レイヤー転生

もっちり羊

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イマジナリーライン

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「そうなんですか? アーブルが使えるのはヒメクラスのプレイヤーだけだと、そう私たちの村では言い伝えられていますけど……」
 私はけもの道のなかをカワイイ系森ガールの背後をついて歩きながら、彼女のロングスカートの裾がひらひらと揺れる様を眺めていた。特に意図してそれを見ていたわけではない。今にも面倒ごとが増えそうな予感の中、憂鬱に視線を落としてみれば、前方斜め下方にその光景があっただけのことである。
 好きなキャラにもなりきれたし、私はもう何もしたくないのだけれど。というか死にたい。もうエンディングにしてくれ。
「言い伝えられてるって……別に過去の話じゃないんでしょ?」
 少女は横顔を見せて恥ずかしそうに笑う。「田舎には曖昧な情報しか回ってきませんから」
 情けない。
「アーブルっていうのは、あの変身術のことなんだろ?」
「ええ。アーブルは、人類に最も近い仮人かじんにのみ許された変幻自在の瞬間変身だと聞いています。仮人はヒトガタ──さっきの仮面の存在を吸うことによって、プレイヤーランクを上昇させ、人類へと少しずつ近付いていくのです」
「その人類っていうのは、神様みたいなものなのかい?」
 少女はまた笑う。「全然違いますよ。神様はお伽噺ですが、人類は過去に実在していましたから」
「そう」
 私は結論を次々と保留していく。
「プレイヤーってのは何?」
「ヒトガタ退治専門の方々のことですよ」
「ランクは誰が決めるの?」
「神様が決めているらしいです」
「お伽噺の存在じゃないの?」
「人類になるためにはお伽噺の存在が必要だそうで……よくわかりませんよね」
「想像力が必要なのかな」
「仮人だって想像くらいしますのに」
 私たちはそれからしばらく無言のままけもの道を歩く。景観が開けるまでにそう時間はかからなかった。
「あれが私たちの村です」
 緩やかな登り坂の頂上で彼女は指差す。
 少し遅れてけもの道を抜け、私はようやく彼女の指差す方向を見る。
「へえ、いいじゃん」
 彼女の集落は小さな盆地のなかで形成されていた。そこには藁葺き屋根の建物が十と幾つか。そしてそれぞれを中心として付属品のように田園風景が拡がっている。
「小さいし、噂も回って来ませんけど、村人は皆おだやかで、とてもいい村なんですよ」
「期待を裏切られないことを祈るよ」
 果たしてこの世界ならば、田舎者は真に田舎者であるのだろうか。
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