【休止中】死が二人を分かつまで

KAI

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”日常その参”

【無の香り】

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 外観だけ見ると、彫り師の家屋兼仕事場のような雰囲気の、怪しげな家だった。



「ここです」



 芥川が玄関に。



 新樹はセツナに肩を貸してもらいながら、片足でゆっくり後に続く。



「ありがとう・・・・・・」


「・・・・・・(ぷいっ)」


「な、なんだよ・・・・・・」



 そんなお熱いやりとりなんか眼中にない芥川は、ガラス戸を開けて、中に入る。



門次もんじ先生」



 弟子二人はすぐにここが変なことに気がついた。



 まず・・・・・・



 通常、人間が生活や行動している場所には必ず匂いがあるものだ。



 仮に使っていないところでも、埃っぽさやカビの臭いはする。



 嗅覚とは動物の本能そのもの。



 ゆえに、かなり敏感で、どんな場面でも匂いの記憶は残る。



 しかし・・・・・・ここにはそれがない。



 ベッドがひとつに、人体模型、壁一面の般若心経。



 そんながらんどうの空間に、臭気の粒子が存在しないかのようだ。



 なんとも不気味・・・・・・



 よくよく、中を見てみると、その原因が分かった。



「お香?」



 部屋の四隅、神棚、入口付近に数多くの香が焚かれているのである。



 これらは、全て種類が違うのだろう・・・・・・互いに匂いをぶつけ合い、相殺し、そして臭気を消している。



「おやおや・・・・・・鼻がかなり良いようで・・・・・・」



 枯れ葉が擦れ合うような、声。



 ベッドで横になっていた、着流し姿の男性が立ち上がる。



 ・・・・・・



 ・・・・・・言葉に困った。



 現れたのは、鼻の上まで頭巾を被った、盲目の男。



 顔の半分しか見えないが、歳はおそらくは六〇を超えている。



 うっすらと浮かべている笑みが、怪しさをマックスにさせていた。



「ドウモ・・・・・・田中たなか 門次もんじデス」


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