異世界プロレス!!~君はウソをつけるか?~

KAI

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”ハイエナの恭平”

【ライオンに勝てぬハイエナ】

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 煌めくライト。



 耳の奥まで響くミュージック。



 そして、ベビーフェイスのイケメンマッチョ。



 リングを囲む観客たちは好青年の登場に黄色い歓声をあげた。



 入門してわずか二年。高身長にほどよい筋肉。圧倒的なパフォーマンスで、彼は人気プロレスラーの仲間入りを果たしていた。



「今日も来てくれてサンキュゥッ!!」



 トレードマークの短い金髪に、チャーミングな瞳。



 そんな彼へは多くのスマートフォンが向けられている。



 SNSが発達した昨今、こうした写真撮影や演出も大切だ。



 バブル経済期に発足した『』にとっても、イマドキの宣伝戦略は必要なのだ。



 そうした観点で言えば、リング上の彼のような華のあるイケメンというのは欠かせない。



 だが・・・・・・



「キャーキャー・・・・・・アレ?」



 にこやかな彼の後ろ・・・・・・何かが見える。



 それはパイプ椅子だった。



 妙な話しだ。



 イケメンの背景に無骨なパイプ椅子など・・・・・・



 しかも、高く高く振り上げられている。



 そして!!



「シャラァァァ!!」



 ガツンッッ!!



 振り下ろされた。



 イケメン君の顔が苦痛に歪み、のたうち回る。



 まだ呼び出されてもいない、なのに乱入、あまつさえ凶器での奇襲。



 そこに立っていたのは筋骨隆々の、金剛力士像のような男。



「ツバサ君になんてことするの!!」


「卑怯者!!」


「死ねぇ~!!」



 先ほどとは打って変わり、夥しいブーイングと罵倒の嵐。



「うるせえ!! バカヤロー!!」



 リング上で吠えるのは『佐藤さとう 恭平きょうへい



 いわゆる、ヒール役レスラーだった。



 高密度にして大容量の筋肉。



 頭頂部をこんもりと残したソフトモヒカン。



 モジャモジャと鬱陶しいヒゲ面。



 何よりも、眼光がオオカミのように鋭い。



 まさしく、悪役なのだ。



「いけ好かねえンだよ!! このオカマ野郎!!」



 未だに倒れているイケメンレスラーのツバサへ、上からドスドスとブーツで踏みつけ攻撃。レフェリーが止めようとしているが、そんなことは聞きもしない。



「ッシャアッッ!!」



 邪悪な笑みと共に金髪を乱暴に掴む。



 そのまま無理矢理持ち上げて、頬をパァンと叩く。



『流石の卑怯戦法!! 伊達に『のキョウヘイ』と呼ばれていません!!』



 実況も熱くなる。



 ハイエナのキョウヘイは、まだまだ殴る叩く蹴る!



 しかし・・・・・・本気マジではない。



 ましてや、本心ではない。



「恥を知れぇぇぇ!!」


「正々堂々やれ!!」



 ・・・・・・んなこたぁ・・・・・・分かってンだよ。



 こんな真似、俺だってよぉ・・・・・・



 罵声を浴びせて攻撃しながら、心の中で呟くのは恭平。



 大ぶりの技に、わざとらしい戦い方。



 その全てがウソッッ!!



 んでもって・・・・・・この後のドラマも分かりきっている。



「フンッッ」



 やられっぱなしだったツバサが、恭平の首とアゴの間に肘(エルボー)を入れる。



 当然、筋肉量が違うので効きはしない。



 だが、これはツバサの反撃の狼煙。



「おりゃぁ!! せいやぁ!!」



 バツンバツン・・・・・・と左右の肘が打ち当てられる。



 徐々に恭平が苦しい顔になり始め、一歩・・・・・・また一歩と後ろに下がっていく。



「その調子ぃ!!」



 女子のファンが叫んだ。



 そのタイミングだ。



「ホッ!!」



 ダンッ!!



 マットを蹴り上げ、ツバサがジャンプ。



 両足を空中で伸ばして、硬いブーツが恭平の顔面にめり込んだ。



 ズダァンッッ!!



 恭平の巨体が倒れる。



『出ました!! ドロップキックゥゥゥ!!』



 歓声に支えられながら、ツバサが恭平の腕を掴む。



 この間、恭平はまるで操り人形のように何もしない。



 形が決まったところで、ようやく恭平がよく分からない反撃をした。



 その形とは、恭平の上半身が抱えられている状態である。



「決めろぉ!!」


「いっけぇぇぇ!!」



 恭平の心境?



 そんなもん・・・・・・知ったことではない。



「ガァァァ!!」



 真っ逆さまにーーーー



 ズドンッッ!!



 頭から落ちた。



『伝家の宝刀ッッ!! 体格差をものともしない、パイルドライバーァァァ!!』



 レフェリーがマットを叩くのと同時に、客も声を上げる。



「ワンッッ!!」


「ツーッッ!!」


「スリーッッ!!」



 カンカンカーン!!



 技が極まるとそのままフォールの体勢。



 スリーカウントで、あっけなくダウン。



『ツバサ選手の勝利ぃぃぃ!!』



 大歓声をあげている観客よ、お茶の間の視聴者よ。



 を覚えないか?



 勝利の一秒後にはテロップが出て、実況者が叫んでいる。



 まるで『最初から勝敗が決まっているかのよう』じゃないか。



 それもそうだ。



 プロレスってのはそういうモンだ。



 勝ち誇るツバサは女子のファンにウケるファンサを繰り広げている。



 そんな最中に、するりとロープとマットの間から抜け出し、出入り口に向かうのは敗者の恭平。



「ホントに弱ぇぇぇ!!」



 そんな声も聞こえる。



 気にする素振りも見せずに、退場。



 すぐに記者たちに囲まれる。




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