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「ア……アァ……」
怨霊を思わせる不吉な呻き声で僕は目覚める。
頬が土でひんやりと冷たい。むくりと起き上がると、そこは見知らぬ森の中だった。
空が木々で覆われているため概ね暗がりではあったが、その隙間から漏れ入るいくつかの眩い光線によって、まだ日が高いことがわかる。
あぁ、なんと華のないオープニングだろう。
念願の異世界転生だというのに、いきなり三体のグールらしき怪物が、森の奥からこちらへとゆらゆらと近寄ってくるではないか。
「異世界転生でもできたら本気出すよ」という言葉を前の世界で口癖のように吐き散らしていた僕だったが、まさかここまでお粗末な対応を食らうとは夢にも思わなかった。
おぉ、美少女はどこか。
これではまるで異世界の神様にお空からポイと棄てられてしまったみたいではないか。……まぁ、そんな目に遭わされても仕方ないような人生を送っていたような気もしないでもないけれど。
「クソッ!」
慌ててグール(もう面倒だしグールとしよう)から逃げようと体重をかけた僕の右手に、棒状の固い感触の何かが握られていることに気がついた。
実に暴力的で頼もしい固さ。
それは簡素なロングソードだった。
チュートリアルってわけか……。
異世界の神様が、「ほら、お望みの異世界だ。本気ってヤツを見せてくれよ」と僕を挑発しているように思えた。
「見せてやるさ……」
ロングソードを両手で握り、ギュッと柄のグリップ具合を確認する。
ほう、これは馴染む。
手のひらへと強力に吸い付き、かといって俊敏さを失わせるほどではない。
「ウ……ウゥゥ……」
僅かに何らかの意思を感じさせる呻き声を上げた後、グール達はそのザクロのように赤い瞳をそれぞれにギラリと光らせる。
赤い閃光が森の闇を不吉に照らす。
しかしその印象と逆行し、グール達のよろよろと動く様を見ていると、こいつら三匹をロングソードの錆にしてやるのは実に容易なことに思えてならなかった。
「来な」
ロングソードから離した左手でちょいちょいと奴等を挑発する。
さあ、暴れさせてくれ。
「グオオォォォオォォ!!!」
三匹共が馬鹿正直にこちらへと襲いかかる。
「オッッ……ラァ!!!」
まだ使い慣れないロングソードを先頭のグールの腹部めがけて思い切りフルスイング。
切断面から吹き出る黒い血が、辺りの闇の色をより一層深いものへと塗り替えていく。
ロングソードは鈍い音を立てたのち、やがてグールの腐った体を貫通し、地面を抉る。
二つになったグールの体はそれぞれひとしきり地面をのたうち回ると、黒い灰になり、風に吹かれてどこかへと消えてしまった。
残った二体のグールが身の危険を感じたのか、躊躇うような仕草を見せた。
「ははっ、腕試しにはちょうどいい」
殺しの感触は悪いものではなかった。柔らかいものを力ずくで叩き切る感覚。暴力の手触り。相手はこちらへ危害を加えようとするモンスター。倫理的にも何ら問題を感じさせない。
認められているのだ。
漫画やゲームのように、ここでは、"狩り"が。
「ほら、次、来なよ」
僕は再び左手でちょいちょいと残り物に挑発をかける。
さあ、"殺し"を愉しませてくれ。
怨霊を思わせる不吉な呻き声で僕は目覚める。
頬が土でひんやりと冷たい。むくりと起き上がると、そこは見知らぬ森の中だった。
空が木々で覆われているため概ね暗がりではあったが、その隙間から漏れ入るいくつかの眩い光線によって、まだ日が高いことがわかる。
あぁ、なんと華のないオープニングだろう。
念願の異世界転生だというのに、いきなり三体のグールらしき怪物が、森の奥からこちらへとゆらゆらと近寄ってくるではないか。
「異世界転生でもできたら本気出すよ」という言葉を前の世界で口癖のように吐き散らしていた僕だったが、まさかここまでお粗末な対応を食らうとは夢にも思わなかった。
おぉ、美少女はどこか。
これではまるで異世界の神様にお空からポイと棄てられてしまったみたいではないか。……まぁ、そんな目に遭わされても仕方ないような人生を送っていたような気もしないでもないけれど。
「クソッ!」
慌ててグール(もう面倒だしグールとしよう)から逃げようと体重をかけた僕の右手に、棒状の固い感触の何かが握られていることに気がついた。
実に暴力的で頼もしい固さ。
それは簡素なロングソードだった。
チュートリアルってわけか……。
異世界の神様が、「ほら、お望みの異世界だ。本気ってヤツを見せてくれよ」と僕を挑発しているように思えた。
「見せてやるさ……」
ロングソードを両手で握り、ギュッと柄のグリップ具合を確認する。
ほう、これは馴染む。
手のひらへと強力に吸い付き、かといって俊敏さを失わせるほどではない。
「ウ……ウゥゥ……」
僅かに何らかの意思を感じさせる呻き声を上げた後、グール達はそのザクロのように赤い瞳をそれぞれにギラリと光らせる。
赤い閃光が森の闇を不吉に照らす。
しかしその印象と逆行し、グール達のよろよろと動く様を見ていると、こいつら三匹をロングソードの錆にしてやるのは実に容易なことに思えてならなかった。
「来な」
ロングソードから離した左手でちょいちょいと奴等を挑発する。
さあ、暴れさせてくれ。
「グオオォォォオォォ!!!」
三匹共が馬鹿正直にこちらへと襲いかかる。
「オッッ……ラァ!!!」
まだ使い慣れないロングソードを先頭のグールの腹部めがけて思い切りフルスイング。
切断面から吹き出る黒い血が、辺りの闇の色をより一層深いものへと塗り替えていく。
ロングソードは鈍い音を立てたのち、やがてグールの腐った体を貫通し、地面を抉る。
二つになったグールの体はそれぞれひとしきり地面をのたうち回ると、黒い灰になり、風に吹かれてどこかへと消えてしまった。
残った二体のグールが身の危険を感じたのか、躊躇うような仕草を見せた。
「ははっ、腕試しにはちょうどいい」
殺しの感触は悪いものではなかった。柔らかいものを力ずくで叩き切る感覚。暴力の手触り。相手はこちらへ危害を加えようとするモンスター。倫理的にも何ら問題を感じさせない。
認められているのだ。
漫画やゲームのように、ここでは、"狩り"が。
「ほら、次、来なよ」
僕は再び左手でちょいちょいと残り物に挑発をかける。
さあ、"殺し"を愉しませてくれ。
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