。あるものは片膝をつき、あるものは腰を折り、あるものは跪礼し、お辞儀する。
シュバルツ・シン・アロー。アロー皇国皇帝陛下の姿があった。
「っ、父う…陛下!」
ローズ、その傍らに居たジャスミン、アイリス、カトレアも膝を折る。
「…教皇、聖女カトレア、お楽に」
膝を折り、顔を伏せたままのローズたちの横で、カトレアが顔を上げる。
同じく扉の側に居た神官服の老人…教皇は、皇帝陛下の元に歩み寄り、一礼するとその後ろに侍る。
ゆっくりと、二人はカトレアの許に歩み寄り、歩を止めた。
「イヴァン、お前は先程から、ローズ嬢やカトレア嬢に暴言を吐いていたようだな。わたしの臣下に、なんの権限があってその言葉を吐いた」
壇上で、流石に片膝を折るイヴァンに向かい、声をだす。と、顔を上げたイヴァンが叫ぶ。
「父上!、ローズは我が国に相応しくない悪辣な女!、父上の手を煩わせる価値もありません!」
「悪辣というのは、先程バルバロスの息子が言っていた内容か」
「そうです!、ローズ様はわたしにたくさん酷い事をしたんです、陛下、どうかローズ様を処罰してください!」
壇上で跪き、両手の指を組み、祈りを捧げるように少女が皇帝陛下に願う。
「衛兵、あの娘の口を閉ざせ。暴れるようならそのまま斬れ」
少しばかり眉を上げて、直答を許してはいない、とすら言わず、少しばかり目線を動かし、壇上の少女を排する指示をシュバルツは出した。
兵は迅速に動く。壇上に駆け上がると叫び声をあげる少女を拘束し、壇上から引きずり下ろし、槍を向ける。
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