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”日常その壱”
【男心と冬の空】
しおりを挟む気がつけば、時間は夕暮れ。
冬の日本の日の入りは早い。
暗くなるのも、また、早い。
「泊まっていってもいいのよ?」
目を赤く腫らしているセツナは、首を振った。
『私にも家がある。帰る場所がある』
「なら・・・・・・こうして会えたお礼に、この家もそのひとつに入れてくれない?」
「?」
「いつでもいらっしゃい。喜んで待っているからね♪」
・・・・・・コクリ。
「僕の意見は?」
「少女暴行未遂犯は黙ってらっしゃい」
「うぐ・・・・・・」
「ぱ、パパが送ってくるから!!」
ここでも、頑張って前へ出ようとパパが。
「もちろん。そのつもりだったわよ」
「安心してくれセツナ君!! パパはこう見えても柔道初段!! 責任を持って送り届ける!!」
「あ~多分、父さんよりもその娘の方が強いから大丈夫だよ」
「安全運転でね、パパ♡」
「うん! 制限速度の半分で運転するから!! じゃあ行こうかセツナ君!!」
バタン・・・・・・
新樹はどうやら無意識的に、気を張っていたらしい。
ふぅ・・・・・・と嘆息をついた。
「フフフ・・・・・・緊張して当然よ」
「は?」
「あんなに可愛い女の子が同じ空間にいたら、もう男の子なんてドキドキしちゃってしょうがないでしょう?」
母が意地の悪そうな笑みで突いてくる。
・・・・・・って!?
「べ、別にドキドキなんてしてねーし!!」
「我が子ながら、テンプレートな反応を返してくれるわね」
「あんなヤツ、いつかもっと強くなって、追い越してやるんだ!」
「ふ~ん・・・・・・いい? 新樹ちゃん・・・・・・」
ママがそっと強がっている新樹の耳元に、近づいた。
「男の子の視線、女性って全部分かるものよ・・・・・・バレていないと思っててもね♪」
「~~~~!?」
「チラチラ・・・・・・あの娘のこと見ていたわね・・・・・・ママの目は誤魔化せませ~ん」
「それは・・・・・・いつまで家にいるんだろうって・・・・・・」
「それなら~おっぱいなんて見る必要はないわよね?」
「!?」
「こっそり見ているつもりだったんだろうけど・・・・・・本当に男の子ってバカなんだから」
「そ、そそそ・・・・・・そんなこと・・・・・・」
「はいはい。息子の思春期真っ盛りな行動にまで口を出すほど過干渉じゃありません。この話しはコレでおしまい!」
だけど・・・・・・と、
「・・・・・・あの娘に、優しくしてあげて。おねがい」
「・・・・・・ああもうっ!! 分かってるよ・・・・・・」
「それならいいわ♪」
スタスタと、キッチンへ歩いて行く東山ママ。
玄関では、その息子、新樹がまだ立っている。
・・・・・・まだ感じる。
あいつの・・・・・・匂い。
ミルクみたいな甘い香りに、ほんのりと汗の匂いが・・・・・・きっと、稽古の後に来たんだろう。
・・・・・・
ダメダメ!!
ここで深呼吸でもするのか!?
マジの変態になるぞ僕!!
「もう・・・・・・なんなんだよ・・・・・・」
複雑な想いを抱えながら、リビングへ戻る。
だが、自分が意識せずに放った言葉ーーーー
『もっと強くなってーーーー』
そう。
決断したのだ。
明日の予定は・・・・・・いや、明後日も、その次の日の予定も決まった。
尊敬する師、芥川のところへーーーー
応援ありがとうございます!
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