死が二人を分かつまで

KAI

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”日常その参”

【素晴らしき朝】

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 次の日ーーーー



 セツナはベッドの上で目が覚めていた。



 夢を見たーーーー



 新樹に抱きしめられる夢。



 しかも、彼の端正な顔がすっごく近くにあって・・・・・・



 自分は拒むことをしなくて・・・・・・



 そのまま・・・・・・



 ボンッ!!



 顔が爆発したかのごとく熱い。



 必死に頭を振って、忘れようとする少女。



 脱ぎやすいワンピースを着て、下へ降りる。



 まだ朝早く。



 新樹が来る稽古の時間までは三時間ほどある。



 朝食は、いつも芥川と共に食べるのだが、今日は彼は部屋にいなかった。



 きっと道場にいるはず。



 階段を下りて・・・・・・板張りの道場へ・・・・・・



 ペラ・・・・・・ペラ・・・・・・



 何か、紙をめくる音が聞こえてくる。



 なんだろうか?



 道場を覗く。



「・・・・・・!」



 芥川が上半身裸で、逆立ちをしている。



 それだけではない。



 右手の親指・人差し指・中指だけで立っているのだ。



 そして下には小説が。



 左手でペラリペラリとページをめくっているのである。



「・・・・・・」


「三〇分・・・・・・仕上げですね・・・・・・」



 ビッ!!



 人差し指と中指を拳の中へ引く。



 なんと、親指一本だけで全体重を支えているのだ。



 彼の姿勢は綺麗だった。



 頭の先からつま先まで、ピンと垂直。



 震えることもなく、安定している。



 ペラ・・・・・・ペラ・・・・・・



 パタン・・・・・・



「終わってしまった・・・・・・この作家さん、筆が遅くて最新刊はまだまだ出ないというのに、全部読んでしまった・・・・・・」



 ふぅ・・・・・・



 ん?



「おや~! セツナさん! おはようございます!」


『おはよう』


「なんだか顔が赤いですが、お熱でもあります!?」


「・・・・・・(ブンブン)」


「違いますかぁ・・・・・・なら、ヨシ!」



 バッ!!



 スト・・・・・・



 芥川が着地する。



「ご飯にしましょう。目玉焼きにベーコン。漬物とセツナさんがお好きな子持ちシシャモをご用意しますよ~」


「・・・・・・」



 互いに意識し合っていた。



 昨日のわだかまりは、二人とも別々の方法で克服した!



 ゆえに、もう気まずい空気は流れていない。

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