異世界プロレス！！～君はウソをつけるか？～

”VSジル公爵篇”

【学の過去】

「で･･････ジル公爵とやらを知っているのか？」


「知ってるも何も･･････この傷」



　己の頬に指をつけて説明した。



「つけてくれちゃったのは、ジル公爵本人っス」


「･･････続けろ」


「僕、自分で言うのもなんですけど、勉強できるんスよ」


「ほう」


「スポーツはからっきしでしたが、学校の成績は常にトップ。当然のように東大楽勝と思ってましたもん」


「ハハッ･･････清々しいねぇ」


「で･･････多分そのせいでこの世界に呼ばれたんス」


「国家を救うべくってか？」


「そのつもりだったんスけど･･････召喚の儀式のすぐ後に、拉致られたんです」


「･･････ジル公爵」


「正解っス」



　学は、未成年だが度数の強い酒を飲み慣れているようだった。



　まるで･･････否、忘れてしまいたい記憶を酔いで歪めたい。



　そんな心情である。



「ぷはっ･･････男娼っス」


「だんしょう？」


「はい。あのオッサン、自分のチンコに自信が無いんスよ。んで、女の人と寝られない」


「･･････」


「儀式の段階で目をつけられてたらしい･･････猿ぐつわで、ベッドに投げられて･･････」


「もういいぜ･･････充分だ」



　ここで止めたのは、恭平なりの優しさだったのだろう。



「ありがとうございます。でも、飽きられたんですよ･･････それでも他の男に僕が抱かれるのも気に食わない･･････そんで」



　チョンチョン･･････



「こんな醜い顔のヤツ抱こうなんてヤツはいないだろうって･･････笑ってました」


「そうか･･････」


「この三人･･････マジで使えないバカたちっスけど、全員ジル公爵の下男だったんです。ほんの些細なミスでクビされた･･････ま、命があるだけマシですけどね」


「他のヤツは、殺されたのか？」


「今のこの国の混乱。ジル公爵は利用しようとしています」


「詳しく教えろ」


「その前に･･････約束してくれます？」


「何を？」



　出会ってからずっと崩していなかった微笑みが、剥がれたかのようにフッと消えた。



　そして出てきたのは、どす黒い言葉。



「あの男に、死ぬより苦しいことがあるって思い知らせてくれませんか？」



　恭平の目を離さない、強い覚悟のある言葉だった。