男子高校生のマツダくんと主夫のツワブキさん

加地トモカズ

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マツダくんの新しい恋

ツワブキ先生と保健室(※)

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_やばい生でみたらめちゃ可愛い
_ほんと松田のくせに生意気!
_ありえん!あんな美人が男だなんて!俺は断じて信じないぞ!
_見ようによってはイケメンだよね。
_こりゃライバル増えますなぁwww
_松田マジどんまいだし。
_松田くん、困ったら本貸すよ?
_トモの野郎…あんな美人とあんなとこやこんなこと…
_俺、男でも石蕗つわぶき先生ならイケる…
_さっき薬もらいに保健室行ったらめっちゃ人いたwww
_ぎゃー!石蕗先生がー!


 授業中にも関わらず2年5組のグループ通信の内容が好き勝手に暴れていた。智裕トモヒロは密かに、ただただ呆れるしかなかった。励まされているのか貶されているのかわからない状態だった。


***

 智裕もホームルームが終わって10分休憩の間に保健室にダッシュしたが、本当に人で溢れかえっていた。ほぼ全員が新任の養護教諭を見に来ていた。
 一緒に向かった、クラス一の野次馬、大竹おおたけ裕也ユウヤも驚いていた。

「あーりゃりゃ、イケメンで美人ってすげーな。」
「……マジかよ、これ、夢じゃねーの?」
「トモ、こりゃ男を上げねーと。うかうかしてたら寝取られちまうぞ。」

(寝取られ……⁉︎そんな、の……。)

「絶対やだ!」

***


4限目の数学、智裕は教科書をパテーションにして机に突っ伏して考える。

(そういえば4月から正社員で仕事するとか言ってたけど、ここ民間じゃないから公務員じゃん。いや、そうじゃなくて、俺がこの学校って絶対知ってただろ拓海タクミさん!なんで昨日の今日で黙ってるんだよ。え、ドッキリ?ドッキリなのかこれ?それに美人だし、女子からはイケメンに見えてるみたいだし、そんな人が俺みたいな奴の恋人なのか?昨日と今朝のあの柔らかな感触はドッキリなのか?あーヤバイ、早く授業終われよ!そしたらくっそ問い詰めてやりたい……あ、でも問い詰めたら半泣きくらいになりそう…だけどそれもそれで可愛いし押し倒したくな……やべ、想像したらムラっとする。いや、でも押し倒したところで何をすればいいんだ?男同士ってアレをアソコにズコンとバッコンとして……え、入んのか⁉︎え、どうすんだよぉぉぉぉ!)

「松田、おい!松田!」
「は、はひぃ⁉︎」

 トリップしてたら真うしろから呼ばれて背筋が伸びて反応した。

「ボケーっとするな。問題集の12ページ、とい5を前で書け。」
「は、はいぃぃ!」

 慌てて隅に追いやっていた数学の問題集を手に取った。勿論トリップしていたのでページは真っ白だった。なんとかやるしかない、と黒板で四苦八苦する。

「はぁ……。」

(もう俺の脳みそ動かねーつの。)


 昼休みを告げるチャイムが鳴ったと同時に智裕は教室を飛び出した。ダメ元で保健室に向かう。
 全速力で走ったお陰で、保健室の前には1人もギャラリーがいなかった。引き戸を力一杯開けると、ビックリした様子の白衣を着た拓海がいた。

「だ……誰……え?智裕くんっ⁉︎どうして此処に…。」
「それはコッチの台詞だよ…。」

 保健室をキョロキョロと見渡したが、拓海1人だけらしい。智裕は入ってドアを閉めると、ついでに鍵をかけた。

「ちょっと…!」
「え、えぇ⁉︎」

 か細い拓海の腕を智裕は引っ張り、そのまま空いているベッドに拓海を少し乱暴に投げて、カーテンを閉めてオフホワイトの密室を作り上げた。

「昨日、俺制服着てたし、ここの高校って知ってたろ?何で教えてくれなかったんだよ。」
「ここの制服だって知らなかったんだよ……智裕くん、ここの生徒さんだったの?」
「2年5組出席番号18番、松田智裕…はい、学生証。」

 ブレザーの内ポケットから生徒手帳を取り出し、後ろに入れてる顔写真付きの学生証を拓海に見せる。

「ほんとだぁ……。」
「あーもー!どうすんの!近所の主夫ってだけでもちょっと危ういのに、生徒と教師とかマジでドラマじゃねーか。」
「あー…本当だ。」

 拓海は智裕に感心するような反応。それを見ると智裕は「はぁぁ」と深い溜息を吐く。

「しかもウチって一応校区だし、団地でも何人か生徒いるから……俺も気をつけるよ。」
「うん、わかったよ。」

 智裕は確信した。拓海は俗に言う「天然」だということ。智裕の忠告も本当に理解したのか分からない。それに、昨夜智裕も当てられた色気は拓海の無意識で出されている。

「今朝…全然会えなかった。」
「うん、なんかいっぱい人が来ちゃってたんだけど…智裕くんも来てたんだ?」
「女子の勢いに押されて割り込め無かったんだよ……じゃなくて!」

 ギシッ

 スプリングが跳ねる音。拓海の視界には天井と少しだけ赤くなった智裕の困った表情が映る。

 ドク、ドク、ドク

 智裕の顔が近づく。

「気を付けてよ…石蕗先生狙ってくる奴増えるからさ……。」
「そんな……こと…。」
「そんなことあるの。ウチのクラスだって大騒ぎだよ……だから。」
「あ……っ!」

 智裕は唇を拓海の首筋に落とす、吸い付く、少しばかりの痛みが走る、でもその痛みが。

「……は、俺のだから。」
「は…ずかし……よぉ……。」

 互いに興奮する、刺激。

「………拓海さん、勃ってる?」
「ひゃっ!」

 膝で拓海の股下を押さえると、雄独特の感触が伝う。それは智裕も同じ状態だった。血が巡る、ドクドクと。

「やだぁ……も……はずかしい……。」
「………拓海さん…すぐおさまらせるから。」

 カチャ カチャ


***


「会議まで時間がないな……」
「しゃ、社長ぉ……」
「夜になったらたっぷり可愛がってやるから我慢しろ…」
「ひゃあ……っ!」

(社長のおっきくなってる……あついよぉ…)

「こうして……ほら お前も握れよ」
「は……い……」

 クチュ クチュ

「ああっ!」
「どうした? 集中出来ないか?」

 グリッ

「先っぽ らめぇ……あ あ…っ!」
「そんなんじゃ俺はイケねぇな」
「も…もうしわけ……ああんっ!」

 グチュ グチュ

(社長のと 僕の くっついてる!)
(社長の手と アソコの熱さで)

「だめぇ!あ あぁぁぁ!イっちゃうよぉ…」


***

増田ますださんが貸してくれた漫画、こんなに早く役に立つとは思わなかった。)

 気になりすぎて授業中にコッソリ読んでしまっていた大変濃厚なボーイズラブ漫画を参考に、セックスに至らずともこの場をおさめ、つ愛を確かめる方法を智裕は思いついた。

「と、智裕、くん…。」
「拓海さん……。」

 智裕は日常的に行う慰めの行為の要領でそそり立つ自身を取り出す。拓海は一瞬見て顔を真っ赤にして目を背ける。その耳の裏からの首筋を妙に噛み付きたくなり、智裕は右手で拓海のベルトとパンツの前チャックを外しながらそこに何度かキスを落とす。
 下着越しの感触で、チュ、と音を鳴らすたびに拓海がピクピクと跳ねることがわかる。下着をずらせばプルン、と興奮した拓海が顔を出す。
 白昼の下なので、下半身がよく見える。成人男性にしては茂みは薄く、ソレも美しく見える。智裕は唾を飲み込む。

「智裕くん……だ、だめ……。」
「今日はセックスしないから、ね?一緒に自慰オナニーするだけ。」
「や、やだぁ……。」

 智裕は軽い拓海を抱き上げると、自分の太腿の上に乗せた。自然と互いの興奮がキスしているように密着する。拓海は羞恥が過ぎて、天然なのか狙っているのか、指をはんで目を潤ませて肩を震わせている。恐らく前者。智裕のソレはまたドクン、と血が巡る。

「ね、拓海さんってどうやってやってるの?」
「ん……な、なに…を?」
自慰オナニー……茉莉マツリちゃんの横でしてるの?」
「し…しないよぉ……!」
「じゃ、俺に見せて?」

 智裕は自分で言って後悔した。

(やばいやばい!半泣きならいいけど泣かせたらやばくね?マジで2日連続の失恋あり得るつーの!あーでも言っちゃったのやっぱ無しとか無理過ぎるー!)

「ん……ふぅ……。」

 クチュ クチュ

 溢れ出してきた蜜が卑猥な音を立てる手伝いをする。智裕が脳内独り言を全開にしていた間に、拓海は右手を使って従っていた。左手は智裕に掴まる。

「あん、ま……して、ない……ふぁあ…。」

 智裕は自分の童貞レベルが恥ずかしくなるくらい、拓海のその行為はぎこちなかった。

 ドクン ドクン ドクン

 辛抱ならん、とばかり智裕は右手で自分のものと拓海のものを握り左手は拓海の腰に手を回して密着させる。

「ち、近いぃ……ふぁ……っ!」
「拓海さん、声抑えなきゃ。」
「あ……ど、どう…しよ……。」
「腕、回して…俺にくっついて?」

 ギュッと拓海は智裕を抱き締める。

「はぁ……あぁう…あ、あ…ん。」

 拓海の喘ぎ声、漏れる息は智裕の首の皮膚がダイレクトに受け止める。そこと、智裕が擦るそこがとてつもない熱を出す。

「やぁ……きちゃうよぉ…。」
「も、やば……俺も、イキそ…っ。」

 智裕は手の動きを一層速くする。智裕の息は拓海の聴覚を犯していた。そしてありったけに格好つけた声を囁く。

「次は……ちゃんと、セックスしよう。」
「はぁ、んぁあ…あぁぁっ!」
「くぁ……っ!」

 2人ほぼ同時に達した。智裕が指を乗せていたので興奮が派手に飛び散ることはなかった。
 ハー、ハー、と拓海は酸素を求める。

「あ……あぁ……ど、しよ……がっこぉなのにぃ…。」
「ごめんね……拓海さん可愛くて…はぁ……。」

 智裕は右手をどこにも触らないように上げて、左手だけで下着を元に戻してチャックだけ上げて、カーテンの外に出た。保健室内にある洗面台で手を洗う。
 拓海は脱力してしまいベッドで淫らなまま仰向けになる。
 蛇口を締めると、智裕はフラフラと拓海の元に向かう。そして拓海の衣服を整える。

 智裕の頭は理性100パーセントになっていた。膝から落ちて、ベッドに顔を伏せる。

「本当にごめんなさい…!拓海さん!いや、マジで、学校なのに暴走しちまったよ!こんなこと今後絶対やんないから!」

 しっかりと罪悪感が襲う。ようやく起き上がった拓海は、そんな智裕の手を取る。


「また、智裕くんのこと、好きになっちゃったよ。俺、変かな?」

(女神だあぁぁぁぁぁ!)

「拓海さん!大好き!めっちゃ好き!」


***


「トモのやつ戻って来ねーな。」

 智裕といつも昼休みを過ごしている大竹が壁時計を見ながらそう呟くと、近くで漫画の読み回しをしていた男子たちがその声に気がつく。

「そーいや松田めっちゃダッシュして出てったよな。」
「あいつ、いつも弁当持ってきてなかった?」
「なになにー?どうしたん?」

 通りかかったクラス副委員長の里崎さとざき蓉子ヨーコも割入ってくる。

「松田が戻って来ないんだってよー。もーすぐ休み時間終わるのにな。」
「松田くんがねー…あの阿婆擦あばずれと付き合ってる時も宮西くんたちと一緒にご飯食べてたのにね。」
「ヨーコさん…サラッと暴言が出たね今。」

 大竹が里崎に怯えると、廊下を通り過ぎる女子たちの声が聞こえてくる。

「保健室鍵かかってたー。」
「石蕗先生見たかったなぁ。」
「どっか行ってるんじゃない?」


 2年5組、無言のち叫び。(宮西を除く)
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