48 / 361
”日常その壱”
【悪くない敗北】
しおりを挟む新樹が裸足でハイキックを放った。
が、
シュッ・・・・・・
セツナは両足の位置を交差させただけ。
それだけだったが、新樹の狙った頭部は後ろに引かれ、当たらない。
さらに、新樹の足を掴むことにも成功した。
「・・・・・・マジかぁ~」
ここまでくると、むしろ変な笑いがこみ上げてくる。
「・・・・・・」
「・・・・・・どうしたんだよ・・・・・・この続きも習ったんだろ!? やってみろ!!」
もう打開策はない。
蹴り足は取られ、軸足だけで立っている状態だ。
セツナは少しばかりの逡巡の末にーーーー
「・・・・・・むんっ!!」
蹴り足を肩に担ぎ上げる要領で、距離を縮めた。
当然、セツナの接近により新樹の足は天高く上がってゆき、立ってられないマリオネット状態になってしまった。
そして・・・・・・
ガッ!
セツナは骨盤付近まで急接近すると、新樹の軸足の膝を刈った。
そのまま・・・・・・
ドスンッッ!!
新樹は辛うじて受け身をとったが、またもやマウントを取られ、セツナの美貌を見上げる形になった。
「・・・・・・シュッ!!」
拳が降ってくる・・・・・・ッッ!!
新樹は目をつむった・・・・・・
だが、予測していた打撃は来ない。
「えっ・・・・・・?」
寸止め・・・・・・
伝統派空手などで見られる、勝負の決め手。
新樹の鼻の上で、拳が静止している。
サァ・・・・・・汗が滝のように流れる。
「認める・・・・・・僕の負け・・・・・・だ」
それを聞くと、セツナは新樹の身体から離れて、ホワイトボードを拾い上げた。
『胸を貸していただき、ありがとうございました』
ペコリ・・・・・・
・・・・・・
「へっ・・・・・・僕が腐ってる間に、礼節まで身につけやがって・・・・・・」
「新樹ちゃん!」
急いで、パパとママが飛び込んできた。
「大丈夫? 怪我はない?」
「うん・・・・・・正直、視界がぐにゃっとしてるけど・・・・・・」
「頭を冷やしましょう。家の中へ戻りなさい」
「はい・・・・・・」
息子を倒したんだ・・・・・・きっと、嫌われた。
セツナはダウンを着ると去ろうとした。
が、
「お嬢ちゃんも、家の中に入りなさい」
ママだ。
「??」
「外は寒いわ。温かいココアでも飲んでいって」
「母さん・・・・・・」
「新樹ちゃん・・・・・・」
その時ーーーー
温厚な母親の頭から、角が生えているのが見えた・・・・・・
「出会い頭に女の子を蹴ろうとして、まさかこのまま帰すなんてこと・・・・・・許すと思う?」
ヤバい・・・・・・
夕食の具にされる・・・・・・
「・・・・・・すみませんでした」
「まったく・・・・・・お嬢ちゃん、お名前は?」
「そいつはセツナって言うんだよ」
「セツナちゃん。どうか息子の無礼な行動を許してあげて・・・・・・」
『そもそも、無礼とは思っていない』
「くつろいでいって。さ、家の中へ」
セツナはちょっと考えた後に、靴を脱いで家の中に入った。
バタン・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
「・・・・・・作戦成功」
曲がり角でタバコを吸っている、作務衣姿の男がいた。
「『大木刈り』・・・・・・ミックスさせたオリジナル技を使うとは流石・・・・・・ハックション!!」
ぶるりと、芥川は震えていた。
「寒いぃ・・・・・・カッコつけて遠くから見守るんじゃなくて、私もお邪魔したかったぁ!」
白い息を吐きながら、弟子たちの様子を窺っていた、芥川なのだったーーーー
0
あなたにおすすめの小説
終焉列島:ゾンビに沈む国
ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。
最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。
会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
湖畔の賢者
そらまめ
ファンタジー
秋山透はソロキャンプに向かう途中で突然目の前に現れた次元の裂け目に呑まれ、歪んでゆく視界、そして自分の体までもが波打つように歪み、彼は自然と目を閉じた。目蓋に明るさを感じ、ゆっくりと目を開けると大樹の横で車はエンジンを止めて停まっていた。
ゆっくりと彼は車から降りて側にある大樹に触れた。そのまま上着のポケット中からスマホ取り出し確認すると圏外表示。縋るようにマップアプリで場所を確認するも……位置情報取得出来ずに不明と。
彼は大きく落胆し、大樹にもたれ掛かるように背を預け、そのまま力なく崩れ落ちた。
「あははは、まいったな。どこなんだ、ここは」
そう力なく呟き苦笑いしながら、不安から両手で顔を覆った。
楽しみにしていたキャンプから一転し、ほぼ絶望に近い状況に見舞われた。
目にしたことも聞いたこともない。空間の裂け目に呑まれ、知らない場所へ。
そんな突然の不幸に見舞われた秋山透の物語。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった
仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。
そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。
夜兎ましろ
ファンタジー
高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。
ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。
バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる