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二章「結婚の儀」
三十三話「聖女の秘密」後編
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「じゃ、最後に聖女が守護者の子を生む場合」まだ結婚式も挙げてないから、先の話だけど。みんなが身を乗り出すのは、私を心配してくれてるからよね?
「孕んだ後は命の樹の実や聖水は使えない。子どもの体を造るためには、父親を通して命の加護を送らないといけないんだ。その逆でもいいけど」あっさり告げたタリーに、みんなが呆気に取られた。
「整理するよ」パクレットが頭を振った。
「まず、御子の時と同じく、聖女が胎内に人の子の種を孕む。この時には命の樹の実と聖水の摂取が必要」タリーが頷いた。
「次に、父親を通して腹の子に命の加護を送るか、その逆……? 命の守護者が父親じゃない時は、どうするんだ。単婚の国なら、絶対に無理じゃない?」
そりゃ難しいわよね。うちの守護者達は精霊を湧出する時に、既にそれに類する事をしてたみたいだけど、うちは皆が家族同然だから、ちょっと特別だもの。
「他国では、聖女の結婚相手が命の守護者でなければ、子は諦めるのだと聞いた。そういう事情があったのか」コレウスが深く頷いている。
では巫女姫は? 彼女の父親はマジョラムを拒絶した筈だけど。と、タリーを見つめた。
「巫女姫は、伴侶が加護を失ったことで、生まれることができたんだと思う。体を作るのに両親は必要だけど、ある意味、学者の資料にある『単体生殖』の例に近いのかもしれない」みんなが固まった。
クローンみたいなものなのかしら?
「聖女は守護者となら交われる。彼は守護者で伴侶なのに加護を失った。属性はあってないようなものだ」タリーはため息を吐いた。
「巫女姫は属性がなく加護も受けられない、ただの器の様な存在だ。完全な人だとすら言えない。だからこそ聖女はほぼ一人で彼女を生み出すことができた」考えていたコレウスが顔をあげた。
「そうか、だから属性を得るために精霊の御子が必要で、御子と同化することができるのか」コレウスの言葉に、顔が強張るのが分かった。他のみんなは、まだ混乱しているようだ。
もしかしてイーストフィールドは、わざと聖女の伴侶に加護を失わせて、巫女姫、つまり『聖女になれる器』を生ませたということ?
見つめ合うコレウスの顔も青ざめている。
「コレウスとヴェロニカが考えた通りだろうね。イーストは、これまでにも同じ方法を使っている」タリーはため息を重ねる。
「巫女姫の両親は、結婚した翌年にお父上の訪問を受けた。この時にお母上が子宮を摘出したと聞いた筈だ。追い詰められたんだと思う」頼みの綱が切れたのね。タリーも辛そうだ。
「独力で身籠る事を諦めかけた頃に飢饉があり、国の指示を受けた伴侶は加護を失う行動に出たんだろう。加護と自身の命と引き換えに、民の為に穀物を得たんじゃないかな」
呻き声が上がった。夢を通じて、加護を得て属性魔法を使う感覚や、精霊との交流での喜びも感じた。それを強められた後に失うのだ。守護者の絶望は深いだろう。
そしてなにより、加護を受けていた身体はその状態に慣れている。加護を失った人の多くは数年で亡くなる。巫女姫のお父上は自殺を促されたということだ。
「多分、我が国の女王陛下も了解していたと思う。飢饉の支援ができない状況だったし、聖女である君は渡せない。いずれ御子を返せばいいと考えたのかも」タリーが話し終えた。
「タリーは凄い。その通りの事が起きたそうです」イオが光の精霊の声を伝えた。
「加護を失った伴侶は巫女姫が一歳を迎えた翌日に身罷り、翌年に聖女も後を追いました」
「事情を知っているマジョラムは、悲劇の連鎖を防ぐ為に、御子を巫女姫に届ける事に反対したのね」漸くここに辿り着いた。
「うん、聖女が命の守護者の補助なしに命を生み出すのには、かなりの無理があるんだ」タリーが深いため息を吐いた。
ゲームでも幼馴染みとの恋や結婚は低難度だったし、成人した時に幼馴染みの好感度が低すぎると他の守護者のルートにも入れず、すぐにバッドエンドになったわ。ゲームの聖女は厳密には『生きて』いないから、命の加護もないものね。幼馴染みがいなければ生きられない訳だわ。
「巫女姫に両親への疑惑を植え付けたのはセントラルの大使です。サウスとの関係を悪化させて巫女姫を手に入れ、光の御子は後で引き取ればいい、と話していたそうです」タッカが闇の精霊の言葉を伝えてくれた。
「イーストの神官長は巫女姫から相談を受けて『サウスの聖女に会いなさい』と指示してたって。他には何も答えなかったらしい」風の精霊がパクレットに伝えた。
「イーストの人達って、この国とヴェロニカに頼りすぎだよね? 自分で解決しようとした、マジョラム達を見習ってほしいよ」パースランが口を尖らせる。全くだわ。
「神官長は意図的にモーヴ神官に情報を洩らして、マジョラムをここに送り込んだようです。巫女姫の疑惑も、この国に逃がす為に利用したのかもしれません」
そういう人なんです。すみません、とイオがため息混じりに笑った。
「孕んだ後は命の樹の実や聖水は使えない。子どもの体を造るためには、父親を通して命の加護を送らないといけないんだ。その逆でもいいけど」あっさり告げたタリーに、みんなが呆気に取られた。
「整理するよ」パクレットが頭を振った。
「まず、御子の時と同じく、聖女が胎内に人の子の種を孕む。この時には命の樹の実と聖水の摂取が必要」タリーが頷いた。
「次に、父親を通して腹の子に命の加護を送るか、その逆……? 命の守護者が父親じゃない時は、どうするんだ。単婚の国なら、絶対に無理じゃない?」
そりゃ難しいわよね。うちの守護者達は精霊を湧出する時に、既にそれに類する事をしてたみたいだけど、うちは皆が家族同然だから、ちょっと特別だもの。
「他国では、聖女の結婚相手が命の守護者でなければ、子は諦めるのだと聞いた。そういう事情があったのか」コレウスが深く頷いている。
では巫女姫は? 彼女の父親はマジョラムを拒絶した筈だけど。と、タリーを見つめた。
「巫女姫は、伴侶が加護を失ったことで、生まれることができたんだと思う。体を作るのに両親は必要だけど、ある意味、学者の資料にある『単体生殖』の例に近いのかもしれない」みんなが固まった。
クローンみたいなものなのかしら?
「聖女は守護者となら交われる。彼は守護者で伴侶なのに加護を失った。属性はあってないようなものだ」タリーはため息を吐いた。
「巫女姫は属性がなく加護も受けられない、ただの器の様な存在だ。完全な人だとすら言えない。だからこそ聖女はほぼ一人で彼女を生み出すことができた」考えていたコレウスが顔をあげた。
「そうか、だから属性を得るために精霊の御子が必要で、御子と同化することができるのか」コレウスの言葉に、顔が強張るのが分かった。他のみんなは、まだ混乱しているようだ。
もしかしてイーストフィールドは、わざと聖女の伴侶に加護を失わせて、巫女姫、つまり『聖女になれる器』を生ませたということ?
見つめ合うコレウスの顔も青ざめている。
「コレウスとヴェロニカが考えた通りだろうね。イーストは、これまでにも同じ方法を使っている」タリーはため息を重ねる。
「巫女姫の両親は、結婚した翌年にお父上の訪問を受けた。この時にお母上が子宮を摘出したと聞いた筈だ。追い詰められたんだと思う」頼みの綱が切れたのね。タリーも辛そうだ。
「独力で身籠る事を諦めかけた頃に飢饉があり、国の指示を受けた伴侶は加護を失う行動に出たんだろう。加護と自身の命と引き換えに、民の為に穀物を得たんじゃないかな」
呻き声が上がった。夢を通じて、加護を得て属性魔法を使う感覚や、精霊との交流での喜びも感じた。それを強められた後に失うのだ。守護者の絶望は深いだろう。
そしてなにより、加護を受けていた身体はその状態に慣れている。加護を失った人の多くは数年で亡くなる。巫女姫のお父上は自殺を促されたということだ。
「多分、我が国の女王陛下も了解していたと思う。飢饉の支援ができない状況だったし、聖女である君は渡せない。いずれ御子を返せばいいと考えたのかも」タリーが話し終えた。
「タリーは凄い。その通りの事が起きたそうです」イオが光の精霊の声を伝えた。
「加護を失った伴侶は巫女姫が一歳を迎えた翌日に身罷り、翌年に聖女も後を追いました」
「事情を知っているマジョラムは、悲劇の連鎖を防ぐ為に、御子を巫女姫に届ける事に反対したのね」漸くここに辿り着いた。
「うん、聖女が命の守護者の補助なしに命を生み出すのには、かなりの無理があるんだ」タリーが深いため息を吐いた。
ゲームでも幼馴染みとの恋や結婚は低難度だったし、成人した時に幼馴染みの好感度が低すぎると他の守護者のルートにも入れず、すぐにバッドエンドになったわ。ゲームの聖女は厳密には『生きて』いないから、命の加護もないものね。幼馴染みがいなければ生きられない訳だわ。
「巫女姫に両親への疑惑を植え付けたのはセントラルの大使です。サウスとの関係を悪化させて巫女姫を手に入れ、光の御子は後で引き取ればいい、と話していたそうです」タッカが闇の精霊の言葉を伝えてくれた。
「イーストの神官長は巫女姫から相談を受けて『サウスの聖女に会いなさい』と指示してたって。他には何も答えなかったらしい」風の精霊がパクレットに伝えた。
「イーストの人達って、この国とヴェロニカに頼りすぎだよね? 自分で解決しようとした、マジョラム達を見習ってほしいよ」パースランが口を尖らせる。全くだわ。
「神官長は意図的にモーヴ神官に情報を洩らして、マジョラムをここに送り込んだようです。巫女姫の疑惑も、この国に逃がす為に利用したのかもしれません」
そういう人なんです。すみません、とイオがため息混じりに笑った。
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