【休止中】死が二人を分かつまで

KAI

文字の大きさ
11 / 361
”出逢い”

【ハジメマシテ】

しおりを挟む

 丹波の用意してくれた運び屋は、予想よりも早く二人の元へやってきた。



 相当、恐ろしい借りがあるのだろう。



 到着十分前には確認の電話までしてきた。



『な、何か御用意しておく物など、ありますでしょうか!? 買っておきますので!!』


「ん~・・・・・・女性用の。約二三センチのですかね」


『かしこまりました!! すぐに買って向かいますので!!』



 そして今では、高速を法定速度ギリギリで突っ走っている。



 後部座席には、予備の作務衣と新品のワンピースを着た二人が。



 運転手は、何を聞いても何を見ても公言しません。



 そんな空気をかもし出している。



「・・・・・・」


「・・・・・・」


「だ、暖房などは大丈夫でしょうか? 寒かったり暑かったりは・・・・・・?」


「快適です。お気遣いなく」



 またもや、なんとも言えない空気が流れる。



「・・・・・・私の一存いちぞんで連れてきてしまいましたが・・・・・・貴女が望めば、国に帰ることもできます」



 腕を組みながら、運転手には通じない言葉で、少女に尋ねる。



「私の心は、貴女あなたを守りたい」


「・・・・・・」



 ポンッ



 黒のマジックを開けて、ホワイトボードに声の代わりにキュッキュッと文字を書く。



『私に何を望むの?』


「望む・・・・・・ふむ・・・・・・」


『身体?』


「いやいや・・・・・・私は単なる同情どうじょうよこしまな考えで、ここまでバカはしません」


『じゃあ、何故なぜ?』


「貴女には才能がある。『』の才能が、ね。しかしまだ未熟・・・・・・私が手助けできるのではないかなぁと」


『・・・・・・強くなることに何の意味があるの?』


「う~ん・・・・・・文句を言わせない。・・・・・・あらゆる障壁を乗り越えられるのは何だと思います?」


『お金?』



 ニヤリと男は首を振った。



「コレです」



 少女に、握り締めた拳を見せつけた。



ちから・・・・・・金属探知機にも、世論にも、政治家にだってとがめられない。自分の武器になる。魅力になる。価値になる・・・・・・これではまだ不足ですか?」


『私みたいな小さい女でも、その力は手に入るの?』


「ハッハッハッ!! ただの子供に、片目を奪われる私ではありません」



 それに・・・・・・と、



「力を手に入れれば、他の人に教えて享受させることもできる。それだけじゃない・・・・・・大切なものを護ることができる」


「・・・・・・」


「・・・・・・今一度いまいちど言います。貴女が望まなければ、私は干渉しない。貴女はもう自由だ」


「・・・・・・」


「お金を渡すこともできます。あっちの国であれば十年は生活できるでしょう・・・・・・貴女次第です」



 キュッキュッ



『あなたと、一緒』


「良かった!」



 男は満面の笑みだった。



 とーーーー



 キュッキュッ



『名前』


「ん~?」


『あなたの名前、知らない』


「あ~そう言えば、失念しておりましたね」



 改めて・・・・・・と、シートに男は正座をした。



「私の名は『芥川あくたがわ げつ』以後よろしくお願いいたします」



 深々と、頭を下げた。



『アクタガワ ゲツ?』


「はい。今宵こよいの出逢いに感謝してます。貴女の名前は?」


『・・・・・・捨てた』


「え?」


『パパとママが死んだ・・・・・・その日に、二人の子供も死んだ。そう思わなければ、この一ヶ月耐えられなかった』


「・・・・・・そうですか」


『あなたが、つけて』


「わ、私が?」



 芥川が初めて狼狽ろうばいした。



『うん。あなたが育てる。あなたが親代わり』


「う~ん・・・・・・」



 芥川の頭に思い浮かべた名前の数は、数百に上る。



 しかし・・・・・・どれが良いのか・・・・・・



 出逢った時を思い出してみた。



 殺気を全く感じなかった。



 左目を狙われているなんて、思わなかった。



 牙をいている蛇の口の中に、指を突っ込むかのような悪手あくしゅ



 だが、その危険性を隠し、無抵抗な少女に扮していた。



 そして・・・・・・あの瞬間ッッ



 四四年間、苦楽を共にしてきた左眼とサヨナラした。



 しかし同時にあの瞬間に、確信したのだ。



 この娘が、自分には必要なのだと!



 ・・・・・・瞬間・・・・・・



 あの刹那・・・・・・



「・・・・・・『セツナ』ってどうでしょう?」


『意味は?』


「極めて短い時間のことを意味します・・・・・・貴女はコンマ数秒間に全力を出し、私に深手を負わせた・・・・・・ピッタリかと」


『・・・・・・まあ、いいかな』


「まあ・・・・・・って・・・・・・」


『深読みしないで。気に入ったわ』


「ありがとうございます」



 とーーーー



「日本語も、覚えましょうか」


『日本語って難しいって聞いていたけど』


「山崎さんに言われた三週間という潜伏期間・・・・・・勉強にてるには十分でしょう」


『私、学校にも通ったことないのだけど』


「大丈夫! 絶対に覚えていただきます!!」


『・・・・・・人生初めての先生ってことね』


「はい! 一応、私は先生ですので!」



 こうして、二人の奇妙な共同生活が始まった。


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった! 木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

真面目な女性教師が眼鏡を掛けて誘惑してきた

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
仲良くしていた女性達が俺にだけ見せてくれた最も可愛い瞬間のほっこり実話です

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...