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”もうひとりの門下生”
【チワワの威嚇】
しおりを挟む二人はデパートに寄った。
セツナに何着もワンピースを買ってもらっていたが、今のスポーティな風貌には、もっと別の服装が似合うような気がしたからだ。
・・・・・・というよりも、芥川のセンスがなさ過ぎてワンピースしか買えていないのが現実なのだが。
デパートの一角にあるレディース洋服店にたどり着くと、店員を捕まえて芥川は言った。
「この娘に似合う服を見繕って下さいお願いしますこの通りです。何着でも買いますのでどうかお力を貸して下さい」
念仏のような懇願に、店員は圧倒されていたが、上客と見るやあれこれ提案してきた。
そして前言通り芥川はその全てを買い漁っていった。
「いや~たくさん買いましたね~」
たくさん・・・・・・という概念をはるかに超えている量の紙袋を抱えて、芥川はニコニコしていた。
『・・・・・・ありがとう』
「いえいえお安い御用!」
ハッハッハ!!
芥川は笑っている。
その瞳には、太陽のように明るい色が。
そう。
摘出した左眼にも、眼球が入っている。
明確にすれば、義眼だ。
強化ガラス製の、本物と遜色ない代物。
本当は包帯でも、眼帯でも良かったのだが、芥川の目を見る度にセツナが哀しい顔をするので作ったのだ。
少々高くついたが、それも必要経費である。
さて・・・・・・道場に着いた。
その時だ。
「先生!!」
澄み切った、青年の声。
見やると、道着を帯で巻いて持っている青年が立っていた。茶色の髪の毛は短く切られており、頭の形はまんまる。顔にはあどけなさが残っており、鼻が小さく桜色の唇をしていた。
美しい・・・・・・青年だ。
「三週間もいきなり休みって・・・・・・何かあったんですか!?」
「あ・・・・・・新樹さん」
「先生にまで見放されたら・・・・・・僕は・・・・・・」
とーーーー
新樹と呼ばれた青年と、セツナの視線がピッタリ合った。
時が止まり、心臓が脈動し、瞳孔が開いた。
運命の出逢い・・・・・・
しかし、甘い甘い出逢いなどではなかった。
それは・・・・・・
「ぼ・・・・・・僕の先生に!! 誰だこのガキ!!」
チワワの威嚇だった。
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