【休止中】死が二人を分かつまで

KAI

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”記憶に残る一日篇”

【武の対極】

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「人に危害を加える・・・・・・さっき、膝を蹴り腕ひしぎをしたのは何処の誰ですか?」


「僕ですけど・・・・・・でも、あれは・・・・・・」


「組手・・・・・・ですけど、痛みを相手に与えるという点では、同じこと。武とは極論、でもあるんです」


「それ言っちゃいますか?」


「無論、そんな殺伐とした世界ではない。ちゃんと正しい使い方をすれば、相手を壊さずに自分を守れる・・・・・・ですがね」



 芥川は丹波を見つめた。



「暴力が存在意義。暴力こそがマニュアル通り・・・・・・そんな世界の『』はねぇ・・・・・・並大抵の黒帯やプロでは到底辿り着くことなどできやしない」



 不安がまだ残っている二人の頭を撫でる。



 右手は新樹を、左手はセツナの頭の上に。



「実戦という『武』の本番、それを学べる機会でした。お二人にはショッキングに見えたかもしれない・・・・・・ですが街頭、飲み屋・・・・・・様々な場所で起こり得るルール無用の乱闘は、こんなモンじゃないですよ?」


「ま、ワシは戦えりゃそない難しく考えなくてもええんや。腕っ節こそが、ヤクザの全てやからなぁ」



『暴力団』・・・・・・まさしく『武』の対極に位置している世界。



 しかし、果たしてそうだろうか?



 確かに、乱暴・粗暴・無礼がイメージとしてある。



 だが、実際、極道ほど礼節にうるさい業界もないであろう。相手を重んじる心と、時には引き際を悟る度量の広さを持っていなければ、のし上がることなどできやしない。



 彼らの盃事などの行事・・・・・・一度でも見たことのある者は、口を揃えてこう言うだろう。



『礼儀作法が異常なまでに完璧』



 少しでも粗相をすれば、それは個人の責任にとどまらない。



 その者の背負っている代紋。



 組の教育のあり方を問われるのだ。



 ・・・・・・何かと似ていないだろうか?



 ーーーーしかし、皮肉にも、



 それを、芥川はよく知っている。



「暴力団の組長・・・・・・そんな丹波さんには釈迦に説法でしょうが、力には責任が伴います。力を行使する者は、自身の強さを、力量を知っておく必要がある」


「ん~ムズい話しは苦手やが・・・・・・強いヤツの匂いには敏感やで~」


「フフフ・・・・・・面白い人だ」



 痛々しい脇腹を隠しながら、



「その点で行くと・・・・・・私と丹波さんの力量は・・・・・・ちょうど同じか、私が少し上くらい・・・・・・昨日の行動ひとつで勝敗がころりと変わるほどの誤差ですがね」


「今日も惜しかったわぁ~次は心臓狙おうかのぉ」



 と、顔面の処置が終わった丹波は立ち上がり、芥川へ書類を持ってくる。



「ほれ。約束のや」


「人聞きの悪い言い方やめてください」


「調べるの大変やったで~」



 サッと目を通すくらいだが、書類をめくる芥川。



 目を細めるいつもの癖が出ている。



 真剣な証拠だ。



「・・・・・・分かりました。後でジックリと検分させていただきます」


「『』日増しに大きく太くなっとる。兵隊が必要ならいつでも言ってや」


「いえ・・・・・・正直、ヤクザでも自衛隊でも、意味はありません」


「ワシなら意味があるか?」


「・・・・・・ごめんなさい。分かりません」


「なんや・・・・・・そんなにゴッツいのか・・・・・・興味があ・・・・・・」



 とーーーー



「丹波ぁぁぁ!!!!」



 鼓膜が弾け飛ぶほどの声が聞こえてくる。


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