聖女の結婚~逆ハー強制ルート?~聖女は性女、伴侶達は腹黒最強S夫でした!?

しろくまさん

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二章「結婚の儀」

三十四話「巫女姫の来訪」前編

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「姉様!」扉を開けた途端、弟のスパティフィラムが飛び込んできた。
「騎士団に入団しました。父様の従者になるんです」満面の笑みで報告するフィルに抱きしめられた。

「良かったわ。ずっと騎士に憧れてたものね」その背を撫でる私の顔は、かなり緩んでいるだろう。弟はどんどん大きくなって、あっさり私を追い抜いてしまったけど、やっぱり可愛い。

「ヒビスクスのお陰です」フィルの言葉に首を傾げる。
「父上の指導は難しくて。ヒビスクスは一つずつ確認しながら教えてくれるんです。そのお陰で試験に合格できたんだと思います」

 弟の囁きに驚いた。彼にそんな繊細な所があるとは思わなかった。
「聖女。何か失礼なことを考えただろう。精霊達が爆笑してる」ヒビスクスが怖い顔をして見せるけど、口元は笑ってる。

「弟がお世話になったのね、ありがとう」口付け一つで機嫌をなおして、抱きしめてくれた。
「姉上。辛くはないですか?」側で見ていたフィルの、突然溢した言葉に驚いた。

「姉上はタリーが好きでしょ? 沢山の夫を持つことになったけど」しまった、という顔で頭を掻きながら口早に続ける。
 誰かに何か言われたのかしら。尋ねようと口を開いた時に、呼び鈴が鳴った。

 パクレットが扉を開けると、巫女姫が入ってくる。緩い癖のある長い銀髪、煙るようなレモン色の瞳。整った顔に強ばった笑みを浮かべて、侍女に手を引かれて歩んで……

 フィルを見て、笑顔のまま固まった。フィルを見上げると、こちらも驚愕した表情で、やはり固まっている。

「お父様達も、こんな風だったのね」義母プリムラが、傍らで深いため息を吐いた。
「お義母さん、ごめんなさい」首を振って私を抱きしめる、小さな体が震えている。

「自分の目で見られて良かったわ。諦めがつくもの」義母は、息子が他国の聖女と恋に落ちたことと、彼と離れて暮らすことになることを、瞬時に理解して受け入れた。

「お義母さん、愛してるわ。側に居られなくてごめんなさい」ソファに誘い、側に座って頬に口付けると、母を挟んで父も座る。
「わたしも愛している。もう離さないぞ」父が義母の顎を掬って深く口付けた。

 ふと気付くと、若い二人が両親を見て真っ赤になっていた。
「あら、落ち着いた?」抱き合う両親をソファに残して、二人を離れたテーブルに誘う。

「こんにちは、巫女姫様。私はサウスフィールドの聖女、ヴェロニカよ」そっと抱き寄せて頬に口付けると、巫女姫は躊躇いながら、そっと口付けを返してくれた。

「彼は私の弟、スパティフィラム。愛を語らっているのは私達の両親よ。巫女姫は父とは面識があるのよね?」私の言葉に、巫女姫はまた動かなくなる。

 自分の実の父親かと疑う人の息子と、恋に落ちたんだものね。まぁ、あの光景を見たら、疑惑は晴れたんじゃないかと思うけど。

 また鈴が鳴って、今度はタッカが扉を開ける。来客の多い日ね。
「聖女、タリー、イオナンタ! 御子が熱を出したんだ!」あらら、マジョラム。こんな時に来ちゃったのね。

「どれ? 俺が診よう」コレウスが御子を覗き込む。
「タリーとイオナンタは王宮に呼ばれちゃったんだ。もう帰ってくると思うけど」パースランがマジョラムに説明している。

「マジョラム、置いて行かないで下さいよ」モーヴ神官も駆け込んで来た。
「姉上、ここは賑やかだね」フィルが呆然と呟く。

「そうなの。タリーと二人きりより、この方が楽しいわ」やっと、フィルの質問に答えられた。
「それなら良かった」笑顔の私に、フィルも笑ってくれた。

「羨ましいです」巫女姫の小さな声は、驚く程はっきりと聞こえた。
「私の育った神殿は、いつも静かでした」御子をコレウスに預けたマジョラムとモーヴ神官が、巫女姫に気付いて困っている。

「愛してくれる人はいた?」フィルが静かに尋ねた。
「……両親が。私が一歳の頃に亡くなりましたけど。それに、神官長と神官や巫女達」ハッとした顔で、巫女姫が答えた。

「そうですね、私は愛されていました」緊張が緩む肩を、フィルがそっと撫でた。
 コレウスが巫女姫の前に跪き、腕に抱いた御子を差し出す。

「みうて」御子が巫女姫に手を伸ばした。
「はい、ミルテです」巫女姫は御子の手をそっと握る。
「初めまして、御子様」表情が崩れた頬に、ぼろぼろと涙が流れた。

 暫く巫女姫に抱かれていた御子がぐずり始め、コレウスが水分や果物を取るよう勧めた。マジョラム達がばたばたと世話を始める。

 巫女姫はフィルと護衛のヒビスクスや女官に付き添われて、離宮の庭を散歩に行った。上気した頬で腕を組み、小さな声で話す様子が初々しい。

 御子を抱くマジョラムとモーヴ神官が躊躇いながら誘って、巫女姫も一緒に王宮に帰って行く。見送りながら呟いた。
「私は殆ど話してないわ」あんなに心配して、準備したのに。
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